1年2組 ST
ここはA県O市にある私立薊高校。県内偏差値トップを誇る、自他ともに認める進学校だ。ここ迄なら普通の高校だろうが、決定的に違うことが2つある。
1つは0組という一芸推薦入試による入学方法が存在していることだ。
一芸推薦入試とは、ある分野において非常に優れている人材を毎年3人採用するというもの。各々自分の一芸を磨くためにある程度の自由行動が許されている。
そして...今俺の隣にいる郭も...
「隼人、お腹すいた。何か頂戴。」
「嫌に決まってるだろ。購買でなんか買って来い。」
...0組の一員...のはずだ。
ちなみに彼女の一芸は『知能』。聞いた話だとかの天才ノイマンを上回るIQを保持しているという話だが...
「欲しいよぉ...頂戴頂戴!!」
...全然そのようには見えない。全く困ったものだ。
「郭ちゃんお腹すいたの?よかったらこれいる?」
「薫ちゃんいいの!?ありがとう!」
浅黄 薫が郭にチョコを渡したようだ。
これで静かになってくれたらいいんだがな。
「すまんな浅黄。チョコ代払うよ。」
「いいって別に。私が厚意であげたものだからね。その代わりと言っちゃあなんだけど...ね、古文の予習見せて?」
...なるほどな。郭を出汁に使うなんてふざけたことしやがる。逆らえねぇじゃねぇか。
「しょうがねぇなぁ...あ、もうST始まるからまた後でな。」
「うん!さっすが隼人くんは頼りになるなぁ〜」
そう言いながら浅黄は自席へ戻っていった。浅黄は昔から理数系科目が得意かつ大好きで、そういう科目には積極的に取り組むが、文系科目にはまるで興味が無い奴だ。まぁ、それなりに点は取れるし、実際今回の実力テストで俺は浅黄に負けた。
...いやはや、一体どういう頭をしていらっしゃるのやら。
「それでは本日のSTを始める。」
そしてSTが始まり、ついさっきまで騒いでいたクラスメイトが静まって、翡翠先生の話に耳を傾ける。いつも通りの朝礼かと思ったが、今日は違った。
「今から前の実テの結果による第1回クラス再編成を行う。こら、騒ぐんじゃない、静かに聞いていなさい。」
そう、これがもう1つの違い。年5回の実力テストの結果でクラスが編成し直されることだ。まさしく実力至上主義と呼ぶに相応しい。まぁ、最初の1回では何かが大きく動くことなんてないだろう。今回のテストをしくじったなんて話は誰からも聞いてないし。そんな風に、適当に翡翠先生の声に耳を傾けていた。
でも。
そんな俺の予想は、
易々と裏切られた。
「浅黄 薫。4組に降格。以後、また勉学に励み、2組へ戻ってこれる事を期待する。以上。」
「「...えっ?」」
浅黄1人だけ降格処分になった。
「それじゃ、本日のSTは終わり」
そして始まる
「え?え?待ってよ、なんで私が...?」
俺達と学校の
(...なーんで薫ちゃんなのかな?)
長きに渡る戦いが。