さあ狩の時間だ
茂みに身を潜め様子を伺う
この行為で潜伏スキルも少しずつ上がるのだ
ガサッ
「ん?なにか来る…」
ガサガサ
小鹿だ
弓を構えツルを貼る
キリキリキリ…
狙いを定め…撃つ!
ヒュッ!
低めの弾道で矢が走る!
ズッ!
胴体に命中した!
すかさず走りより弓で首を切る!
ザスッ!
よし!理想通りの動きができたぞ!
かろうじて生きている小鹿に優しく声をかける
「ごめんね…」
「パラライズ…」
バチイッ!
朦朧とした意識の中でニンゲンのメスが見える
なにか鳴いているようだがよく分からない
「さて、血抜きをするか」
「首の動脈を切って逆さに吊るすんだっけ?」
まだ心臓が動いているうちにやれば効率よく血抜きができる
それはパパから教わっている
後ろ足を縛りロープを枝にかけ引っ張る
「うぅ~んん…!」
しかしいくら小鹿といっても7歳児にはとても重くて持ち上がらない
「こういう時はどうするんだっけな」
ガサガサッ
「はっ!」
後ろの茂みで音がする
茂みに視界が合っているが実は全体像は見えていた
クマだ!
目を離さないように後ずさる
クマがジリジリ近寄ってくる
弓を構えてはみたがとても矢が刺さるとは思えない
でも殺らなければ殺られる!
パラライズは大型動物には効きが悪い
あとは…サンダーかファイアだけど…
ヒュンッ!
一発目を射る
ザッ!
肩付近に刺さるが、浅い
二発目
ヒュン!
今度は胸辺りに刺さるが、浅い
クソッ!自分の弱さが頭に来る!
ジリジリとよって来る足に合わせ同じだけ下がる
三発目
ヒュン!
バシッ!
今度は腕に当たるも弾かれてしまった
激昂したクマが走ってくる
「グオオオオ!!」
様子を伺いながら走って逃げる!
「うわあああ!!!」
狩られる!
そう頭によぎったその時
あっそういえば!パパが魔術の練習にどうだ?とくれた魔法石(黄)がいくつかバッグに入っている
─魔法石─
黄、青、赤の3色があり、魔力を乗せる事ができる石である
黄:山に入るとそこらへんに落ちているほどとても手に入りやすく、割れやすいので安く流通している
青:割れにくく、ダンジョンの深い階層などで手に入る、なかなか手に入らないので高価
赤:滅多に見られない、ドラゴンが守ってる財宝の中にあると言われている、割れやすいが乗せた魔力が3倍ほどの効果が現れる、ものすごく高価
一つ取り出し
「ファイア」
ポッ…シュッ!
「よし!」
もう一つ取り出し
「サンダー」
パリッ…シュッ!
「これでも喰らえ!」
2つ同時に顔めがけて投げた!
当たった途端
ボッ!ボォォォォ!
バリッ!バリバリバリッ!
火と雷が溢れ出す!
「グオオオオ!」
クマはびっくりして逃げていった!
「へへっ!流石に火と雷同時に喰らったらびっくりするでしょ!」
しかし次は無いかもしれない
そう思いつつ小鹿に目をやる
「これも食物連鎖なのかな…」
自分も強者の食料の一つだと実感した
気がつけば全身汗びっしょりで、鼓動も早い
「はぁっ!はあ!はあ!」
呼吸を整え落ち着く
小鹿はもう絶命している
血抜きも思ったようにいかなかったが
仕方ないのでこのまま持って帰る事にした
薪の横にナイフで溝を掘りロープで編んでいく
小型の台車が完成した
それに小鹿を乗せて引きずって帰路につく…
今日は私が狩ってきた鹿のステーキだ
血抜きが不十分だったので少し臭い
母も血抜きをしたが時間が足りなかったのだ
「今日は豪華だなぁ!」
「私が狩ってきたんだよ!」
「そうか!それはエライ!」
「この辺りなら熊も居ないし狩りも楽だろう」
「えっ?そうなの?!」
「ん?生態系が違うからな、誰かが追って連れてこない限り居ないはずだぞ」
「じつは…」
「まさか、熊に遭遇したのか?!」
「うん…」
「あら、その熊はどうしたの?」
「なんとか魔法で追っ払ったよ、死ぬかと思った」
「そうか、おかしいな、さっきも言ったがここらは熊は出ない筈なんだ」
「ちょっと後で警備団長に相談してくる」
「どんな魔法を使ったの?」
「パパにもらった魔法石にファイアとサンダーを乗せて投げたの!顔にあたってびっくりして逃げていったよ!」
「そりゃ凄い!」
「それじゃパパが警備団長さんのところへ行っている間にファイアボールの練習をしましょうね」
「分かってると思うけど初級魔法からは詠唱も必要になってくるからそれも覚えなくちゃね」
「うん!」
ファイア、サンダー、パラライズなどは超初級魔法だ
言葉に魔力を乗せるだけで詠唱無しで発動するからだ
食事も終わり食器を片付ける
「それじゃ行ってくる!」
「いってらっしゃい!」
「いってらっしゃーい!」
「それじゃ練習をしましょうね」