森は危険がいっぱい
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右脚の傷に薬草を数本使ったが、その数本をまた手に入れるのにあまり時間はかからなかった。
今のところ集まったヒール草は紙袋の半分ほど。折り返し地点だ。
そういえば、ギルドの職員さんが「ヒール草が生えている場所にはゴブリンが出る」的な事を言っていた気がするけど、未だにゴブリンとは出会っていない。
まぁ、あまり戦闘はしたくないし出会わない方がいいんだけど、一応フラグが立っているので心配ではある。
しばらく日にちが経って忘れた頃に回収されるやつだったら嫌だな。
そんな事を考えていると、森の中を風が吹き、ヒール草の匂いを運んできた。
今までの匂いは微かに漂っている感じだったが、それより何倍も強い。
多分、僕が持っているこの紙袋に顔を突っ込んだら、だいたい同じくらいの匂いがするかもしれない。
今まで読んだラノベの展開を思い出す。そして確信した。
この先に薬草の群生がある。
森に入ってからここに来るまでの道のりはある程度覚えている。風に乗って運ばれた匂いでこの強さなら、かなり大きいはずだ。しばらくは苦労せずにお金を稼げるだろう。
だけど僕は知っている。それは『ご都合主義』だ。
残念だけど、匂いがしたところに行くのは止めておこう。
ただでさえ右脚の怪我に呪いが発動しかけてるのに、これ以上呪われたくない。
それに、もし薬草の群生に行けても、そこには恐らくゴブリンがいるだろう。諦めるのが正解だ。
僕はヒール草の匂いがした方と逆の方向に歩き出す。
この辺りにもある程度ヒール草は生えている。地道にコツコツ集めていこう。
~ ~ ~
「ぐぷっ……」
木の根元にヒール草を見つけた。下の二枚の葉は残して摘む。
「ぐぷぷ……」
たまにポツンと離れたところに一本だけ生えているのがある。まだ花は開ききっていないけど、もうこれも摘んで大丈夫だろう。
「ぐぷぷぷ……」
それにしても、さっきから変な音が聞こえる。薬草を摘むのをやめて立ち上がり、辺りを見回す。
森の中は静寂に包まれていて、それがかえって異音を際立たせている。
張り詰めた空気。首筋に冷や汗が流れた。
「おぉお……ぐぷぉ……」
音が近づいてきている。恐らく魔物だろう。
『大水球』を数個ほど僕の周りに浮かばせておく。魔物が出てきたら思いっきりこれをぶつけて、ひるんでいる隙に逃げるつもりだ。
木と木の間から、巨大な影が見えた。具体的な大きさは分からないが、僕の背丈よりは大きい。マズいな。あまり刺激せずに早く逃げた方がいいかもしれない。
「ぐぷぷぉ……おおおおおおお!」
そして姿を現したのは、巨大な、血のように赤いスライム。
「赤色……突然変異!?」
赤いスライムは僕の問いに答える事はなく、ただ獲物を見つけたというように不気味にうごめいていた。




