縛
「いたっ!」
想定していない痛みに思わぬ声が出た。
どうやら段差があったようだ、左足の指先がじわじわと熱を帯びる。
こんな段差に引っかかる自分に怒りを覚えつつも、これから起こすことに自然とため息が出た。
後ろに少し戻ってから、またいつものように歩き出す。
(次は右足っと)
調整は完璧だ。先ほどの歩きと変わらないスピードで段差目掛けて歩き出す。
途端に強い衝撃。
今度は右足を思いっきり段差にぶつけることに成功した。
「いててて」
今回は事前に痛みが来ることをわかっていたため大きな声は出なかった。
僕は交互に足をさすりつつも帰路を再び急ぐ。
僕の中には絶対的なルールが存在した。
それは全てを平等にすることだ。
さっきみたいに左足をぶつけたら右足を同じようにぶつけなきゃいけないし、ご飯を食べる時だって右手をある程度使えば次は左手に切り替えて食べないといけない。
なぜそうなったのか、いつからそうなったのかは覚えていない。
ただ、不平等な物事にひたすら気持ち悪さを覚えただけだ。
明らかに僕自身がおかしいのもわかっている、だから周りにもこのことを打ち明けたりしなかった、完全に僕だけのルールだ。
非常に損な生き方をしていると思うが、きっとこれが僕にとっての普通なのだろう。