増税賛成論
「また増税かよ」と聞くだけで、胃が痛くなるのは日本国民の常である。消費税、所得税、住民税……気づけば財布の中はどんどん軽くなる。それなのに道路はボコボコ、観光地は人だらけ。いったい誰のための増税なんだ、という疑問が湧く。
だが、ここでちょっと視点を変えてみたい。もし増税の矛先を「外国人観光客」に向けたらどうだろう?
●円安で“安すぎる日本”
今の日本は世界的に見ても格安旅行先だ。円安で物価は割安、ホテルや食事も「えっ、こんなに安くていいの?」と驚かれる。おかげで外国人観光客はうなぎ登り。新幹線も京都も富士山も、人でごった返す。
だが地元の人にとっては迷惑千万だ。道は混雑、ごみは増え、静かな町並みは消えつつある。観光地に住む人々は「もう限界だ」と嘆く。それでも国は「観光立国だ!」と旗を振り続ける。ならば、その費用をどう賄うか。
●入国税という選択肢
ここで浮かぶのが「入国税」である。空港や港で外国人に課税し、その収入を観光インフラや環境整備に回す。すでに日本には「出国税」があるのだから、逆の発想で「入国税」もアリではないか。
ブータンでは1日200ドルの観光税を課し、観光客を絞り込みながらも高付加価値な旅行体験を提供している。バリ島やベネチアも観光税を導入済みだ。つまり世界的にはすでに「当たり前の政策」なのだ。
●サラミ増税の知恵
もちろん日本人は「増税」という言葉に敏感だ。だが、ここで財務省お得意の「サラミ増税戦術」が輝く。いきなりドカンと課すのではなく、少しずつ、少しずつ切り分けて導入するのだ。
たとえば最初は「ETA(電子渡航認証)の申請手数料」という名目で300円程度。誰も文句を言わない。次に全国一律の“観光利用料”として1000円。観光地のごみ処理やトイレ整備に使われますよ、と説明する。ここでも反対は少ないだろう。
やがて「混雑期は追加課金」とダイナミックプライシングを導入する。ゴールデンウィークや紅葉シーズンは+1000円、といった具合だ。そして気づけば数年後には3000円、5000円と積み上がっている。これがサラミの切り方である。
●誰も損しない?
「外国人から取るんだからいいじゃないか」という国民の心理。
「円安でまだまだ安いから問題なし」と納得する観光客。
「新しい税収源ができてウハウハ」の財務省。
「観光インフラ整備に回るなら悪くない」と観光地の住民。
こうして、誰も大きく損しない“理想の増税”が完成する。もちろん観光業界は一時的に「客が減る!」と反発するだろうが、実際は数千円の税で旅行を諦める人は少ない。むしろ混雑が和らぎ、質の高い観光客が増えるかもしれない。
●増税に笑える日?
普段なら「また財務省の増税か」と腹が立つ。だが、外国人観光客への入国税なら「まあいいんじゃない?」と多くの国民が頷くだろう。なにせ自分の財布は痛まない。むしろそのお金で道がきれいになり、静けさが戻ってくるのなら歓迎だ。
結局、増税は「誰から取るか」で印象が大きく変わる。もし財務省が本気で国民の支持を得たいなら、このサラミ増税を“外国人向け”にシフトさせればいい。そうすれば「みんなが納得する増税」という、奇跡のような政策になるかもしれない。
●おわりに
観光客は日本を訪れて素晴らしい経験をする。その代わりに少しだけ負担をお願いする。これで観光地も守られ、日本人も笑顔になり、財務省もご機嫌になる。
「サラミ増税」と聞いて眉をひそめていたはずが、気がつけば「これはアリだな」と思ってしまう――そんな未来が、もうすぐやって来るのかもしれない。
今回はあえて「増税賛成論」という挑発的なタイトルをつけてみました。もちろん国民の財布を直撃する増税には反対です。でも、もし負担を外国人観光客にお願いできるのなら話は別。円安で“安すぎる日本”になっている今こそ、観光インフラを守るための資金を確保するチャンスではないでしょうか。
増税と聞くと身構えてしまいますが、誰から取るかで印象はがらりと変わります。国民に痛みがなく、観光地や住民に還元されるなら、それは「喜ばれる増税」になり得るのです。
もちろん実現には業界や外交の調整が必要ですし、サラミ戦術のように少しずつ導入する工夫も求められるでしょう。それでも、こういう「増税のあり方」を考えてみるのは面白いと思います。
今回も「ひとり放送局」からお届けしました。
テーマは気まぐれですが、もし少しでも「なるほど」と感じてもらえたら幸いです。
感想や意見もお待ちしています。次回はまた別の「じゃないか?」を拾ってみます。




