愛す証
ショッピングセンターを出た先で、わたしは御大地くんと撮ったプリクラの写真を見ていました。
誰が見ても、不慣れな二人が無理して撮っているような姿は滑稽と見えるでしょうが、それでもわたしは、この写真が何よりも大切なものになりました。
「なんだか、目が大きすぎませんか? それに、なぜか変に足が長くなっているような……」
「まあ、そういうものらしいからな」
「そうなんですか……」
……やっぱり、何度見ても不格好です。でも、すごくうれしい。
「……ふふ」
思わず笑いを零すと、御大地くんは、
「ずっとそれ見てるな」
と、優しげに言ってきました。
「ええ。もちろんです」
わたしは言って、御大地くんを見つめました。
「――わたし、御大地くんのことが好きなんですから」
御大地くんはほんの少し目を見開いて――それから、そっと目を細めました。
「……そろそろ、帰るか」
「……そうですね。だいぶ遅いですし」
きっと今日は、家に帰ったらまず、兄さんのお説教ですね。
でも、そんなこと些細なことです。
わたしは御大地くんと、少しでも長くいれたら、それでいい。
ゆっくりと、わたしたちは道を進んでいきます。
「……御大地くん」
「なんだ?」
「そろそろ、卒業式ですね」
「……だな」
――卒業式を迎えたら、学園から円樹先輩の姿はなくなってしまう。
円樹先輩とは、短い間柄でしたが……少し寂しく思います。
いくら彼女が恋敵といえど、彼女の魅力は、それ以上に素晴らしいものですから。
「……寂しくなりますね」
同時に、わたしには押し込めていた不安もありました。
「……」
……今しか、きっと聞けない。
わたしは一度立ち止まって、彼の背中に問いかけました。
「……あの。円樹先輩が卒業してからも、わたしといっしょにいてくれますか?」
なんとなく、不安だった。
御大地くんがわたしと付き合う理由は、円樹先輩への――姉への想いを断ち切るためだから。
学園から円樹先輩の存在がなくなってしまったら、わたしとは縁を切ってしまうんじゃないか……そんな不安があったのです。
御大地くんは振り向いて、目を丸くしていましたが、やがて口を開きます。
「……すごく、身勝手な答えだけれど」
瞬間、身体が強ばる。
……わたしは、言葉の続きを待ちます。
「――瑠璃がよければ、これからもそばにいてほしい」
……。
……まったく、御大地くんったら。
「……はい。もちろんです」
わたしたちは、再び歩きはじめました。
そして、ついに御大地くんとの過ごせる時間の終わりが見えてしまって。
「では、今日はありがとうございました。わたし、すごく楽しかったです」
「……ああ、僕も。本当に、ここで大丈夫か」
「ええ。家、すぐですから。お送りいただかなくても大丈夫です」
そんな会話を経て、わたしたちはそれぞれの道を帰りはじめます。
ふと立ち止まって、振り返るわたし。
帰り道を行く御大地くんの背は、少しづつ遠くなっていきます。
「……」
気づけば、一歩踏み出していました。
「――あの!」
わたしが声を掛けると、御大地くんはすぐに振り向いてくれました。
早まる鼓動を抑えて、わたしは最後に、
「また明日会いましょう……守さん!」
そう叫んで、颯爽とその場を去りました。
――ほ、本当は『守くん』と言う予定でしたのに……!
寸前で、なぜか『さん』付けになってしまいました……。
わたしったら、最後の最後で締まりません……。
(でも、まあ……)
『守さん』も、悪くない響きかもしれませんね。




