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捏造の王国

捏造の王国 その20 嘘つきは野党!という嘘を吐くネトキョクウ本を総理が配布?長官と三副長官の憂鬱

作者: 天城冴

自然災害と生ける災害と揶揄されるアベノ総理に振り回されるガース長官と三副長官。今日も怪しげなまとめサイトがネタ元の冊子が官邸から配られたという問い合わせをうけ頭を悩まし…。

梅雨が来て、暴風雨に翻弄され、地震までおきるという不吉きわまりない今日この頃。自然災害とアベノ総理他にあいも変わらず振り回されているガース長官。長袖では汗をかくような陽気ではあるが飲んでいるのは熱々のドクダミ茶。

「このお茶は体内に溜まった毒をだすというが、果たして私の毒は出るのだろうか、かろうじて焼き肉など過食は体に悪い食べ物を食べるのはさけているが…」

連日国会での総理、副総理、そのほかの失言暴言失態にかけまわり、外交ならぬ害交と揶揄されるアベノ総理の中東訪問でのしりぬぐいに駆け回るので体のストレスはマックス。さらに心理的ストレスを考えるとドクダミどころか、超強力下剤でも使わないと心身ともに浄化できそうにないガース長官であった。

「ううう、春先に地獄めぐりの夢を見たのが悪かったのか。年金、外国訪問に、こ、これで各国の首脳たちがオーサカに集まって無事にすむのだろうか…」

根回しは十分したつもりだが、なおも心配の種が

トルルル

「こ、今度は固定電話か、い、一体」

と、おそるおそる電話にでてみると

「あ、ああ、これはナカダケ議員。いや参院選の公認のことなら、まだ…。え、妙な冊子を送り付けないでくれ?ちょ、ちょっとまってくれ、なんの…。えええええええ!総理らしき人物が表紙のわけわからん冊子?いや、その。事実を確認して折り返すので待ってください!」

はあはあ、飲んだばかりのお茶を思わず吐き出しそうになる驚きの事態。

「野党攻撃ともいえるフェイク怪しげ冊子を、か、官邸、党本部が配っただとおお、ま、まさかああ」

やっちゃった人物がわかるだけに全身が痛くなりそうなガース長官であった。


「ガース長官、すでに冊子はその、ジコウ党議員だけでなく、野党どもに味方する雑誌にも表紙中身つきで出回っております」

神妙な面持ちで報告するタニタニダ副長官。ニシニシムラ副長官も口をひらく

「ツィッターでバカにしたように冊子の表紙をあげ、暗に官邸やジコウ党本部を皮肉るジコウ議員もおりまして」

とどめにシモシモダ副長官の言葉。

「冊子の元ネタとなるサイト運営者が不明、連絡先不明という怪しげなところのうえ、野党を非難する根拠も不明。カラー刷りでアベノ総理と思わるが美化しすぎで似てない忖度、官房機密費をつかったのかという疑惑も。ネットでは“やっぱネトキョクウのおバカの親玉はアベノ総理、デマ王”とされています、すなわちアベノ総理=大ウソつきの卑怯者と…」

「はっきりと言わんでもいい」

はあっとため息をついて頭を抱えるガース長官。

次の言葉がみつからない三副長官。黙とうをささげるかのようにしばし沈黙。

チーン

「な、なんだ、木魚か、いや、あの仏壇で鳴らす奴か」

「すみません長官、時計、いやスマホのアラームで」

「タニタニダ君、まぎらわしいことは止めたまえ、そ、葬式ではないのだぞ」

タニタニダ副長官を制しつつ、自分のほうが不吉な言葉をいってしまうガース長官。

(ああ、年金100年安心どころか、ボロボロでいつまでもつかも不明。おまけに)

先日の国会での共産ニッポン党首シイノ議員やミンミン党レンポー議員とアベノ総理のやりとりを思うとガース長官の胃はキリキリと痛む。なにしろシイノの鋭い指摘にアベノ総理はしどろもどろ、あげく“金持ちから税金取るなんておかしい”と現代民主主義国家の応分の負担の原理をまるっきり理解してないことを露呈するような発言を大声で喚き散らしたのだ。レンポー氏の質問ははぐらかし、ナントカの一つ覚えでマクロスライド~といいながら、それじゃ年金支給額が下がること言ってるだけ。対策もなんもないのかーと突っ込まれても、議長からいい加減にしてくださいと注意されても続ける阿保っぷりが女性雑誌にまで書き起こされた。

