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それでも君に認めさせたい  作者: みおゆ
第四章二節:覚悟問われる『北千種瑠璃』
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兄妹らしくあるために

 次の日、目を覚まして、わたしはスマホを開いてみましたが、そこに誰からのメッセージもありませんでした。


 深くため息を洩らすわたし。どこかで、御大地(みおおじ)くんから何かしらの言い訳を言われるのを、期待していたからかもしれません。


 でも、彼は何も言ってこなかった。


 彼の家で過ごした二人は、何か上手くいくことがあったのでしょうか。だからもう、わたしのことはどうでもよくなったのかもしれません。


 所詮、その程度の存在、だったわけです。


(こんなにも憂鬱になる日曜日なんて、初めて)


 晴れているのが憎らしい。どうせなら、土砂降りにでもなってくれたらよかったのに。


 わたしったら、天気にも見捨てられてしまったのでしょうか。


 そんな自虐的なことを思っていると、コンコンと扉をノックする音が。


瑠璃(るり)。入っていいか?」


 ――兄さんだ。


 わたしは扉を開けると、そこにはやはり兄さんの姿がありました。

 兄さんはわたしを見るなり、目を丸くして言います。


「ずいぶんと今日は髪がボサボサだな。それに……目も腫れてる」


 兄さんの硬い親指が、わたしの下瞼をなぞりました。


 何かまた事情を探ってくるのか……と内心ため息をついたわたしですが、そんな予想とは裏腹に、兄さんは優しい微笑みを浮かべました。


「おいで。俺がきれいに直してやる」

「…………」


 もう兄さんの世話にならないと、宣言したばかりなのに――わたしは小さく、頷いてしまっていました。


 髪をブローしてもらっている間、兄さんは何か話しかけてくることは一切ありませんでした。


 兄というよりも、むしろまるで母親のように、ただただ優しく櫛で髪の毛を梳いて、きれいに整えてくれました。


 わたしにとって、当たり前だった兄妹としての関係。

 親子のようなやり取りはとても居心地がよくて、何も疑問に思わず、今まで、ただそれを享受してきました。


 でも、本当はいけないこと、なのでしょう。


 ……いえ、ここまでのことなら、まだ許容範囲、でしょうか。でも、()()()()()()()()()()()()()()、その先は?


 そう考えた刹那、作業を終えた兄さんは後ろからわたしを抱き締めました。


 それは熱く……堅く。


 それに、嫌悪感を覚えることがくることはありませんでした。

 それは、今だってそう。


 わたしたちは少しずつ……兄妹の本来あるべき道を踏み外してきたんですから。


 皮膚から感じる体温以上に、わたしたちは深く知り過ぎてしまった。


「……瑠璃。昨夜何かあったのか?」

「……」


 押し黙るわたし。


 答えられない――いえ、ここで答えてしまったら、いけない気がするのです。


 それは、わたしと御大地くんの問題だから。


 御大地くんだって、自身の姉との関係を守るために、自分の気持ちを押し殺してるんだから、わたしだって、兄さんに甘えてばかりではいけないはずです。


(……でも、そうだ。御大地くんは、昨日円樹先輩と……)


 信じられない、信じたくない。


 でも、でも……。


「……言いづらいことなら、今日はいいさ」


 わたしの様子を見てなのか、兄さんはそう話した。


 兄さんはわたしから身体を離すと、目の前の鏡に映るわたしを見つめて、こう話します。


「せっかく晴れているから、今日はどこかへ出かけようか」


 ……。

 ……お出かけくらいなら、兄妹としても不自然じゃない、ですよね。


「……うん。何か甘いもの、食べに行きたいかな」


 わたしが言うと、兄さんはとてもうれしそうに笑った。

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