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魔法とは?

なかなか長い説教と正座に、立とうとしたらカイと2人で足を痺れさせ転んだ。痛いのに弱い私は、さっそく光魔法で痺れを治すと再度、エルサ姉から怒られた。


「だって、光魔法は前に使ったよ?何も言われてないから禁止じゃないよね?」


「使ったのはカイの前でだろ!?私は見ていない!」


おぅ、確かに。怒涛の1日で記憶があやふやだったみたいだ。


「ったく、とりあえず仕事を終わらせて家に帰るよ。カイも急いで。」


「…。」


「どうした、カイ?」


エルサ姉が少し心配そうに声をかける。私にもその優しさを下さい。


「…足が痺れて立てねぇ。」


「「…。」」


ここで、ゆっくりとカイの痺れが取れるのを待っているのは時間の無駄なので、結局、私の光魔法で元に戻す。…何か、私の使う光魔法って地味だな。

その後、畑の手入れを終わらせて、私が耕したところは新しい種を蒔き、次の収穫の準備をする。


「アリス、ここに水をかけて。水魔法の練習をしよう。私が手本を見せるから、その後やってみろ。『バッフェン』」


なるほど、バケツでバシャっと掛ける感じですね。


「こんな感じだ。同じように出来そうか?」


「はーい。やってみる。『バッフェン』」


同じ位に出来た!ちょっとエルサ姉より少ない水の量だった。まぁ、何となく野菜とかに直接バシャって水を掛けるのは、痛めそうで嫌なんだよね。前の世界ではジョウロとかで掛けてたし。


「よし、制御は出来ているみたいだな。偉いぞ。」


エルサ姉も一安心した顔をしている。かの有名な言葉『やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ』を思い出す。そうそう、見せてくれたら『常識』に沿ったイメージをしますとも。もっと褒めてくれても良いんですよ!!


「こっちにも同じように出来るか?」


そう言ってエルサ姉が指を差したのは私が耕して、種を蒔いたばっかりの場所だった。うーん、同じようには出来るけど、バケツでバシャってするのは違う気がする。


「同じように出来るけど、せっかく蒔いた種が流れそうじゃない?それに水を与えすぎても種が腐っちゃうよ?」


「…そうなのか?」


「へ?この世界では違うの?私が居た世界では、水を与えすぎてもダメだったよ。特に種の水遣りは優しくしてたけど…。」


エルサ姉は『う〜ん』っと考え込み始めた。私が言うことが正しいのか、それとも世界が違うから正しくないのか、葛藤があるのだろう。


「分かった。この場所はアリスに任せてみよう。そうすれば今までとの比較も出来る。試しにアリスがしていた水遣りをやってみろ。間違っても滝を出すんじゃないぞ。」


「そうだぞ。種だってタダじゃないんだからな。」


忘れて下さい、ファンタジーは。


「じゃあ、やってみるね。『バッフェン』」


私はシャワーをイメージして水を全体に与えていく。あまり掛けすぎないように、土の色が変わる程度だ。よし!これくらいで良いでしょ。


「どうかな?」


「「…。」」


無言。止めて。何かのフラグが立ちそう。


「…いや、何でもない。うん。聞いても意味がなさそうだし。それだけの水で良いのか?もう少し、多めにかけたほうが良いんじゃないか?」


なんか奥歯に物が挟まったような言い方だなぁ。


「うーん、どうだろう?これ位で良いと思うよ。後は1日1回、芽がでるまで掛けてたかなぁ。」


そんな真面目に畑仕事をしていたワケじゃ無いしね。あー、スマホがあればサクサク検索出来たんだろうな。駅から降りたとき、リュックを降ろして入れるのが面倒でキャリーバックに入れたんだ。まさかこんな事になろうとは…キャリーバック、マジでどこに行った?


