壊れた日常
下らない日常を過ごしながら、それに浸って、自分には関係ないと、他人事だった。だから、最初、それを聞いた時、違和感が無かった。
「ーーーーーーえーーほーーーい」
突然、後ろからそんな声が聞こえた気がしたと思えば、
『ベキッ』
と隣で鈍い音がした。
音がした方を見てみると、
「え?」
と言いながら、首がソレに折り曲げられた早希がそこに居た。その直後、ソレは早希の首をねじ切り、服を剥いで犯し始めた。
早希を除いた全員が固まって、
「ちょ………え?
何なの…?何かの撮影…?」
と理解が出来なかったが、
ソレが早希の身体を嬲る度に、だんだんと理解が追いついてくる。
"殺される"
と全員が直感的にそう思った。
だから、ソレが早希だった何かを嬲っている間に逃げようと、走ろうとした。
が、すぐに足が絡まってコケた。
「何で?どうして?」
とアタシと舞も麗奈も立とうと、走ろうとしたが立たなかった。3人共が、唐突な悪意と、唐突なアクシデントで腰が抜けてしまっていた。
3人の中でいち早く態勢を立ち直したのは、麗奈。3人の中で随一の身体能力が高かった。だから、立ち直したと同時に走った。全力で。ひたすらに。
だが、走ったはずなのに、進めていない。寧ろ、目線が低くなっていた。
「なんで…?」
と麗奈は疑問を感じた。その麗奈を見た舞が、
「れ…、麗奈、足」
と、さっきまで笑っていた舞が恐怖で強張った顔で言った。その言葉を聞いたと同時に、麗奈は
「ーーーー!!?」
声にならない、奇声のような悲鳴を上げた。さっきまで普通に、何不自由なくあった足が、足がない…と。叫んだ、涙を浮かべて、綾乃も麗奈に話しかけようとしたが、
「ーーさい」
という低い、さっきも聞いた声が聴こえたとも思うと、
『グシャ』
と音と同時に麗奈は静かになった。
アタシと舞は、理解出来た。
最初に聴こえたソレが言った言葉を。
"女が沢山いる。選び放題だ"
そう言った。まるで狩りゲームのように。