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それでも君に認めさせたい  作者: みおゆ
第五章三節:それでも憂う『御大地守』
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卒業式

 卒業式が、いよいよ始まる。


 卒業式の開始を、僕は壇上から離れた席から見守っていた。


 一方で、隣に座っている瑠璃(るり)は、なぜだかすごく緊張していた。


「……どうしたんだ、そんな緊張して?」


 小声で聞くと、瑠璃は緊張した面持ちのまま僕を見た。


「兄さん、送辞の役をやるんです。上手くいくかどうかと考えてしまったら、なんだかわたしまで緊張してしまって……」

「大丈夫だろう、あのお兄さんなら」

「……で、ですかね。そうですよね、兄さんなら、大丈夫ですよね」


 瑠璃は少し落ち着いたのか、身体の緊張が緩んだかのように見えた。


「……そういえば瑠璃、またコンタクトに戻したんだな。それに今日は、一段ときれいになってる」


 瑠璃は眼鏡を外していて、髪にはかわいらしい髪飾りまでつけており、いつもよりも華やかさがあった。


 瑠璃は顔を赤くして、僕を睨みつけてきた。


「そ……そんな気軽にきれいだなんてやめてください。卒業式ですから、ちょっと気分を変えてみただけです」


 瑠璃は言って、少し間を空けてからこう言う。


「まあでも……似合ってると言うのでしたら、二年生からはこれでいきましょうかね……」


「ああ、似合ってる」と返すと、瑠璃はうれしそうにはにかんだ。


「ありがとうございます、(まもる)さん」


 そのとき、バタンと重い扉の開く音が。

 どうやら、三年生の入場らしい。


 僕らは拍手で卒業生を迎え入れた。


 ぞろぞろと行進する卒業生の列から、円樹(つぶらき)先輩を見つけるのは簡単だった。


 やはり、彼女には目を惹かれる。

 僕にとって、彼女だけは誰よりも輝いて見えた。


 ……まあ、学園一の美少女と言われるくらいだ。もしかすると、ほかの人にとってもそうかもれしないけれど。


 でも、僕にとってはそれだけじゃない。

 僕と彼女の間には、誰とも違う、特別な繋がりがあるのだから。


 円樹先輩は姿勢良く、真っ直ぐと前を向いて、歩いていた。


 円樹先輩のほうは、僕に気づく様子もない。それもしかたないだろう。あの列と僕のいる席は、あまりにも遠すぎるのだから。



 卒業式は順調に進み、瑠璃のお兄さんの送辞も何事もなく無事に終わった。


 瑠璃のお兄さんが登壇したとき、一瞬女子たちの沸き立つ声が聞こえたような気がしたが……顔もスタイルもいいし、きっと人気なんだろうな。


 一方瑠璃は、ただ送辞が無事に終わったことに、胸を撫で下ろしていた。


 次は答辞……か。


 そう思っていると、僕はまた目が釘付けになった。


 僕だけじゃない。その場の空気でわかる――答辞のために登壇した彼女――円樹先輩は、一斉にみなの視線を集めていた。


「例年よりも早く春の蕾は開き、桜咲き誇る今日、わたしたちは卒業の日を迎えました――」


 あの、輝く瞳を見れるのも……きっと、今日で最後だ。


 僕は一言一句洩らすことなく、じっと彼女の言葉に耳を傾けていた。


「――……最後の文化祭も、どの催し物を素晴らしく、思い出に残るものとなりました。最後のキャンプファイヤーは、特に印象的で――」


 キャンプファイヤー……か。

 僕は横目で瑠璃を見た。瑠璃も同じタイミングでこちらを見たのか、ちょうど目が合ってしまい、僕らは慌てて目を逸らす。


「――……高校生活は、在校生のみなさまにとても支えられ、かけがえのない経験をさせていただきました。この経験を胸に、わたしたちはそれぞれ、新たな道を歩んでいきたいと思います――」


 円樹先輩は堂々と胸を張り、こうして、答辞をやり切ったのだった。


「――以上をもちまして、答辞といたします。……本当に、みなさま……ありがとうございました!」


 答辞をする円樹先輩は一度だって、最後まで誰とも目を合わせることは、なかった。

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