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それでも君に認めさせたい  作者: みおゆ
第四章一節:揺らぎ消えゆく『御大地守』
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姉弟になっていく(1)

「じゃあこの部屋使ってください。今は誰も使っていない部屋ですから」


 僕は二階の空き部屋に円樹(つぶらき)先輩を案内したが、円樹先輩はなんだか不満げな様子だ。


「どうかしましたか? この部屋、嫌ですか?」

「……いや、まさか空き部屋なんてものがあると思わなくてさ……」

「……まさか円樹先輩、僕と同じ部屋で寝ようとか、考えてませんでしたか?」

「えっ、当たり! なに〜(まもる)もアタシと同部屋になるのを期待して――」

「まったくしてません。そもそも泊まりの話すら聞かされてなかったんですから」


 円樹先輩はムスッとし、唇を尖らせてから、「それにしても」と部屋を見回して、言う。


「ずいぶんきれいなお部屋だね。まるでここだけ、ずっと使われてなかったみたい」


 円樹先輩がそう話すのも当然だ。だってここは、元々――。


「ここ、元々円樹先輩の部屋になる予定だったらしいですよ」

「……アタシの?」


 円樹先輩は呟き、憂うような瞳でまた部屋を見回した。


「……そっか。初めからいっしょに暮らしてたら、アタシ……ここにいるはずだったんだ」


 僕らの間には、少し湿っぽい空気が流れた。しかし、すぐに円樹先輩はそんな空気を吹き飛ばすように、明るい口調でこう話す。


「あ! じゃあさ、この向かいの部屋が守の部屋ってわけ?」

「え……っ! ……ああ、はい、まあそうですが……」

「ね、見せ――」

「ダメです」

「まだアタシ言い切ってない!」


 僕は自分の部屋を死守すべく、扉の前に立ち阻んだ。円樹先輩は頬を膨らませて、ものすごい形相で僕を睨みつけていたが、何か思いついたか、ニヤリと口角を上げてこう話す。


「……あ、わかった。男の子だもんね、見られたくないものがそのへんに転がってたり……?」

「…………」

「……否定しないってことは、本当にあるの……?」


 ……。

 ……僕だって男なのだ。そこは首を横に振れば嘘になる。……まあ、そのへんに転がっていることはないのだが、円樹先輩のことだ、容赦なく僕の部屋を漁るに違いない。


「うぅ……なんだか、ちょっぴりショックかも」


 どうやら円樹先輩の中で、僕のイメージが若干崩れたみたいだ。それでも構わないはずなのに……なんだか悲しい気持ちになる。


「ま、いっか! お父さんが来るまで、二人でなんかして待ってようよ。……姉弟らしく、ね」


 円樹先輩はもう切り替えたのか、次にはそう話していた。


 部屋に荷物を置き、僕らは階下のリビングへと移動する。


「円樹先輩、何か飲みますか? ……っていっても、今、家に麦茶しかないんですけれど」

「うん、ありがとう。いただきます」


 それから僕は麦茶を用意しようと台所まで移動したのだが、なぜか円樹先輩もいっしょになって着いてきた。


「あの……円樹先輩、別にソファとかでくつろいで待っててくれていいんですけれど」

「守、アタシさっき言ったよね?」


 円樹先輩は僕の言葉を無視して、こう話す。


「アタシたちは姉弟なんだから敬語禁止! あと、アタシのことも『(まどか)』って呼んでって、さっき言ったじゃない!」

「…………」


 いきなり敬語禁止なんて、どうも慣れないなぁ……。


 それに父さんから見ても、久々に再会した姉弟がいきなり仲睦まじくしているのって、違和感がないだろうか。

 ……だって僕、父さんに円樹先輩と学校が同じだったこと、伝えていないし。


(でも、こんなに睨まれちゃあ……円樹先輩の言うこと、聞いていたほうがいいかもな)


 僕は観念して、「わかりました」と円樹先輩に言う。


「敬語は使いません。姉弟らしく、ラフにいきましょう」

「……今、思いっきり敬語だけれど」

「……今からで――今からっ、敬語なし……!」


 ――思ったよりも、慣れない口調で話すのは難しいな。


 ああ、そうそう。僕の中でこれだけは譲れない条件は、今のうちに提示しておこう。


「敬語なしはなるべく頑張りま……頑張るけれど、呼び名だけは拒否します」

「……む」

「円樹先輩は姉ですので、今日の間だけは『お姉ちゃん』でいかせてもらいますからね」

「……むー……わかったよ。あと、また敬語に戻ってるからね」

「……むむ」


 姉弟らしくする……というのも、なかなか僕には難しいみたいだ。

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