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それでも君に認めさせたい  作者: みおゆ
第四章二節:覚悟問われる『北千種瑠璃』
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めんどうなわたし

「すみません。腹が痛くて遅れました」


 結局、御大地(みおおじ)くんは一時限目の授業の途中で現れました。

 腹痛を言い訳にしていたけど……絶対に、駅でわたしのことをずっと待っていたのだと思います。


「そういうことなら、事前に連絡するように」と先生に注意された御大地くんは、ただ静かに頭を下げて、自分の席へ――わたしの後ろの席へと座りました。


 ぞわりと冷たい冷気を吹きつけられたような感覚が、背中を這う。


 遅れてきた御大地くんにすぐ話しかけることはできなくて、授業が終わるまで、わたしはただ罪悪感に押し潰されそうになりながら、この時間を耐えるしかありませんでした。


 ようやく迎えた授業の合間の休憩時間。

 与えられたたった10分間の中で、なんとか御大地くんに謝らないと……と考えていると、ふいに頭上に影が落ちるのを感じました。


 ゆっくりと顔を上げるわたし。


 そこには、御大地くんがわたしのことを無表情で見下ろしていました。


「み……御大地、くん……」


 謝らないと。メッセージに気づけなくてごめんなさいって。


 わたしは意を決して、謝罪を口にしようとしました。


「あの、わたし……その、ごめ――」

「――ごめん、瑠璃(るり)。僕が悪かった」


 謝罪を先に追い越されて、空いた口が塞がりません。


「あのときの電話のせいで……きっと瑠璃、この土日すごく悩ませてしまったかもと思って……」

「…………」

「でもあれは、その……突然だったんだ。事前に知っていたら、僕は瑠璃に伝えていた」


 ……そうでした。こちらの問題もあるんでした。


「……円樹(つぶらき)先輩とのお泊まりは、それはそれは楽しかったですか」

「……瑠璃。僕は別に円樹先輩と、何かしたわけじゃないさ」

()()()()()()()()()()

「……いや、その……。でも、本当に何もない。僕らはただ、改めて姉弟として過ごしていただけさ。父さんと三人で、家族として過ごしたんだ」

「……なら、もう円樹先輩への『(オモイ)』は消えました?」

「……それは、まだ……よくわからない」

「ここは、ハッキリと答えてほしかったです」


 御大地くんから目を逸らし、窓の外へと視線を移しました。

 ガラスに反射してうっすらと映るわたしの顔は、ひどく不貞腐れていました。


「……わたしも、今朝は申し訳ありませんでした。何せ、スマホにまったく目を通していませんでしたから」

「……別に、僕が勝手にしたことだ。瑠璃が謝ることじゃない」

「……謝らせても、くれないんですか」

「……っ。そ、そういうわけじゃ……」

「……ごめんなさい、御大地くん」


 目を背けたまま、わたしは告げます。


「……わたし、今日はひどくめんどうなことを言ってしまいそうだから、もう話しかけるのはやめてください」


 彼の気配が静かに遠のいたのがわかった。


 ……自分で言ったくせに、なぜここまで悲しく、寂しく思うのでしょう。


「……めんどくさい」


 その呟きはきっと誰にも聞かれずに、ただ空気に溶けていきました。

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