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それでも君に認めさせたい  作者: みおゆ
第四章二節:覚悟問われる『北千種瑠璃』
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気づけなかったメッセージ

 ――学校に行くのが憂鬱だ。


 あんなに彼と会うのが楽しみだったのに、今は正反対の気持ちで胸がいっぱいです。


 こういうとき、同じクラスだったことを恨めしく思います。

 せめて違うクラスだったら、彼のことを目で追わずに済むのに。


 まあ、ワガママ言っていられません。


(今日はもう……眼鏡でいっか)


 鏡を見つめ、ため息をひとつ。

 その後も、わたしは悩みながらも、朝の支度も終わらせて、いざ玄関の扉に手を掛けました。


瑠璃(るり)はまた、御大地(みおおじ)の奴と登校するのか」


 そのとき、ちょうど背後から兄さんに声を掛けられました。


 振り向き、兄さんへ視線を向けました。

 兄さんはひどくわたしを心配しているようでした。物憂げな視線が、必死にわたしの胸に隠した悩みを必死に探しているようにさえ思えました。


「……なあ、瑠璃。もしや瑠璃は、御大地のことで悩んでいるのか?」

「……なぜ?」

「瑠璃が今こんなに悩むとしたら……やはり、御大地のことだろうと思って」

「…………」


 兄さんは、本当にわたしのことをよく見てくれています。

 それがとてもうれしくあり、心強くもあり――だけど、鬱陶しいと思う。


 いえ、ようやく鬱陶しく思えてきた……でしょうか。


「……気にしないで。わたしは平気だから。じゃあ、先にいってきます、兄さん」


 わたしは笑顔を取り繕って、家を出ました。


 ……一人。いつもの道を歩きながら、自分の意思とは関係なく、グルグルと思考が巡り出します。


 ――それまでのわたしは、兄妹仲の深さについて、何も考えず生きてきました。


 御大地くんと円樹(つぶらき)先輩に出会わなければ、きっとわたしはそのことについて考えることはなかったでしょう。


 あの二人の想いの方向を客観視したからこそ、自分の立ち位置に答えを決められたわけですから。


 そう考えたら……わたしはあの二人に出会えたことに、感謝しなくてはなりませんね。


 と言いつつも、現実問題、現在(いま)彼らのおかげでわたしの気分は最悪なんですけど。


 ――物事って、上手くいきませんね。



 悩みながら歩いていると、気づけばもう学校に辿りついてしまっていました。


 着くのが憂鬱だと思えば思うほど、辿り着くのが早く感じます。


 しかたありません。ここは意を決して、教室に乗り込むのみです。


(……御大地くん、まずわたしに、なんて言ってくるんだろう)


 何事もなく、ただ朝の挨拶をするだけ?

 それとも、顔を合わせてから円樹先輩といた言い訳を話してくるとか?

 いや、それでもなく……円樹先輩と付き合うことに決めたから、別れ話を振ってくる……とか。


(……たまらなく、教室に入るのが嫌になってきました……)


 教室の前まで来て、わたしの足が竦みます。

 ああ、このまま入らずに、今日は体調が悪いとでっち上げて、欠席してしまおうかしら……と、この場から逃げることを考えてしまったとき、後ろから肩を叩かれました。


「おはよ、北千種(きたちぐさ)さん。今日は一人なんだ?」


 話しかけてきたのは、同じクラスメイトの学級委員長でした。


「ええ、まあ……」

「ふーん。御大地の奴、体調悪くて休みとか?」

「……え」


 委員長がそう話すということは……まだ、御大地くんは登校して来ていない?


「えと、その……」

「聞いてないの? ……なに、ケンカとか……?」


 眉を下げ尋ねてくる委員長に、わたしは慌てて「そんなんじゃありませんよ! ただ、わたしたちまだそこまで深くやり取りしていないというか……!」と言い訳しました。苦しい言い訳かもしれませんが、なんとか今はこれで納得していただくしかありません。


 委員長はすんなりと聞き入れてくれたようで、「なんだ、そっか!」と言って、そのまま自分の席へと戻っていきました。


(ひとまずこれでよし……あんまり深く詮索されては、めんどうですから)


 わたしも自分の席へとつき、荷物を置いてから後ろの席へと改めて目を向けました。やはりそこには、御大地くんが来ている様子はありません。


 わたしは不安になり、スマホを開きました。今はあまり話しかけるのが気まずいという思いもありますが、御大地くんの安否確認のほうが優先です。


 見れば、メッセージアプリには一件、通知が入っていました。


 兄さんかな……と思いつつ中を見ると、それは御大地くんからでした。


「……っ!」


 息を飲み、彼からのメッセージを凝視するわたし。


『明日の朝、いつもの駅で待ってます』


 御大地くんからの一文は、深夜に入っていました。

 もうすでにわたしは眠っている時間で――そういえば、今日スマホを見たのも今が初めてです。


(もしかして……)


 御大地くん、今も駅でわたしのこと待っていたり……?


 早く迎えに行かなきゃ、と席を立つと同時に、無慈悲に始業を告げるベルが鳴りました。


 教室には担任の先生が現れ、わたしは渋々席に着きました。


(……御大地くん)


 わたしは彼のいない席を、申し訳ない気持ちで見つめることしかできませんでした。

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