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それでも君に認めさせたい  作者: みおゆ
第五章三節:それでも憂う『御大地守』
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振り返る一年

 この学園に入学してから、三月を迎えるまで、本当にあっという間だった。


 編入が決まったとき、変な時期に転校することになってめんどうだなという気持ちしかなかったわけだけれど、まさかそこで、ずっと想っていた『恋』の相手に出会うなんて、夢にも思っていなかった。


 ――出会わなければよかった。


 僕は何度も、そう思った。


 でも、今なら……少しだけ、出会えてよかったと、思える。


「今日は、確か卒業式なんだよな」


 家を出ようとしたとき、珍しく父さんから声を掛けられた。


 父さんが学校行事を覚えてるなんて、今日は雨でも降るんじゃないか?


(まどか)ちゃん、卒業だよな」


 ――卒業。


 あまりにも早い別れだ。

 まだ僕らは、出会って一年しか経っていないのに。


(むしろ、そのほうがいいのかもしれないけれど……)


 長くいればいるほど、きっと僕らは後戻りできなくなっていたかもしれないわけだし。


「もし卒業祝いするならさ、全然家呼んで構わないからな。父さん、いろいろ買ってくるし」

「……ああ、ありがとう。そのときは」


 僕は「じゃあ、いってきます」と言って、家を出ようとすると、また父さんから呼び止められた。


「……何?」

「ああ、いや……」


 父さんは頬を掻いて、なぜか目を泳がせていた。


「……父さん?」

「ああ、いや、その……。本当に、お前たち二人には迷惑かけたなって」

「……迷惑なんて」

「親の都合で、勝手に姉弟を引き離すようなことして……そんなことしなければ、きっと……」


 ……。


「……迷惑じゃ……ない」


 僕は改めてそう話し、続ける。


「……いや、ごめん。やっぱり迷惑だったかもしれないけれど……でも、僕は後悔しているとか、そういう気持ちはもうないから」


 おかげで、円樹(つぶらき)先輩と過ごせた。瑠璃(るり)という存在を知れた。葛城(かつらぎ)先輩や、瑠璃のお兄さんにも出会えた。


 僕が『恋』をしなければ、たぶん今ごろはきっと、今までどおり、ただ一人で本を読んで過ごしていたことだろうし。


「お姉ちゃんと会えて、よかったよ」


 僕はそう言い残し、家を出た。


(卒業式といえば。これが終わったら……いよいよ、僕らの『恋』は――)


 歩きながら、ふと僕は思う。


 卒業式が終わったら、屋上で。そんな円樹先輩との約束は、もちろん忘れていない。


 僕はこの日のために、心をひとつに決めたのだから。


 円樹先輩は……今、どんな気持ちでいるのだろうか。

 僕と、同じ想いなのだろうか。


 ……。

 ああ、本当に早い一年間だった。


 本音を吐いてもいいのなら、僕は――。


 …………。


(……ちょっと急ぐか)


 僕は、歩くスピードを上げていく。

 別に、時間に余裕はあるのだけれど。

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