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序文 未だ届かぬ雷光
曇天を見上げ、少女は語る。
「――知ってるかい?雷っていうのはね、光が先に届き、音が遅れてくるのさ。何故かって?―そう、光の方が1秒間に空間を進む速度が速いからだ。故に私はこの光が速く届く現象を『響前のスパーク』と名付け...おい?隼人、さてはお前聞いてないな?」
少女を見、少年は応える。
「ああ、ちゃんと聞いてたぞ。お前のその破壊的なネーミングセンスはどうにかならないのか?」
「お前...」
少女は怒りに身を震わせていた。少々大袈裟に見えるのは愛嬌だろう。
「大体そんなこと、小学生でも知ってるさ。今更そんな常識を自慢されてもねぇ...」
「うぐ...」
「大体、この薊高校でそんなけったいな知識自慢が通用すると思ってんのか?」
「な!それじゃあこんなのはどうだ!?薊の花言葉は...」
少女の名は赤嶺 郭。
少年の名は緑川 隼人。
彼女らはここ、薊高校で――
「...『復讐』、だそうだぞ。」
その花の、言葉の重みを思い知る。