空色の浮気
秋の文芸展2025
参加作品です
真尋と瑞穂は保育所から高校まで一緒でした。
小学校に入学する時にはお揃いでラベンダー色のランドセルを選びました。
中学校に入学する時にはお揃いのラベンダー模様のキーホルダーを鞄に付けました。
高校に入学する時にはラベンダーの香るお揃いのミサンガを付けました。『素敵な彼氏ができますように』と願掛けをして。
真尋はサッカー部の、瑞穂はテニス部の彼氏ができました。四人で遊びに行った時にはお揃いのラベンダー入りストラップを買いました。
卒業式の前の日、新しい生活に進む記念に二人は薄紫色のマグカップを買いました。
「毎朝このカップを使おうね。離れてもずっと一緒だよ」
瑞穂は真尋にそう約束して旅立ちました。大学の近くで一人暮らしをするために。
「ごめんね、瑞穂」
けれども真尋はそのマグカップを使うことはありませんでした。代わりに部屋には空色のペアカップが並べられています。真尋も一人暮らしを始めましたが、そこには彼氏の姿もよく見られるようになっていました。
瑞穂には、まだそのことを伝えられずにいます。
「ごめんね、瑞穂。私、浮気しちゃった。今は空色が好きなの。彼の好きな色だから」
真尋が瑞穂に伝えられる日は来るのでしょうか……。