初めてのダンジョン
「よし!それじゃあ順番に潜るぞ!」
「最奥部にはパーティーの分だけ回収アイテムがある!」
「何かは秘密だが、それを持って帰るのが目標だ!」
各々が得意な武器を取りダンジョンへ潜る
学校にあるダンジョンは入り口が何箇所かに別れておりそれぞれ別の中身になっている
例えばAから入った人とBから入った人は、中で会わないのだ
モンスターも弱いものしか出ないらしい
なので防具は無く普段着で潜るのだ
それぐらい安全だが念の為にと、薬草と包帯を5セットずつ支給している
「よし!次!」
「はい!」
いよいよ私達の番だ、気合い入れていくぞ!
「みんな!いい?」
「いいよ!」「いいぜ!」
中に入るともう真っ暗だ
「私がライトを点けるね」
「ライト!」
ポウッ
ライトの魔術はファイアの応用だ
これは唱えると頭の上辺りに留まり、辺りを照らしてくれる
「きゃっ!」
「うわっ!」
ハリィとカミュが声を上げる
「どうしたの?!」
「あ、ユカちゃんごめん、ちょっと大きなネズミに驚いただけ」
「あーびっくりした!なんだあのデカイネズミは!」
ネズミはこちらを伺っている
「ユカ!私が殴るから援護して!」
「了解!」
逃げられない様に足辺りを狙う
キリキリキリ…ヒュッ!
ズッ!
太ももあたりに刺さった!ネズミはもう逃げられない
「とあっ!」
ボムッ!
ナックルボンバーが炸裂してネズミは吹き飛んだ!
「どうだい!」
「スッゲー!なんだよそれ!どうやるんだ?!」
「まぁまぁ、出たら教えてあげるよ!」
「お、おう!」
「すっごーい!もう倒したの?!」
「やったね!プリス!」
「ああ!ユカ!ありがとな!」
「どういたしまして!」
先へ進むとキラキラしたものが見えてきた
「あ、これって!」
そこにあったのは半分程度埋まった魔法石だ
「黄色ばかりだな」
プリスが言う
「結構あるから持ってかえろ」
私は矢じりに使えそうな尖った魔法石を探して回収した
「黄色とか貧乏くさいな!青色は無いのかよ」
「青色なんてこんな浅い階層にないでしょ」
さらに進むとまたネズミが現れた!
「今度は俺が相手だ!」
「フンッ!」
シュッ!ズサッ!ザシュッ!
カミュは一人で倒してしまった
「はん、楽勝だな」
「ちょっと、強いのは分かったからハリィにも経験積ませてあげなさいよ」
「ユカちゃん、私はそんな…」
「わーったよ!じゃあ次はハリィな!」
なんか聞き分けが良いな
魔法石や魔術の材料を採取しながら進むと今度は先程まで出てきたネズミより大きい生物が現れた
二本足で立つ巨大ネズミだ!
「ハリィ行けるか?」
カミュが問う
「分からない…けどやってみる!」
「おう!」
なかなか良いコンビだ
「はぁっ!」
ザシュッ!
「たぁっ!」
ザシュッ!
良いペースで攻めている
ネズミの反撃!
「ギィッ!」
鋭い爪を振り下ろす!
ギギッ!
「ハリィは剣で受け流し
「たぁっ!」
ザンッ!
致命傷を与えたのかネズミは動かなくなった
「ふう」
「ハリィすごい!」
「やったな!」
「さすがハリィ、俺が見込んだ剣士だ」
「みんなありがと、でも喜ぶのは早いよ」
そう言うとネズミの方を向く
「ギィー…」
まだ生きていた
「とどめを…」
ハリィが言いかけた途端
「ギィー!」
まずい!ハリィはまだ構えていない!
シュッ!
「きゃあっ!」
避けようとしたが腕にかすってしまった
「いたた…」
それを見たカミュが
「おりゃあっ!」
ザシュッ!
喉元に槍を突き立てとどめを刺した
私は治療の準備に取り掛かる
薬草をすり潰し幹部に塗り包帯を巻く
「いたた…」
「ごめんね、ちょっと我慢してね」
「癒しの光よ、我に宿りて傷を包め」
「ヒール…」
ポワッ患部が光り傷が癒えていく
「ごめんね、まだ全快には程遠いけどバイキンも大丈夫だと思う」
「ユカちゃんありがとう!ヒールまで使えるんだね!」
「凄いなユカ」
「お前なかなか見どころがあるな」
「ママがね、冒険するなら回復魔法は必須だからってね」
そうしてパーティーは最奥部まで進んだ
宝箱がある
「これに先生が言ってた回収アイテムが入ってるのこな?」
恐る恐る手をのばす
カチャリ
鍵はかかっていないようだ
ギギ…
蝶番が音を立てる
「これは…旗?」
「なんだ?これ」
みんな不思議そうな声を上げる
「一応…持って帰る?」
「そうだね、有用なアイテムじゃないし、これが回収アイテムっぽいよね」
確かに他に考えられない
「おい、もう行こうぜ」
カミュかま退屈そうに言う
ここまで結構な数のネズミを倒してきたからか、もう飽きてきたみたいだ
一応、アイテムを取った時のポーズをとってみる
「たららら、たららら、たらららら〜♪」
旗を頭上に掲げた途端辺りが白くなった
気付けば入り口にいる
「おう、戻ったか!では旗を渡してもらおう!」
言われたとおり旗を渡す
「それじゃ列に戻れ!」
言われたとおり列に戻る
「?????」
全員混乱している
「お、おいユカ、お前何したんだ??」
「そうだ、ユカ何の魔術を使ったんだ?」
「ユカちゃんあんな事もできるなんて凄い!」
私も何がなんだか…
「ちよ、ちょっとまって!私何もしてないよ!」
「え?だって旗を掲げたら入り口に戻って来ただろ?」
「あれは…宝箱からアイテムを取ったお約束のポーズだし…」
「なんだよそれ…」
「ユカちゃんじゃないの?」
「絶対私じゃないよ!」
「もしかしたら、旗を掲げるとリコールの魔法が発動する様になってたかも…」
「え、それ分からなかったら歩いて戻るのか…」
「多分そうかも…」
「魔術師は帰りのぶんまで魔力が持たないかもね…」
「くっそう!そうと分かってたらもっとナックルボンバーを使ってたのに!」
「あはは…」
なにはともあれ、ダンジョンはクリアしたみたいだ
これは試験でも何でもなく、ただの授業の一環でダンジョンに潜っただけだ
しかし、かなり充実した内容だった
各々が何が足りないのかを確認しつつ授業は終わった