「おいおい思い出していくよ。やってみなくちゃ分かんないし。」


そうして、私が耕した場所は専用の畑になり、色々と試していく事になった。


・・・・・・・・・・・


畑仕事も終わり、みんなで家に帰る。その後、簡単に昼食を食べ、テーブルでのお話し合いが始まった。


「エルサ姉、今日は仕事は良いのか?」


そう、私も気になっていた事をカイが聞いてくれた。朝、確かに見送ったんだけどなぁ…


「はぁ…昨日の時点で、とりあえず1週間はお前に『常識』を教えろとボスから言われている。」


何でも昨日ボスから、本当に何もかも知らない所から来たと仮定すると、何がきっかけで被害が出るのか分からない、昨日の魔法の使い方にもバカみたいに有り得ないことがあったらしく、ここの『普通』を教えるよう言われたらしい。特に怖いのは、もし制御しきれずスラム以外、要は平民街に被害を出せば面倒な事になること必須。私が話したファンタジーが本当に起こったら、常識外れな行動を取ったら、と思うとスラムを預かるボスとしては目を光らせるしかない。しかし、そんな時間はないので信頼できる人間を付かせ、『常識』を教えるように言われたそうだ。スラムのボスなのに優しい。若干、貶されている気がするが。


「それで一旦、仕事に行くフリして、どう過ごすか1日確認しようと思ったんだ。普通に過ごしていたんなら、このゾイシスナイトの事やルールなんかを教えていけば良いと思ったからな。

なのに、さっそくカイはコイツを置いて畑に行こうとする。アリスはボケっとして歩きながら周りを見ていない。普通に畑仕事をするかと思ったら、勝手に魔法を使い出す。これはもう放って置けないと思って出てきたんだ。」


「「…。」」

耳が痛いです、エルサ姉さん。


「まぁ、1から教える必要があると分かったが…全く。お前達は大人しく過ごすことは出来ないのか?」


「エルサ姉!俺をこんな考えなしと一緒にしないでよ!」


ヒドい、カイ!!置いて行こうとしたくせに!!


「同じだ。カイは魔法を渋るアリスに使わせただろう?確かにアリスは考えなしに見えるが、約束を守ろうとしていた。」


「そうだよ、カイ!私は悪くないよ!」


「アリスも悪い。なぜそこで自重しなかった。カイと一緒に使うことを決めたのはお前だ。」


「「…。」」


「全く、似た者同士だな…。私とアリスが姉妹って言うより、カイとの方がよっぽど兄妹みたいだな。見た目も似ているし。」


まぁ、確かにエルサ姉は髪も目も薄っすら茶色だ。私とカイのように黒髪黒目じゃないけど。けど、歳が離れすぎじゃない?日本にも歳が離れた兄妹は居るが、ここではどうなんだろう?


「とりあえず、今日からアリスとカイは一緒に私が教えていく。」


「へ?別に俺には必要ないだろ?コイツと違って俺は普通だぜ。」


ちょっと、私が頭がおかしい人間みたいに言うのは止めて。


「確かにそうだが、魔法に関しては私も片手間に教えていたから中途半端だろ?良い機会だから、一緒に覚えていく方が良い。」


確かに、カイは光魔法を使えない魔法って言ってた。


「それに、アリスが使っていた魔法を使いたいんだろ?私も一緒に覚えるから、カイも一緒に覚えていこう。そうしたら、スラムでの生活も少しは楽になるだろう。」


・・・・・・・・・・


その後、勉強会みたいに色々なことを教えてくれた。

先ずは身近に使う魔法のこと。火・水・風・土・光の五大属性魔法をこの世界では使っており、人によって魔力量が違うらしい。魔力量とは、その魔法に注ぐことの出来る魔力で、多く注ぐ事で規模が変わる。しかし、規模が変わると言っても大したことはない。


