魔物狩り
スライムが溶けて消えてゆき、スライムの核があった場所に、紫色の、親指の爪より少し大きいぐらいの石が残った。これが魔石だろう。
僕は魔石を服のポケットに仕舞う。これで50ゴールド。
そういえば、この世界で使われているお金の単位は「ゴールド」だけど、1ゴールドは日本円でどれくらいなのだろうか。
このクエストの報酬は500ゴールド。ギルドカードの再発行が二回できるけど、大金ではないと思われる。
本当は誰かに教えてもらいたいところだが、恐らくそれはご都合主義。頑張って自分で覚えよう。
いや、今は考え事をする時じゃない。あと九体のスライムを倒せばクエスト達成だ。魔法の練習もしながら、どんどん狩っていこう。
僕は、森の奥へと進んでいった。
~ ~ ~
その後、特に大したことも起こらず、僕は十体のスライムを倒し終えた。本当はもっと狩っても良かったが、もうポケットがいっぱいだ。
あと、新しい魔法も使えるようになった。
僕が最初使っていた水球の三倍の大きさの『大水球』。
これがあれば、いちいちスライムに水球を三発も使わずに済む。
それと、指から水を一直線に飛ばす『水鉄砲』。
しかし、まだ魔法に慣れていないからか、今のところ蛇口ぐらいの水圧でしか出せない。まぁ、手から湧き出る水を直接飲むよりは、水が飲みやすくなるだろう。
あと、水を三日月形にして相手へ飛ばす『水刃』。
こちらもまだ威力が弱く、当たったらちょっと痛いと感じる程度ではあるが、もっと練習すれば色々切れるようになるはずだ。きっと。
体感的に、そろそろ12時ぐらいだろうか。お腹も空いてきた。
クエストの報酬を手に入れたら、そのお金でパンかなにかを買うことにしよう。
いや、まだ油断は禁物。家に帰ってくるまでが遠足であるように、報酬をもらうまでがクエストだ。
ふいに、後ろでガサリと音がした。
振り返る。
草むらから、子供ぐらいの大きさの魔物の上半身が見えた。
人型で、緑色の肌。耳は尖っていて、額には一本の小さな角があった。
「グヒヒ……」
ぎょろりとした目玉と目が合う。
『森にはスライム以外の魔物もいますので、もし出会ったらすぐに逃げて下さい』
ギルドの女性職員の声が頭に響く。
逃げなきゃと思ったころには、僕はすでに走り出していた。
今までの道を、全速力で引き返す。
どうして僕は森の奥まで来てしまったんだ。入り口のところにも、スライムは沢山いたじゃないか。
「はぁ、はぁ」
しばらく走り、ふと後ろを見る。
「ゲギャギャッ」
魔物の鳴き声。
魔物はすぐそこまで追いついていた。その右手には、刃こぼれした短剣。
「ひっ!」
僕はまた走り出す。しかし、遅かった。
「ギャハハッ!」
魔物は持っていた短剣で、僕の右足のふくらはぎを切り裂いた。




