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エルサ姉との出会い

相変わらずドタバタです

さて、再度慌てる時間がやってきました。


どうしよう。メッチャ怖い。般若って居たんだ。さすが異世界。

うん、現実逃避は終了だ。

お願い、カイ。助けてください…。


・・・・・・・・・・・


遡ること2時間前。

カイと自己紹介が終わり、ほのぼのした時間がやってきた。

カイはこの春、9歳になったそうだ。話した感じ、もう少し上かと思ったけど…。しっかりした9歳だなぁ。


ちなみに最後の胡散臭い目は『苗字』に関してだった。この世界には『苗字』は無いとのこと。

カイから『アリスが名前か?それともエリナか?』と問われ、エリナだと伝えた。『変な名前だな』と言われた。失礼な。少し不貞腐れた顔をしていたら、『じゃあな』と、カイはあっさり別れの挨拶を口にした。



ー2時間前


「ちょーーと待って!」


「何?」


いやいやいやいや、『何?』じゃ無いだろ!


「私、一人にするの?さっきも話したけど、私、ここが何処だか分からないんだけど⁉︎」


「だから、ゾイシスナイトの王都だって教えたじゃん。お前、頭、大丈夫か?」


そんな哀れんだ目で見るなーー‼︎

そうじゃない。そうだけどそうじゃない。


「いや、確かにゾイシスナイトの王都ってことは分かったよ。けど、私は今まで『ゾイシスナイト』も『王都』も知らないかったわけで。」


うん。哀れんだ目・2回目は止めてくれ。

『コイツ、どんだけ世間知らずなんだ?』の目線は止めろ。


「このままだと、私は行く先がない。けど、どうやってココに来たのか分からないから、帰る方法も分からない。八方塞がりなわけだ。」


うんうん、頷きながら哀れんだ目で見るなー!約束の3回目。


「だから、カイに色々と教えてもらいたいの。」


「は?何で俺がお前の面倒見なきゃいけないわけ?」


はい、スパーーっと会話が切られました。


「そりゃ確かにそうだけど…。」


20歳の社会人が甘えた考えだったのはいけない。つい、話せる知り合いが出来て、また楽な方へ行ってた…。

うん。確かにカイは9歳だ。下手したら不審者案件だ。しかし背に腹は変えられない!


「そうだね。確かにそうだ。けど、もちろんタダではない!」


財布から100円を出す。


「今日、1日だけでも良い。泊まれる所とか、その他のこの国の常識を教えてくれたら、これに合わせて…」


今度は50円玉を出す。


「とっておきのコレをお駄賃として渡してあげようじゃないか!」


「…見せてみろ。」


うぅ。金額は下がるけど、この穴の周りに綺麗な細工があるのは驚くはずだ。

…いや、違う。驚いてくれ‼︎お金で少年を買ってるみたいで何か嫌だけど!


「…まぁ良い。だったらコレで面倒見てやるよ。」


わーい!日本だったらアウトな気がする(しかも150円で釣ってしまった)。しかしココはゾイシスナイトなのだ!だから大丈夫‼︎


「で、泊まる所か?」


うん。それも大事だけど、とりあえずゾイシスナイトで使えるお金を作らなきゃ。ある意味、今の私は一文無しだ。


「それより、他のお金を換金したい。どこで出来るの?」


「…お前のような奴は、平民街でした方が良いだろ。こっちじゃ出来ないし。」


「お前のような奴って、どういう意味?」


「服だよ。」


は?服?


「しかもお前は平民だって言ってたよな?」


「うん。平民です。何も取り柄はありません。」


…言ってて悲しくなってきた。何で異世界に来てまで、自分をコキおろさなければいけないのだ。


「その服はスラム街では目立つ。下手したら襲われて身包み剥がされるぞ。」


マジか。この手抜きファストファッションで身包み剥がされるのか。


「そういや常識もって言ってたな。」


はい。この国一体何ですか?


