ステータスオープン
気が付くと、僕は建物の路地裏みたいなところで倒れていた。
身体を起こし、辺りを見回す。
前を見ると、ちらほらと路地裏の前を歩いていく人がいた。通りがあるようだ。
通りを歩く人は、RPGとかに出てくる村人みたいな服装をしていた。時々剣を持った男の人や、ローブを着て杖を持った人も通る。『神』の言っていたように、剣と魔法のファンタジー世界に来れたらしい。
ふと、自分の身体を見る。
服装はこの世界に合ったものになっていたが、身体は自分のものだ。
『神』は「新しい肉体を作る」みたいなことを言っていたから、もしかしたら長身イケメンになってるかもと期待したのだが、そうは都合よくいかない。
僕は起き上がって通りまで歩き、路地裏から顔を出す。
「ぅわっ」
この路地裏は陰になっていたので、通りが眩しく感じる。
空は晴天。通りは思ったよりも賑やかで、沢山の人の話し声が聞こえた。
集中して聞くと、話している内容が理解できる。『神』がくれたチートの力だろう。
そういえば、『ステータスオープン』と言えば自分の能力が分かるって『神』が言ってたな。やってみよう。
僕は路地裏に戻り、小声で「ステータスオープン」と唱える。
すると、頭の中に情報が浮かんできた。
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能力
言語理解
魔力無限
水魔法適正
呪い 「ご都合主義な展開をしたら死ぬ」
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自分のHPとか攻撃力は表示されない感じのようだ。思ってたのと違う。
っていうか、スキルこれだけ? なんかしょぼい。
チートらしいチートが『魔力無限』ぐらいしか無い。それに、『水魔法適正』とあるが、水魔法にあまり攻撃が強いイメージが無い。攻撃が強くない魔法を無限に打てても、はっきり言って微妙だ。
そして、『神』が「行動をちょっと制限する」と言っていた呪いだが……
「は?」
思わず声が出てしまった。
僕は『ご都合主義な展開をしたら死ぬ』らしい。
ふ ざ け る な 。
僕はラノベとかはよく読む方なのだが、剣と魔法のファンタジー世界でこれは「ちょっと」どころじゃない。
今までの暮らしと全く違う異世界に放り出されて、それで冒険者として生きていけるのは、全てご都合主義のおかげだ。
『神』は「普通に生活していれば」呪いは発動しないと言っていた。
確かに、農村で作物を育てる生活をしていれば、呪いは発動しないだろう。だけど、突然変異の魔物を倒さないといけない僕にとって、さすがにこれは無い。
「はぁ……」
僕はこれから、どうやって生きていけばいいのだろうか。