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くぐる

なんだあいつらは?

犯人はやって来た客人に対し、訝しげな視線を投げていた。

屋敷の主であるカルメードの書斎に通された2人組み。

頼りない優男と、その優男よりも小柄で華奢な男。

メイドのマディエラとメイド長のバザラの紹介によれば魔導学院の生徒らしい。


そういえば、優男の方は見たことがある。

この間街で見かけたあの男か!

まぁ、とろそうな奴だから問題無いだろう。

気になるのは華奢な男だ。

先ほどから部屋中を眺めているのだが、どうもわたしの方に気づいているように頻繁にこちらを見てくる。


まさか、気付かれたか?

いや。

違う。そんな筈は無い。



約束の日、私はマディエラさんに連れらてやって来た屋敷に思わず目を丸くした。

カルメード・D・エルドーナ。

貿易で王国随一の大富豪に成り上がった希代の大商人。

その私財はレトール王国の国家予算を軽く7年は賄えるとも言われている。

もっとも、驚く私とは違い、セイレンは一言

「無駄が多すぎる。もっとスッキリした屋敷には出来なかったんですか?」

門構えを見るなりそう評したので私とマディエラさんは慌ててしまった。


そして通されたカルメード氏の書斎。

様々な書物や調度品が品良く配置され、私など場違いでは?

少なくとも服装はもっとマシな物を着てくれば良かったと心配してしまった。

「よく来てくれました。魔導学院の優秀な生徒さん達。まぁ、立ち話もなんだし、そのソファーにかけてください」

親切そうな笑顔を浮かべるカルメード氏の言葉に私の緊張は解れ…

「結構です。時間がありませんので立ち話で結構。優越感に浸るのは構いませんが状況を考えてください。」

解れるどころか、凍りつき石のように硬く強ばってしまった。


「お、おいセイレン。さすがに失礼だろ」

小声で抗議する私にセイレンは視線を合わせることもせずに反論した。

「失礼?どこが。この人が噂通りの大物なら私の言葉使いや内容に小物のようにいちいち腹を立てたりしないさ。」

吐き捨てるように断言すると、セイレンはカルメード氏を促した。

「それで。いったい誰を探しているのですか?奥様ですか?いや、それなら夫人の父上であるモルッドット伯爵が騒いでるか。小間使いの誰か?それならわざわざあなたが自らお話しなどしない。となると、娘さんのレネトリウス嬢ですね。確か今年で8歳になるとか。」

まくしたてるセイレンの言葉にカルメード氏の顔面が見る見る蒼くなっていく。

カルメード氏の一人娘、レネトリウス・D・エルドーナ。

その名前が出た瞬間、誰かの息を呑む声が聴こえた。

「なぜ娘がいなくなったと?」

震える声でそう尋ねるカルメード氏にセイレンは肩を竦めて見せた。

「何を聞いていらしたのか?今言った通りです。」

「そ…たったそれだけの推量でか?」

「足りませんか?」

自信に溢れたセイレンの様子に気圧されたように呻いたカルメード氏だったがそれもつかの間、すぐに元の表情に戻った。

「よかろう。君に一任しようじゃないか。」

「光栄です。では早速ですが奥様を呼んで頂けますか?」

こうして、私とセイレンは王国随一の大富豪の御家騒動に関わる事になったのだった。

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