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夏の決心(千文字小説)

作者: 小出元春




 ……あぢぃ……


 徐々に大きくなるゼミの鳴き声と汗ばんだTシャツが嫌で目が覚めた。

 頭を上げると雨樋はもう開けてあって網戸になっている。半透明のカーテンが風で少しなびいているけど、あんまり風は入ってこない。時計を見ると、八時を少し回っていた。

 にっひっひと顔がニヤけるのが分かった。いつもより寝起きが良いのは、今日が待ちに待った夏休みの初日だから!


 やったねゴ○リ、今日から遊び放題だよ!

 だけどねゴロ○、僕には使命があるんだ。それはね、いつもなら怒られる事を夏休みの間に全部実行するという使命が!

 すぐに起き上がって昨日までに書き溜めた自由帳を開いてミッションを確認!


 ・朝は好きな時間におきる!

 ・誰も家にいないときにはだかでダッシュ!

 ・夜は十一時までおきる!

 ・いえの手伝いをするフリをしてポケ○ンカードを買ってもらう! etc……


 さっそく洗面台に向かって蛇口を捻る。冷たい水が出るまで待ってから顔を洗って気合いを入れる。

 次は朝飯! その前に先週捕まえたカブトムシとクワガタにエサをあげる。父ちゃんから言われた約束守る俺ちょー偉い!

 そんでもって自分のご飯。休みの日にしか許されないコーンフレークを茶碗いっぱいによそって、冷たい牛乳をつるつるいっぱいまで注ぐ。溢さないように気を付けながら居間まで移動。テレビを観ながら朝飯を食べる!


 テレビをつけると丁度ジャカ○ャカジャンケンが始まるところだった。リズムに合わせてグーを出す。コ○―ちゃんはチョキ。これは幸先が良い! 僕は小さくガッツポーズをした!

 ジャカジャ○ジャンケンが終わると音楽が流れ始める。画面にはワニとアリクイが赤いスポーツカーに乗っている。『一秒一秒が命がけ』なんてまさにこれからの僕じゃないか!

 風鈴が風に揺れて静かに響いた。『夏休みはやっぱり短い』なんて絶対に嘘だよ。一ヶ月半もあるんだ。宿題は少しずつやって、花火でしょ、一日中友達とゲーム、ポ○モンの映画を観る、それから……







……ピ……ピピッ……ピピッ……ピピッ……


 アラームの音量が少しずつ大きくなる。耳の裏にあるボタンを弄り当ててアラームを止めた。頭に取り付けてあったカチューシャ状の機械を外す。

 『DCM』。通称、夢の機械。パソコンに入力した単語を元に、その使用者の記憶を夢に観させる機械だ。



 「あ~あ」


 自分が入力した単語はただ一つ、夏休み。

 

 今晩もまた同じ単語を入れて眠ろう。あの夢の続きが観れることを願って。

BGMは大江千里さんの『夏の決心』で。

もう目覚めなくっていいや……


最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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