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それでも君に認めさせたい  作者: みおゆ
第四章一節:揺らぎ消えゆく『御大地守』
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姉弟になっていく(2)

 リビングのソファにて、僕と円樹(つぶらき)先輩――いや、()()()()()はくつろぎながら、父さんの帰りを待っていた。


「……父さん、今日は出前でも取ってみんなで食べようって。好きなの頼んでていいらしいから、僕らで先に頼んでいましょうか」

「えー。アタシ、全然料理作るのに」

「せっかく来てくれたお客さんですから。のんびりしてて」

「……お客さんっていうか、一応、家族なんだけどな……でも、好きなの頼んでいいっていうなら、思いっきり選んじゃお」


 僕はタブレットを持ってきて、出前アプリを立ち上げた。支払い先はすでに父さんのカードが登録されているので、特に気にせず好きな食事を頼むことができる――なんていうと、父さん、たちまち冷や汗を流すだろうな。


 二人で好きなメニューを選びながら、ふと僕は気になったことを持ちかけてみた。


「つぶ……いえ、お姉ちゃんは、緊張とか、してないの?」

「……ん? してるよ、めちゃくちゃしてる。だって初めて会うんだもん、お父さんに。……まあ、小さいころはいっしょに過ごしてるはずなんだけどさ、もう覚えてないし」

「そっか」


 徐々に口調にも慣れつつ、続けてこう聞く。


「なんで急に、父さんに会おうって思ったの?」

「……」

「その……僕だったら、親に……母さんに会いたいとは、正直思ってない。僕はただ……」


 ただ、円樹円(つぶらき まどか)のことが好きで、ずっといっしょにいたいと思っているだけだ。それは、今も昔も変わらない。


 正直、今は変わらなくてはならないのだけれど。


「アタシ、(まもる)のことが……好きだから」


 突然そう言われ、顔が熱くなる僕。


「守とは一度、ちゃんとした関係になりたいと思ったの」

「『ちゃんとした』……?」

「そうすれば守も、もう迷わずに済むかなって」


 円樹先輩の意図が、僕にはよくわからなかった。


「それとね、もしかしたら、もう二度とお父さんの顔、見れなくなるかもしれないって思ったから。一度は見ておきたいものでしょ、お父さんって」

「そういうものなのか……?」

「少なくとも、アタシはそっち派」


 そう言って、円樹先輩は何かを隠すように微笑んだ。

 僕はそれがどうにも気になったが、その瞬間、玄関の戸が開く音が聞こえた。


 どうやら、父さんが帰ってきたらしい。


 途端に緊張の面持ちを浮かべたお姉ちゃん。ソファから立ち上がり、扉のほうに身体を向け直立している。


 なんだか釣られて僕も緊張してきたとき、リビングの扉は開かれた。


「ただいまー! えっと、どうも父さんで……す……」


 陽気に登場してきた父さんだったが、姉の顔を見るなり、父さんは一瞬にして瞳が潤んだのがわかった。


 目を細め、懐かしむような父さんの態度に、ああ、本当に今僕の隣にいる女性は、やっぱり父さんの娘であり、僕の姉なのだと実感した。


「……久しぶり。すごい成長したな、円」

「お久しぶりです。……アタシ的には初めましてな気持ちに近いんですけれど……本日はひと晩お世話になります」


 父さんは「ああ、ゆっくりしていってね」と言ってから、僕とお姉ちゃんをそれぞれ見つめて、また目を細めた。


「離れていても、やっぱり二人は姉弟だな、こうしてみると顔、そっくりだ」


 隣でお姉ちゃんはうれしそうに笑っていたけれど、どうも僕は、まだ素直に心の底から喜ぶことはできなかった。

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