薬草採取
寝覚めは昨日とだいたい同じ感じ。関節は痛いし、夜の石畳は冷たい。風邪をひいてしまわないように、早くお金を貯めて宿に泊まりたいところだ。
あくびを噛み殺してギルドの扉を押す。扉についていた鈴がカランと鳴り、人をよけてクエストボードまで歩いていく。
できるだけ安全に達成できそうなクエストがいいだろう。昨日のゴブリンとの戦闘で、僕は脚を怪我している。討伐系のクエストは避けたい。
しばらくクエストボードを眺めたあと、『薬草採取』を受ける事に決めた。
さっそく『クエスト受注』の窓口に並んでしばらく待つ。
「次の方、どうぞ」
自分の番が来た。
「あの、『薬草採取』のクエストを受けたいです」
「薬草採取ですね。説明を聞きますか?」
説明を聞くのは大切だ。僕は「はい」と言って頷く。
すると、職員さんは何やら紙を取り出して僕に見せた。
「このクエストでは、木漏れ日の森で『ヒール草』と呼ばれる薬草を採取してもらいます。こちらが採取していただくヒール草です」
その紙には薬草の絵が描かれていた。これがヒール草らしい。
葉は三日月のような形をしていて、色は綺麗な緑青色。そしててっぺんには小さな白い花が咲いている。
「ヒール草は木の根元によく生えていて、独特の匂いがします。採取する際は下の二枚の葉は残しておいてください。また、花の咲いていない株は採取しないようにお願いします」
「わかりました」
頭の中で復唱する。花が咲いていない株は取らない。取る時は下の二枚の葉は残す。よし、ちゃんと覚えた。
「採取したヒール草は、こちらの紙袋に入れてください。ヒール草が中の青い線まで集まったら、こちらで700ゴールドで買い取らせていただきます」
職員さんから小さめの紙袋を受け取る。青い線は八割ぐらいの高さだ。
「これで説明は終わりです。あと、ヒール草が生えている場所にはゴブリンがやってくる事がありますので、くれぐれも注意してください」
「はい、わかりました」
ゴブリンが来ることがあるのか。なんかフラグが立った気がする。
まぁでも、常に辺りに気を配っていれば恐らく大丈夫だろう。出てきても一匹程度なら『大水球』で倒せる。……いや、こんな事を考えるのもフラグの一種だろうか?
しかしクエストは受けてしまった。木漏れ日の森に行かなければいけない。心にモヤモヤしたものを抱えながら扉を開けて外に出た。
城門までの道のりはだいたい覚えている。とりあえず、木漏れ日の森に着くまでイメトレでもしよう。