(ジコウ党に有利になるよう設問項目と質問の順番自体を操作した世論調査もさすがに見抜かれつつあるし。なにしろジコウ党は1番をキープして、2以降と答えたやつを排除するようなやり方、統計に詳しい奴ならオカシイと感づく。“質問の仕方自体が変だろ”と具体例をあげてツィッターでつぶやく奴もいるし)

あからさまな捏造ではないとはいえ、微妙にグレーゾーンな世論調査に、安心と言っていた年金はダメダメと報告され、アトウダ副総理が火に油を注ぐ、アホウダ節を炸裂、デモは起きるは、野党に突っ込まれるわ、さんざんである。そのうえ

(中東に外交にいったら、元首に暗に“アメリカの役に立たない使いだな”とつぶやかれ、アメリカこそ説得しろとなどいわれるわ。だいたいドランプ大統領がアベノ総理の中東訪問中に制裁強化とかいうし)

「ちょ、長官その」

「どうかしたか、ニシニシムラ君」

「そのう、独り言を言われるとちょっと怖いんですけど」

ハッとするガース長官。心の中で言っていたと思っていたが、どうやら小声でつぶやいてしまっていたようだ。

「ね、年金の件はポリエモンが、中東訪問の件はガンダ女史がなんとか誤魔化してますから大丈夫ですよ」

と、慰めようとするニシニシムラ副長官の言葉をガース長官はさえぎった。

「いや、逆効果だ。あいつらは嘘つき、アベノの手下とみなされている。ポリエモンは“そもそも犯罪をおかし収監されたというのに、反省なし、同じような詐欺働いた政府をかばってんだろ、いや事業に補助金出てるじゃん”と炎上でかえって年金問題をひろめるわ。ガンダは“はあ?アメリカでも中東でもアベノ総理は役立たず、観光しまくってるだけじゃん、外交は素人、ただの旅行者といわれてんじゃん、ガンダを辞めさせろ、じゃなきゃINUHKは受信料返せ!”といわれているんだ」

自身も質問はぐらかし、マトモに応えない半禿頭と揶揄されていることを棚にあげてポリエモンとガンダに腹を立てるース長官。

「ああ、詐欺師やアベノ総理信者が擁護しても嘘つきの仲間は嘘つきとみなされるだけというわけですか」

シモシモダ副長官の辛辣な一言。

「だから、それは余計だ、シモシモダ君。まあ君の言うことも一理あるんだが、アベノ総理周辺、官邸、子飼いの官僚どもは真っ当な国民からの信頼はないのかもしれないというのは」

歯切れの悪い言い方をするガース長官だが、

(わかっているのだ。あれほどバカバカしい嘘をつけば、すぐバレてしまって国民からの信頼を失うというのは。さすがに政治に関心ないよーの無関心層でさえ、金に直結する消費増税と年金の話には敏感だ。ましてや女性雑誌でさえ、対抗して若い女性向けの雑誌とコラボしたら、早速、違反だ、と騒がれるし。おまけに、この)

官邸およびジコウ党本部から選挙の参考に配布されたという冊子をみて泣きたくなるガース長官。

でかでかと“野党は嘘つき”と主張するにも関わらず、そのソースは不明。内容はアトランティスだかなんだかの怪しげ陰謀説、都市伝説の真相と大差ない内容。アメリカのタブロイド紙のUFO話のほうがまだ信憑性がありそうな内容だ。こんなものが送り付けられたら、普通の神経の持ち主なら速攻でゴミ箱に捨てるだろう。だが、ジコウ党議員が棄てなかったのは送付元がジコウ党本部と官邸であり、その表紙にアベノ総理らしき人物が誇らしげに書かれていたからに違いない。

(修正しまくって一目ではわからんが、おそらくこの髪型とバカバカしいほど格好つけた仕草からおそらくこれはアベノ総理。似てなくてもだいたい見当はつくだろう。しかもカラー刷りでページ数もまあまあ。これを全ジコウ党議員に配布したとしたら。そういえば、アベノ総理が“官房機密費ってまだあるよね。いや内緒で増やせるよね”とか言っていた、これを作るためだったのかあ)

