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集落


東京生まれ、東京育ち。20年過ごした土地にも関わらず、こんなところがあるとは知りもしなった。

車窓から見える景色は、不気味であると同時に何故か懐かしさを感じさせる場所だった。


「なにあれ……村…みたい…東京にもあんな所あるんだ」

新宿、渋谷、六本木、青山、華やかな街ばかり繰り出してきた私には、この殺風景は目新しかった。













車内のアナウンスが聞きなれない駅名を告げた時、私は夢から覚めた。今日は配属先が変わってから初出勤だったため、電車を誤ったらしい。上野で乗り換えのはずが、全く見知らぬ土地である、ここにについてしまったという訳だ。仕事終わりでよかった、と安堵した。

とりあえず向かいの登電車を待とうと電車を降り立った。


「あー……さっむ……っ」


足元から吹き抜ける風が冷たく、冬の訪れを感じさせる。

かじかむ手でスマートフォンを動かしながら、時間を確認した。

次の電車がすぐに来ることを願いつつ時刻表に目を走らせるも、願いは一瞬にして砕かれた。


「……は!?えっ、1時間後!!?ちょっと……まってまってまって」


無人駅には券売機と私のみしか居ない。私の頼みの常はスマートフォンだった。1つ違いの妹に連絡をすれば車を走らせて来てくれるかもしれない。この寒さの中1時間も待つ心の広さと耐久力を私は持ち合わせていなかった。

さっそく動かない指でなんとか電話画面までもっていく。

そこで私は目を疑った。


「電話帳……0件になってる……」


何度同じページを開いても結果は変わらなかった。


「どういうこと?寒さで壊れたのかな」


スマートフォンを軽く手の上で叩いてやる。次に振ってみる。

画面は相変わらず煌々と光を放っていた。


心配になりメールやSNSなども調べてみたが、予想通り一切の情報が消されていた。まるで本体を初期化してしまったようにも見えたが、ロック画面が我が家の愛犬マロンであったことから、そうではないことがわかる。


「……うーん……わからん……」


写真フォルダも念の為見てみると、真っ黒く表示されているものもあれば何故かしっかりと残っているものもあった。


「気味悪いな……どうしよう……」


徐々に不安が募る気持ちに蓋をする。感情とは気づいてしまうと怖くなるものだ。気づく前に蓋をする。

これは、人から良く思われたい、褒められたい、そんな想いから生んだ良くも悪くも、彼女のクセだ。感情を押し込めるせいでいつも人間関係がうまくいかないことを私は自覚していた。

そんな自分が唯一心を開ける存在が、妹の早苗だ。親にも、友達にも、恋人にも気を使う私が早苗にだけは素直でいれた。

何度も電話をしたその番号は記憶されている。

震える指先で番号を打ち込んだ。


早く出てーーー、そう心から念じ、発信ボタンを押す直前、いつもと違う表示が目に止まった。


[圏外]


不安という感情に気づいてしまった今、内蔵が食道を伝って吐き出された、気がした。

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