「とりあえず説明するぞ。」


ーーーーーーーーーーー


このゾイシスナイトという国は、王族・貴族・平民で構成されているそうだ。

その中に入っていない『スラム』の人間は、国民ではないらしい。端的に『物』だと言っていた。

言うなれば日本でいう戸籍票がない。出生届けを出されていない、『居るはずのない人間』になるのだ。


また、スラムには独特のしきたりがある。『居るはずのない人間』に仕事を頼みたい輩は入り口の所の『居るはずのない人間』に頼むのみ。勝手にスラム街に入り仕事を頼む・スラム街でスラムの住民を痛めつけるのは『奪っても良い対象』。逆に、スラムの人間が仕事以外でスラムの外に出ると同じことが起きる。因みに戻ってこないことが多いそうだ。

相互監視の社会で、勝手をした『国民』と『居るはずのない人間』がいれば、ボスに報告すると金一封がもらえる。もちろん嘘だったら嘘つきの『居るはずのない人間』が本当に居なくなるだけ。怖い。


カイは元平民だったらしい。3歳の頃にスラムの母親・叔母と共に逃げてきたそうだ。毎年春の間に税金を納めなければいけないが、納めなかったら戸籍票は破棄される。カイたちは冬の終わりに逃げてきて、春が過ぎてやっとスラムの住民になったらしい。それまでは表向きは『国民』だから、難癖を付けられ、絡まれる事があったそうな。

ここで叔母の出番がやってくる。王都にある『学園』を卒業し、成績トップで卒業したとの事。特に武術が凄いらしい。怖い。

また、この世界には『魔法』があり、存在魔力量が多いと、攻撃手段も凄くなるらしい。どう凄いのか分からんが。カイも叔母に習って少し使えるそうだ。

母親は4年前、カイが5歳の頃に流行病で亡くなったそうだ。それから叔母と2人暮らしらしい。父親

ついては小さい頃、一度聞いた時、母親に泣かれ聞き辛くなったそうだ。今更、叔母に聞いてもずっと居ないので、聞いても意味がない。母親みたいに泣かれても困る。カイは生死も知らないとのことだった。


ーーーーーーーーーーーー


う〜ん。重い。

日本のぬくぬくとした環境に育ってきた人間としては、なかなか厳しい国だ。

しかし、『魔法』か。私も使えるかな?


そんなこんなでカイとその辺の石に座り、すっかり話し込んでいた。

途中、お腹が空いてきてカイと飴ちゃんを舐めていたら、あっという間の2時間だった。


「これ、マジ美味いな。もう一つくれよ。」


「ダメだよ。今日、換金出来なかったらコレが私の晩御飯なんだから…。」


辛い。電車でお菓子、食べなければ良かった。


「それに、カイが言ってた『国民』の条件なんだけど、私、日本の戸籍票なんて持ち歩いてないよ?どうやって『平民』を証明すれば良いの?」


「確かにそうだな…。」


「ある意味私も『居ないはずの人間』なんだよね。」


「面白い話ね?」


「「へ?」」


突然の第三者の声に驚いた。そのまま、石からお尻が落ちた。地味に痛い。

上を見上げれば少し茶味掛かった黒髪の若くて綺麗なお姉さんが居る。イヤ、少し下の歳くらいかな?


「エルサ姉…。」


「なぜココでカイは『平民もどき』と話してるの?仕事はスラム内のみの約束だったよね?」


「いや、それは…」


「『それは』何?オーケが『カイが入り口に居る。しかも平民の女と話してた。』って教えてくれたの。私も仕事中だったし、『入り口に居る人間は好きにさせろ』がルールだからオーケも引っ張ってこれない。かれこれ1時間以上経つのに、何をそんなに話してたの?」


…怒ってる。これはかなり怒ってる。怒涛の尋問だ。

と言うか『エルサネエ』って誰だ。姉か?『エルサ姉』か?さっきの話からはお姉ちゃんが居るなんて聞いてないぞ?


