社交恐怖症()
「この辺りはヒール草がよく生えてるんですよ」
メリーがにこにこしながら僕に話しかけてくる。
だが僕はコミュ障なので、女の子との会話なんて何を話せばいいのかサッパリ分からない。
いや、問題はそこじゃない。
昨日、メリーは僕とパーティを組まないか誘った。
これは僕から見ればまさにラノベあるあるの『成り行きで美少女とパーティを組む事になった』である。つまり『ご都合主義』。そのため呪いが発動した。
そしてその時は「持病の発作が起きることがあって身体が弱く、クエストに行っても迷惑をかける」的な事を言って断った。だが……
「それにしても、カイトさんがギルドカードを作ったのは身分証明のためだと思ってたんですけど……」
そう。この状況をメリーから見れば、「身体が弱くてクエストが受けられない」と言っていた人がクエストを受けている……という感じなのだ。
だから恐らく、メリーはまた僕をパーティに誘おうとするだろう。
そうなってはマズい。
「あのー、カイトさん? 聞いてますか?」
よし。こうなったらメリーにパーティに誘われる前にさっさと逃げよう。
「あ、えっと、僕は早くクエストを終わらせて、パンを買わないといけないので! すみません、さようなら」
「あっ! 待ってください!」
そして僕は小走りでその場を立ち去った。
~ ~ ~
「追いかけてきてないよね……」
そう呟き、振り返って立ち止まる。メリーは追いかけてこなかったようだ。
だが、何故か昨日の右脚の怪我が痛い。何というか、傷口に消毒をしたような感じでジンジンする。右脚を見たが、血は全然出ていない。
試しに紙袋からヒール草を数本取り出し傷痕につけて、ゴブリンの布を使い縛っておく。
たぶん薬草の使い方を間違えていると思うが、やらないよりはマシだろう。
だがしかし、しばらくしても全くと言っていいほど痛みは引かない。
まぁでも、この程度の痛みなら我慢できなくもない気がする。
というわけで、僕は薬草採取の続きをやる事にした。
かすかに湿布のような匂いがただよっている事に気付く。そういえば、メリーがこの辺りにはヒール草が沢山生えていると言っていた。
視線を落とし、木の根元をよく見てヒール草を探す。
さっそくヒール草を見つけた。やったぜ。
見つけたヒール草を紙袋に入れる。そしてふと呟いた。
「……呪い?」
もしかすると、僕の右脚の怪我が痛いのは、『ご都合主義な展開をしたら死ぬ呪い』なのではないだろうか。
メリーはたぶん今、僕をパーティに入れたいと思っているはずだ。
これが『出会った女の子がなぜか自分に好意を抱いている』に入るとすれば、呪いが発動してもおかしくない。
そして今は、呪いが発動しかけている状態。
今度メリーに出会うと、恐らく傷が開いて大量に出血する気がする。
もうあまり人と関わりたくないな……




