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それでも君に認めさせたい  作者: みおゆ
第五章一節:なりきれない『円樹円』
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お人好しな二人

 最近、(まもる)の元気がないみたい。


 たまに一年生の教室を覗きに行くんだけれど、守の横顔はどこか活気がなくて――まあ、基本的に無表情なことが多い守なんだけれど――落ち込んでいるってことが感じ取れるの。


 やっぱり、瑠璃(るり)ちゃんのことで……かな。


 アタシがあの日、守の家にお泊まりした日、不用意に守に声を掛けてしまったから。


 電話越しにアタシの声を聞いた瑠璃ちゃんはきっと、要らぬ誤解をして守とケンカしてしまったに決まってる。


 ……二人とも、最近あんまり話してないみたいだし。


「……か。(まどか)!」


 不意に名前を呼ばれ、アタシはハッと我に返った。


 目の前には、机に頬杖をつきアタシを睨みつけていた優子(ゆうこ)が。


「……アハハ。ごめん、優子、なんの話してたっけ?」

「別に、特にこれといった話なんてしてないわよ。……円ったらどうしたの、そんなボーッとしちゃって」


 ……優子は相変わらず、なんでもおみとおしだなぁ。


 隠したって意味はない。アタシは正直に、今悩んでいることを話すことにした。


「……最近ね、守、元気ないみたいなの。まあ、アタシのせい、なんだけれどね」


「……円のせい?」と首を傾げる優子に、アタシは続ける。


「うん。アタシが守に近づきすぎたせいでね、瑠璃ちゃんと守が、たぶん……ケンカしちゃってて。それで、守ね、元気がないの」


 優子は眉を寄せて難しい顔をしていたけれど、やがてこう返す。


「それで……何を円が悩む必要があるの?」


 優子の返事に、アタシは思わず「……へっ?」と間の抜けた声を出してしまった。


「円は、あの転校生のことが好きなんでしょ? 転校生と瑠璃との距離が開いてるなんて、まさに絶好のチャンスじゃない」

「絶好の……チャンス……?」

「そうよ。今の隙に転校生を奪っちゃえば、転校生はもう、円のモノじゃない!」


 ――う、奪う!?


「そっ、そんなのダメだよ!」

「……なんで?」

「なんでって……だってほら、守と瑠璃ちゃんは付き合ってて……」

「でも、その関係は今、危機的な状況なのよ。このチャンスを逃す手はないと思うわ。今、再び円が転校生を手にする時なのよ!」


 そう言って、ガッツポーズを掲げる優子。


「それに、円、前に言ってたじゃない。『守もまだアタシのこと好きだと思うんだよね』……って。だったら、なおさらよ! さっさと告白して、転校生を自分のモノにするのよ!」


 鬼気迫る表情で迫る優子に、アタシは思わず後ずさる。


 優子の言ってることは、わからなくもない。……というか、ひとつの正しい行動なのかもしれない。


 少女マンガでも、こういう隙を狙って略奪するお話とかあったし……。


 でも、それとアタシとでは事情がまた違う。


 それに、そういうのって無理矢理相手を丸め込んでいるような気がして、あんまりよくない気がする……。


 何よりも、アタシの気持ちは――守自身に、選んでもらうことだから。


「優子ってさ……いわゆる『肉食』って感じだよね」


 アタシがひと言返すと、優子はムッとした顔をした。


「……本当に肉食だったら、わたしはねぇ……」


 優子は小さく何かを言いかけていたけれど、そのあとすぐにこう話す。


「逆に円はお人好しすぎるのよ。もっと自分本位に行動したらいいのに」


 アタシは内心、優子だってお人好しな気がするけれどなって思ったけれど、口に出すのはやめておいた。

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