「長官、一人一冊ではございません。支持者や家族にも配るように十冊、いや票の多い議員のところには三桁」

ガース長官のつぶやきを読み取ってツッコミをいれるシモシモダ副長官。

「本当か!」

「はあ、ツィッターにあげた議員は確かに複数冊、いや十冊と明記した議員も」

「ということは数千、いや数万冊も刷ったのか、こんな怪しげな冊子を」

「官邸およびジコウ党本部からの参院選参考資料の送付ということなので、我々が送ったと思いこまれてます。その、長官あてに問い合わせてきた議員もいたわけですし」

「いくら何でも、こんな三流、都市伝説タブロイドみたいな冊子を私が許可するわけないだろう!」

「やはり総理の独断ですか」

呆れるシモシモダ副長官。

「総理、映画もドキュメンタリーもとってもらえないし恰好よく映らないって、嘆いていらしたから、せめてイラストでカッコいいヒーローみたいに描いてもらいたかったんですかね」

同情するようなニシニシムラ副長官。

「現実ではコイケダだのレンポーだのにさんざんやりこめられて“小学生でももっとましな返答する”なんて言われてますからね。せめて自分が勇ましく描かれる冊子が欲しかったんですね。エダノンとかシイノとか実態と真逆な感じで書かれてますし、多分総理の願望なんでしょうね(どっちかっていうとこの情けない党首たちが総理そっくりって言われてますけど)」

ご丁寧にアベノ総理の情けなさすぎる心境を解説するタニタニダ副長官。

「君たちの意見は分かった。しかし悪いがそんなことはどうでもいい!問題はこの冊子をどうするかだ!」

とさらに声を荒げるガース長官。

「しかし長官、回収するとなると我々が送ったと認めるようなものです」

「送付先じゃなきゃ回収なんてしませんし」

「ヨネダ議員なんてもう他に配布しているらしいですし」

と三副長官が口々に言う。

「ううう、ジコウ党本部が資料用にと明記しているし、なんとか上手く誤魔化せないか。下手するとシイノやエダノンから名誉棄損で訴えられるかもしれんというのに。どうすればいいんだ、まったく。別のスキャンダルか、あの落ち目ポスター修正しまくり元ヤンキー女でも使うか、若い男を秘書と偽って囲っているというし。いっそスプリングセンテンスにリーク、いやもう知られたネタだし。あとは国会でパフォーマンスでも、しかし何をやらせるか。はあ、いいアイデアが思いつきそうにない。ぐっすり眠って明日にでも考えればいいのだが、心配で眠れるか」

と頭を抱えるガース長官にニシニシムラ副長官が

「ガース長官、これをお飲みになってください」

と差し出したのは何やら甘い匂いのする液体。

「ああ、ありがとう」

ガース長官は一気に飲み干して

バッタ-ン

と机に突っ伏した。

「おい、ニシニシムラ君、何を飲ませたんだ」

慌てるタニタニダ副長官。

「え、シモシモダ君に教わった梅酒のソーダ割だよ、この季節にいい果実酒だって」

「あー、それは寝る前に飲むんだよ、第一ガース長官、お酒はあんまり。まあ今日はこれ以上予定ないし、このまま寝ていただいたほうがいいかもしれない」

シモシモダ副長官はガース長官にそばにあったひざ掛けをそっとかけた。

 ガース長官は三副長官の会話をしってかしらずか、

『酒、なにもかも酔って…忘れ…』

と寝言をつぶやいていた。


近頃はネタ元不明のデマや中傷がとびかうようになりまして、さすがに対策を考える人もでてきたようです。

日経サイエンス2019年7月号の記事”陰謀論が広まる理由”によるとフェイク情報や陰謀論には不安を抱えている人がひっかりやすく、①その根拠は何か、②その根拠の出どころは何か③その根拠と主張を結びつける論法は何か を確認して、矛盾やあやふやな主張がないか見極めることらしいです。


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― 新着の感想 ―
[一言] 連絡先の書かれていないサイトの許可をどうやって取ったんでしょうねぇ…
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