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響前のスパーク  作者: 石黒 宗孝
第1章 薊高校という地獄
3/5

1年2組 ST後

翡翠先生が出て行った後の教室は、

「薫ちゃん...可哀想...」

浅黄を憐れむ者。

「2段降格とか、余程勉強しなかったんだな。なんで最初2組に配属されたんだか。」

浅黄を見下す者。

「...はは、私じゃなくてよかった...」

安堵する者もいた。

しかし...俺は浅黄から目を離せなかった。

「なんで...?なんで私が...?なんでなんで...?ちゃんとやったのに...嫌なことちゃんとやったのになんで??あぁ...どうしよう...」

「お、おい浅黄、落ち着けって「無理だよ!!隼人くんは降格がどんな意味を持ってるのか分かってないの!?」

もちろん理解している...つもりだ。

降格した生徒は、その努力不足で他生徒から蔑まれる。元々上にいたのだから、能力はある。それなのに勤勉に動かなかったことに対して見下され、孤立する。2段階ともなれば尚更だ。

昇格して元のクラスに戻って来れても、それは変わらない......その上、降格した生徒を教師はぞんざいに扱う。だから虐めとかをくらってもどうしようもなくなってしまう...だから浅黄が取り乱すのもわかる。でも今はどうにか窘めないと――!

「...浅黄さん、落ち着きなって。」

「ッ誰!?」

「僕だよ。紫苑(しえん)だよ。浅黄さん、1回深呼吸して、降格のことは忘れて、ね?」

「!.....う...ん...」

浅黄の頭が冷めてきたのもあり、段々と浅黄は落ち着いてきた。紫苑、声掛けてくれてありがとう。そしてすまない。

「...じゃあ僕が浅黄さんを4組に送ってくるね。」

紫苑は浅黄を連れて、4組へ向かった。


―――


紫苑が帰ってきた。

「あ、あぁ...ありがとう紫苑...すまん...」

「緑川くんが謝るようなことじゃない。僕が彼女をなんとかできたのも偶然だって。」

「あ...そう、か...」

俺もまだ動揺が収まらなかった。それは紫苑も同じだったらしく、

「...怖いね、あんな快活な浅黄さんがあんな風になっちゃうなんて...」

顔を青くして静かに言った。

...席に戻らなきゃ...

「...じゃあ、そろそろ席に「ねぇ隼人、なんでだと思う?」


郭が突然俺に向かって問うた。


俺は返答ができなかった。


そんなのお構いなしに郭は続ける。


「薫ちゃんの成績表、隼人も見たよね?明らかに隼人よりも高成績だった。それなのに隼人は2組に残って、薫ちゃんはなんと2段降格。ねぇ、なんでだと思う?」

郭は再び俺に問うた。

「な、なんで...って...そんなの、分からないよ「薊高校の2組の頭脳はただの飾り?」

明確な、敵意を持った罵倒が発せられた。矢継ぎ早に続けられる郭の言葉に、俺は何も言い返せない。

「考えるのを放棄しないでよ。なんで降格したのか分からないなら、知る努力をしようよ。」

そう言って郭は教室を出ようとした。

「お、おい郭!どこ行く気だよ!?」

「原因究明だよ。0組特権で自由に動けるからね。ほら隼人たちも。知りたいなら来なよ。先、職員室に行ってるよ。」

郭は振り返らず教室を出た。郭が職員室の方へ走っていく音が聞こえる。

「...なぁ紫苑、どうする?」

「どうする...って、どうしようも...」


1限開始のチャイムが鳴った。


俺達は立ち尽くしたまま、動けなかった。

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