「オーケが見た時には、すでにかなり話し込んでいる様子だったって聞いたの。急いで仕事を終わらせて、ボスに無理を言って走ってきたのに、あんた達は気付きもせず話し込んでる。近付いても気付かない。で?『それは』何?何の話しをしていたの⁉︎さっさと言いなさい‼︎‼︎」


爆発した‼︎ヤバい‼︎カイ、頑張れ‼︎‼︎

私は少しずつ後ろに下がり、脱出を考える。日和見主義・なあなあで楽な方へと生きている人間にはマジな怒りは恐怖です‼︎‼︎

うわっっっっ‼︎怖っっっっわ‼︎こっち見た‼︎‼︎何で‼︎⁇恐怖で泣きそうだよ‼︎‼︎‼︎


「あんた、逃げようとしてるでしょ。今、あんたのいる場所は土埃舞う『スラム』よ。逃げられると思ってないでしょうねぇ?」


優しい言葉尻が更に恐怖です‼︎‼︎

あぁ、神様仏様‼︎今まで真剣に拝まず申し訳ありません‼︎

今後しっかり拝みますので、この年下般若をどうにかして下さい‼︎‼︎


・・・・・・・・・・・・・・


そうして冒頭に戻る。怒れる般若顏のエルサ姉は仁王立。ちょっぴり涙目のカイと私は正座。この世界にもあったのか、正座。


「で?疾しいことが無いなら言えるよね?一体何を隠しているわけ?」


ヤバい。人が集まって来た。こんな中じゃ言えない。

だって私は本当に分からないのだ。カイに言った日本出身は嘘じゃ無い。けれど『実は異世界召喚されました〜』何て言っても信じてくれないだろう。と言うか私が逆の立場だったら絶対信じない。

だって考えてもみてくれ?現代日本に突然『召喚されたのです‼︎』と言う黒髪黒目の女。即病院行きではないか!例え黄緑だろうが紫だろうが『凝ってますね〜。』で終了だ。いや、1ヶ月くらいして髪が伸びても黄緑だったら信じてくれるかもしれない。しかし無理だ!ココは私と同じ黒髪黒目が沢山いる‼︎だってカイも同じ色なのだ‼︎‼︎


「「……。」」


「何?何も言わないの?何なら鉄拳制裁が必要かしら?」


イヤーーーーー‼︎‼︎

バキバキ指の骨鳴らしてるーーーーーーーー‼︎‼︎


「…エルサ姉。」


おっと、ここでカイが行ったーーー‼︎‼︎

お姉さんは応援してるよ‼︎‼︎

頑張れ、カイ‼︎超頑張れ‼︎‼︎


「…ちょっとこっち来て。それで耳かして。」


よしよし、カイ。良いぞ。その調子だ!そのままエルサ姉の注意を引きつけてくれ!


「…っっカイ!これは…。」


「うん。だから家で話したい。」


良いぞ、カイ。とりあえず右手にリュックは持った。後は駈け出すだけ‼︎いざ、さらば‼︎‼︎


「にぅゅ‼︎⁇」

バタン、ゴチんっ‼︎

「痛っっっっっったーーー‼︎‼︎」

ゲフォッッッ、ゲホッッッッ、ゲボッッッ‼︎


「「‼︎⁇」」


シーーーーーーーーン……。


…カイとエルサ姉の顔が見れない。

うん。まさかこんなに足が痺れているだなんて予想外だ。しかも頭を地面にぶつけて痛い。しかも痛みに声を上げたら口に入る土埃。泣きっ面に蜂どころではない。何だ。何でよ。ここでお約束の三段構えはいらないでしょっっっっ‼︎‼︎


そっと頭を上げると、右手で頭を抱えるエルサ姉。

ーーーそして、


「……。」


4回目の、何とも哀れんだ目を向けるカイがそこに居た。


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