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彼女の場合

メール投稿なので、読みにくいかもしれません。

上手く歩けない。何でだろう、ヒールの低いミュールなのに。


「早く来いよ」


イライラした声。呼んでくれてるけど待ってはくれない。大きい背中がどんどん小さくなってく。でも理由は分かってるからいいよ。さっき彼女がいたもんね。ミキさんだったかな、こっちに気付いてた。向かいの私を見てびっくりしてたから。


せっかく人気の美味しいパンケーキのお店に来たのに 、お皿がテーブルに置かれた途端、正面に座ってる男は味わう事なく口に詰め込みはじめた。私の注文したのが届いた時には既にお冷も空。雰囲気は最悪。早く食べろという無言のプレッシャーに勝てず、結局私も急いで食べ終え早々に店を出た。


人陰でほとんど見えなくなった背中を追いかけるのも嫌になって、速度もだんだん落ちて足が止まった。

気付いたかな。今日は珍しく髪を巻いて、つけま付けてメイクに時間かけたし、服だっておろしたてだったんだけどな。


小4の途中、隣の新築の家に越してきた一家の長男が私と同い年だった。そして私のいるクラスに転入。それから小中高大学とたまたま一緒。しかし今年の4月、家から通える大学へ入学したのに、学校近くに安アパートを借りてサーッとアイツはいなくなってしまった。学部も違うから滅多に会えない。

だから、なんか物足りなくなっちゃって、見かけては声をかけたり、メールも電話もしたり、気付いたらかなり頻繁に連絡を取っていた。携帯の履歴が一つの名前でほとんど埋まってるのを見て、ようやく自分の気持ちに気付いた私。我ながらほんと鈍いよなー。

しばらく噛んでないと旨味のない出来損ないのスルメみたいな男。でも、この味を知ってしまったらもう止められないの。

きっと自分で思ってるよりももっと好きなんだと思う。



そんな時に映画に誘ってみたら、観たかったものらしく機嫌良くオッケー!

だから今日はものすごい楽しみにしてた。気合いもかなり入ってた。

なのにミキさんにアッサリ負けちゃった。本当に情けない。やっぱり本当の幼なじみには適わないのか……。

アイツの一家は以前市営住宅に住んでいて、ミキさんはその時のお隣さんだったそうだ。ちなみにミキさんも同い年。なんで知ってるかというと、スーパーで買い物中におばさん(アイツのお母さん)とばったり会って話してるところに、偶然ミキさんが通りかかっての面識。同じ市内うちの引っ越しで、学区は違うけど近所だから会うことも多いらしい。


「えっと、初代幼なじみです。はじめまして」

髪がショートで目が大きいのに顔がちっちゃくて、背も150センチぐらいで、にこにこしてて明るくて、動きやすさ重視のスポーティな服装で、私と対極にいるような子だった。

あんまりにも共通点がないから、抵抗なく「こちらこそ~」って握手しちゃった。手も小さくて華奢。

ミキさんを動物に伝えるならリス。縞リスみんな好きだよね、可愛くて。


歩道でぼーっと突っ立ってたら、すれ違う人にチラチラ見られるので、ゆっくり歩き出した。

アイツは来ない。私が後ろにいないことにもまだ気付いてないのかも。

私のことが少しでも大事だったら、振り向くよね。ちゃんといるか確かめるはず。でもアイツは戻って来なかった。きっと頭の中はミキさんでいっぱい。


結局、携帯が鳴ることもなく私も連絡をしなかったので、約束の映画を観ずにあれからまっすぐ帰ってきた。その日の夜も、次の日も、アイツから連絡はない。


そして週明け、人伝にアイツとミキさんが付き合ったことを知った。

「幼なじみと付き合ったって聞いたから、てっきり愛美ちゃんだと思ってたんだけど、全然知らない子いるからびびったわ」

たまたま購買で会ったアイツの友達が聞いてもないのに話してきた。

ひゅっと息が止まって、胸が苦しくて頭がガンガンして、そのあとどうしたのかは覚えてない。たぶん彼は私の態度を変に思っただろうけど、どうしようもない。


0歳から10歳までの初代幼なじみ。

10歳から18歳までの2代目幼なじみ。


適いっこないよ。頑張っても差は縮まらない。アイツは私を好きにならない。

今ここで、2代目を辞めよう。恋心と一緒に辞められればいい。

好きになんなきゃ良かった。

零れる涙は何度拭っても落ちてきて、このまま止まらないかもって頭の片隅で考えてた。

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