「エルサ先生。規模が大きくなるって言うんなら、被害も変わって大変なんじゃないんですか?」


「その先生と言うのは止めてくれ。私も覚えている範囲の事だけしか言えないからな。」


エルサ姉は苦笑しながら教えてくれた。

火魔法の場合、ある一定ラインで火の玉が出てくるようになるが、その後も魔力を多く注いでもその玉の大きさが変わるだけ。要は


火魔法

魔力小→ライター位

魔力中→火の玉(5センチ位)

魔力大→大きな火の玉(魔力量にあった大きさ)


大きくても精々1メートルくらいで、それ以上は王族とか高位貴族が使えるが、燃える範囲が広くなっていくだけなのだそうだ。もちろん、戦いとなれば、その大きさがモノを言うだろうが、王族や高位貴族が出ていく争いなどあるはずがない。それに、相対する水魔法で消せば良い。


「風や土魔法はどうなんですか?」


「…ボスがお前に『常識を教えろ』と言ったことに繋がる。」


風は強風を出すことしか出来ない。要は涼んだり、匂いを飛ばしたり。戦いとなっても強風で相手の足止めをするくらい。『切り落とす』がどう言う発想で出てくるのか分からないらしい。確かに、ファンタジーで使ってる風切り刄とか言われても意味が分からないよね。エアーカッターとか無いだろうし。

…ここでファンタジーの土の使い方とか言わない方が良いだろうな。地面が揺れるって怖いよね。


「アリスの言う使い方が出来るのかどうかもだが、それだけの魔力量があるのかも分からないからな。」


魔力量は神殿にある水晶を触り、そこに数値が出てくるらしい。一般人は100前後に対し、貴族ともなると最初から2000や3000もあるとのこと。王族などすごいそうだ。しかしスラムの人間は神殿に行けない。毎日使う中で、自分が最高何回、何が出来るか覚えていくしかない。

枯渇するまで放つと疲れてしまい、その後は何もできない。しかし、そのお陰で身体が枠を広げようとして、多少魔力量が伸びるらしい。


「だから、ある程度1日で使う量まで伸ばしたらそれ以上は無理して伸ばさない。魔力量が増えても出来ることなんてたがが知れてるからな。それにスラムの人間は神殿に行けないし、最初にどれだけ持ってるのかは分からない事に困るくらいだ。後は感覚で覚えていくしかない。」


フワッとした魔法理論だなぁ。前の世界のファンタジーでは残量とか分かってたのに…。しかもレベルアップしたら使える魔法が強力になってたのに。まぁ、レベルなんて無いから仕方ないか。


・・・・・・・・・・・・・・・


そんなこんなで話し込んでいたら、既に夕方になっていた。


「今日はここまでで良いだろう。明日はそれを踏まえて魔法を使ってみよう。」


「「はーい。」」


そうして1日が終わる。

昨日は出来なかったが、水魔法を使い、簡単に体を洗い(浴室では無いけど体を洗う場所があった)、エルサ姉の作ってくれた夕食を食べる。手作りの野菜で作ったスープと買ってきたパンだ。日本のように沢山の調味料は無いが、そんなにハズレな食事ではない。良かった。異世界召喚の中には、不味い食事が一般的な所もあるから、そこだけは良かった。若干、味は薄いが十分だ。ベッドに入って後は寝るだけだ。


ーしかし

(傷が消えてた…。)


水浴した時に気付いたのだが、16歳の時に、盲腸で手術をした跡が消えていた。

ここに来て、自分の体などまじまじ見なかったし気付かなかった。ここにある鏡はそこまで顔をハッキリ映さないので『若い』と言われても気にしていなかった。しかし、リュックの中にあった鏡でこっそり確認してみたら何だか若くなっている。


(問題はないだろうけど、明日、エルサ姉に言ってみよう…。)


まぁ、異世界召喚の嬉しい副産物として考えておこう!けど、20歳→16歳って微妙じゃね?もっとこうさ、『うわ、スゲー!!』的なものでも良いと思うんだけど!私は何だか納得のいかないまま、目を閉じた。


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