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灰色は俺に似合う  作者: 無原 カイト


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第3章 カフェでの出来事

「さて、オフィスの自分の席に着いた」と自分に言い聞かせ、荷物の整理を始めた。昨日遅くまで作っていたレポート、三つ入りの安いコーヒー、そして自分のペン。ペンは芯を出すときにちょっと楽しい音がする。


周りはいつも通りだったが、仕事に集中しなければならなかった。僕はデータアナリストとして働いている。まあ、トレーダーと会計士、プログラマーの中間みたいな感じだ。正直、契約自体は最初ちょっと怪しかったけど、今のところ問題なく働けている。


まずは昨日手書きで作ったレポートを整理してアップロードする。ノートパソコンがないので、データを紙に印刷し、下書きで詳しく分析してまとめ、完成用のコピーを作る。面倒な作業ではあるが、残業して上乗せの仕事を片付けるよりはましだ。


いつものように後輩たちが同僚と話している。

「今度先輩、昨日の映画よかったね。また一緒に出かけましょう」

「昨日のお酒で少し気分悪い」


僕の興味を引いたのは次の会話だ。

「聞いた?上司が変わるらしいよ」

「そうなんだ。あの年寄りはもううんざり、いつも仕事を要求して、交渉もできないし」

「聞いたところでは昇進して、その席には近くの支店から誰かが来るらしい」

「ええ、知り合いから聞いたんだけど、その女性はグループをまとめられず解任された。でも潜在能力はある、解雇寸前だったらしい」

「絶対、上司を誘惑したんだろうね」

……


「なんだって、なんで上司が、なんで君たちは辞めるんだ!」

思わず叫びそうになり、水を飲みに立ち上がった。


今日一日で不思議なことが重なっていた。朝は転んだし、駅からオフィスまで途中で一緒に歩いた男もいた。そして上司も変わった。さらに地下鉄での事件もあった。


いや、これは偶然に違いない。もっと冷静に、そして目の前のことから逃げずに取り組もう。逃げれば、もっと大きな出来事に巻き込まれるだけだ。


そう思い直し、オフィスに戻り仕事を続けた。


昼休みになり、近くのカフェに行こうと思った。幸い学校の授業時間と昼休みが重ならず、落ち着いて辛くて甘いものを食べに行ける。


カフェに入り、店員のタイコに挨拶した。彼は東京の学生で、身長は普通、青い目が印象的な美男子だ。昼ごはんのたびに見る顔だが、彼はサボりなのかどうかはわからない。


「こんにちは、タイコ」

「こんにちは、ヒナタさん。今日も元気ですね」

「君もだね。仕事と勉強を両立してていつも感心するよ」


タイコの顔が少し変わった。マスクはあるけど、仕事と勉強の話になると悲しそうな表情になるのがわかる。


「いつものでいいですか?それとも何か新しいものを試しますか?」

「いつもので。辛いカレーと温かいミルク、デザートはチョコケーキ」

「苺とピスタチオも人気ですが」

「いや、チョコケーキがいい。苺は嫌いじゃないけど、ケーキに入ってるのはちょっと」

「では、注文お待ちください」


注文を支払い、レシートを受け取り、お気に入りの席へ向かうと、なぜかあの男が座っていた。あの男とは、地下鉄で同じ駅で降りた時にちらっと見た人だ。


「無視せず、適当に相槌を打とう」と思いながら窓際に座った。外の景色はいつも通りだったが、彼の顔が苛立たしい。閉じこもった様子で、足を組み、頭を下げ、コーヒーも自信なさげに持っている。


長い時間コーヒーを飲んでいたので、声をかけることにした。

「すみません、コーヒー冷めてしまったようです」

「ああ…」


無視されるかと思ったが、数分後、彼は自分のコーヒーを見ながら続けた。

「わかっているけど、どうしても集中できない」

「じゃあ、集中してやればいい」

「でも、もし受け入れてもらえなかったら、また一人になったら…」


ちょうどその時、僕のカレーが運ばれてきた。僕は彼を見ながら食べ始めた。彼は明らかにデートに行くつもりだ。いや、彼のバッグを見ると、軽くて学校の先生かもしれない。


しかし彼は続けた。

「すみません、子供はいますか?」


いきなりの質問に、僕はカレーを飲み込むのに苦労した。

「個人的なことですみません。僕は…」

「わかった。子供は大事だ。それぞれ守りたいものがある。それぞれがすべきことをやるべきだ。だから、落ち着いて食事をして、やるべきことをやろう。その後はなるようになる」


彼は抵抗しようとしたが、僕は手を上げて食事を続けた。


そのまま静かに時間が過ぎた。なぜ彼はまだ帰らないのか。わざとゆっくりコーヒーを飲み、時計を見ながら様子をうかがっている。おそらく僕の名札を外していなかったのだろう。


デザートを食べ終え、オフィスに戻るとタイコに「戻る」と伝えた。

驚いたことに、あの男は追いかけてきていた。建物に入っても、彼はまだついてきた。逃げたつもりだったが、甘かった。

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