フィリア、妹に会う
「ただいま〜」
先ほどの現場から1分ほど歩けば俺の家に着く。
玄関を開けるとリビングから。
「おかえり〜」
という返事が返ってきた。どうやらもう帰ってきてるらしい。
俺はフィリアと一緒に手洗いを済ませリビングに向かう。
「おかえりお兄ちゃん。帰りちょっと遅かったけどなんかあった…の……お兄ちゃん、その人誰!?」
先ほどの声の主、そして今、びっくり仰天というような顔で近づいてきたのは妹の内宮遥菜だ。
黒いロングの髪をポニーテールで束ね、ぶかぶかのパーカーだけというダラけた格好だが、こう見えて成績優秀でスポーツもそこそこできる。歳は俺の2つ下の13。今年から中2になる。
「え、まさか…お兄ちゃんの彼女!?まだ高校に入学する前なのに?あー、オープンキャンパスで知り合ったんだ。それにしても…変な格好だね。彼女さん」
なんか勝手に解釈して納得しているがな、我が妹よ。今からこいつがバカな事言うが聞いてやってくれ。
そう思っていた時、フィリアがやらかした。
「初めまして遥菜様。私、貴方のお兄様のメイドのフィリア・セレヌディアでございます。これからよろしくお願い致します」
『………』
リビングに流れる静寂。まるで留守の家のような、そんな空気。
おい、なんか遥菜が何言ってんのこの人?みたいな顔で俺を見てくるんだが、やめてくれ妹よ。俺にもわからんから。
「ねぇ、フィリアさんだっけ?いいお医者さん教えてあげよっか?」
「え?」
やりやがった。遥菜じゃなくフィリアが。
こいつ、遥菜に本気で心配されてやがる。なんでわかるかって?何年遥菜の兄やってると思ってんだ。顔を見ればわかるわ。
「え、お医者様?なぜでしょうか。私、そんな変に思われるような事言いました?」
うん、言ってたよ。しかも2回も。
「お兄ちゃん、この人多分泥棒だよ。新手の」
「あー!また言われた!!なぜですか!?なぜ貴方方から見て私は泥棒に見えるのですか?」
「「考えればわかるだろ」」
「!?」
いや、そんな驚かれても。
「わかった。まずは晩ごはんにしよう。話はそれからだ。いいな、フィリア」
「は、はい。あ、でしたら私がディナーを用意致します!」
「ディナーじゃなくていいから。うーん、じゃあ頼むわ。正直不安だけど、メイドだって言うなら、お手並み拝見だな」
「はい!お任せください!では、少々お待ちください」
というわけで、今日のうちの晩ごはんはフィリアの手作りという事になったのだった。