職員室 証拠探し
結局俺達はあの後、先生に欠課をさせてもらい、郭と一緒に原因究明をした。
先生は最初俺達が行くことを頑なに良しとしなかったが、0組の郭の名前を出した途端快諾した。0組の力も調べるべきだと感じる一事だった。
「...なぁ紫苑。」
「どうしたの?」
「...なんで浅黄が降格処分を食らったんだと思う?」
「...分からない...浅黄さんの成績表なら僕だって見た。あの点だったら、上手くやれば今年中に1組に上がれるほど良い結果だったよね。素行不良による降格だってないだろうね。彼女は問題を起こすような人じゃないから...」
俺達の歩くスピードは次第に速くなっていった。早く職員室に行って原因を探さないと、という気持ちが俺達をつき動かしていた。
―――
職員室に着いた。なにやら郭と翡翠先生が揉めているようだ。
「――だから、あの降格は正当な評価だったと言っているだろう?ほら、特別に浅黄の成績表も見せてやる。」
「なんですかこの成績表は?私達が見た、記憶したものと全然違うじゃないですか。浅黄 薫の成績表を見せてくださいと言っているんです。どこの誰だか知らない人の成績なんて私は興味ありません。」
翡翠先生は気が滅入っているように見えた。こちらに助けを求めるような視線まで送ってきた。
でも申し訳ありません翡翠先生、今はあなたを助けたくない。
「翡翠先生、僕達にも成績表を見せてくれませんか?」
「お前らもか...ダメだ。0組の郭ならともかく、一般生徒のお前らには見せられ――」
「国語94点、数学88点、英語96点だよ。」
「な...赤嶺...お前...」
完全に面食らっている先生を尻目に、俺は郭に聞いた。
「おい待てよ。どういうことだ?前浅黄が見せてきた成績表と全然点数が違うじゃねぇか。」
「だからおかしいって話を今翡翠先生としてたんだよ。私の記憶によると、前薫ちゃんが見せてくれた成績表には確実に石黒校長と翡翠先生の印鑑があった。だからあれは正当な成績表であるはずなの。だけど――」
郭は翡翠先生から成績表を奪い取り、ヒラヒラさせてみて、さらに言葉を続けた。
「この、もう1つの成績表にも2人の印鑑があるの。これはおかしくない?」
俺は郭から紙を受け取り、成績表を見た。翡翠先生はもう半ば諦めている様子で俺達を見ていた。
...なるほど、確かにこの印鑑は本物だ。しかも先生の手元にあったなら、これが本物であると見るのが妥当だろう。しかし――
「...仮に浅黄さんが成績表を偽装したとして、誰が得をするのかな?」
先に口を開いたのは紫苑だった。郭は急に押し黙った。
そう。普通の学校なら点数の漏洩なんて起こりえないから、偽装することにより皆を欺けるというメリットがある。自分を頭の良い奴だと思わせることも出来る。
だがここは薊高校だ。いくら成績表を偽造したからといって、クラス替えにそれが反映される訳がない。2段降格ならば尚更メリットが無くなっていく。そしてそれに気づかない程浅黄も馬鹿じゃない。
「...まずはどっちが偽物なのか、それから考えなきゃな。」
「ああ。」
俺達は職員室を後にし、談話室へと向かった。
薊高校の成績システムについて解説をば。
薊高校のテストは各教科200点満点で行われ、1年生は国、数、英の3科目、2年生と3年生は国、数、英、社、理の5科目となっています。
また成績表については、生徒には先生が持っているオリジナルの成績表をコピーしたものが配られます。
オリジナルの成績表には校長と担任の教師の捺印が捺されています。成績表の正当性を示すためです。
とりあえずは以上です。今回も読んでくださりありがとうございました。