衝撃の告白
(……そういえば、このあいだ瑠璃は何を言いかけてたんだろう)
放課後の帰り道、ふとそんなことを思い出した僕だったけれど、重要なことだったら改めて瑠璃のほうから言ってくるだろうと、気にするのをやめた。
今日は瑠璃は家の用事だとかで、いっしょではない。なんだか久しぶりに感じるひとりぼっちの帰り道に、ほんの少しだけ寂しさを覚えつつも、僕は自宅へと向かって真っ直ぐ歩いていた。
「――守」
そのとき、不意に誰かに声を掛けられた。
――否。誰か、といったが、その声で一瞬で誰なのかはハッキリした。この声を、僕は決して忘れることはないのだから。
ゆっくりと振り返るとそこには――思ったとおり、円樹円がいた。そう、僕の姉だ。
相変わらず彼女をひと目見ただけで、僕の鼓動は早く鳴りはじめてしょうがない。
僕は必死でそれを表に出さないように、平静を装う。
「なんだか久しぶりな感じだね。守、今日は一人なんだ?」
「……そんなことより、円樹先輩って帰り道こっちでしたっけ?」
「こっちのときもある」
……なんだ、「こっちのときもある」って……。
まあいい、僕はそのまま家へ帰るだけだ。
僕は歩みを再開すると、円樹先輩も当たり前のように僕の隣につき、歩みを合わせてきた。
「……あの」
「なーに?」
「いや、なんで着いてくるんですか」
「アタシ、今日こっちの日だから」
だからさっきからなんだ、それ……。
「守、瑠璃ちゃんと上手くやってる?」
「な、なんですか急に……」
「いいじゃない。姉として、弟の恋愛進捗は聞いとくべきだと思わない?」
「円樹先輩、都合のいいときだけ姉面してきますよね……」
「いいでしょ。だって、本当にお姉ちゃんなんだもん」
僕は少しだけため息をついた。でも、嫌なわけじゃない。やっぱり、円樹先輩の横にいると気持ちが弾んでしまう。
「……別に、変わりありませんよ」
「えー。瑠璃ちゃん、それは悲しいと思うなー」
「……あの」
「何?」
僕は一度足を止め、円樹先輩を見つめた。
「その……どうしたんですか急に。こんなこというのも自意識過剰みたいで嫌ですが、その、円樹先輩は僕のこと――」
「うん、好き。大好き」
前のめりに言われ、耳朶が熱くなるのを止められない僕。
「……じゃあなんで、瑠璃のこと、聞いてくるんですか」
「ふぅん……。守、瑠璃ちゃんのこと、『瑠璃』って呼ぶようになったんだ」
円樹先輩はじとーっとした目つきで僕を睨んだ。なんだろう、このちょっとしたひと言が命取りになる感覚。
「……で、本当に何もないの? 恋人らしいこととか、全然?」
「……そんなのない、ですよ。ただいっしょにいることは多くなりましたけど」
「じゃあさじゃあさ! き……キスとかもしないの!?」
「…………」
「……その顔、絶対一回はしてるね。アタシが学祭で見せつけられたのとは別に!」
名推理を突きつけられ、途端に居心地が悪くなる僕。浮気している人の気分とは、今まさにこんな感じなのだと思う。
「……な、なんなんですかさっきから……」
「……別に、ちょっと聞いてみただけ。守どんな感じかなーって。 好きな人が今どうしてるかなって、すごく気になるじゃん」
円樹先輩は僕を見つめ、笑う。
「守、自分からは絶対話してくれないからさ」
「……」
「別に、いいんだけれど」
そんな会話をしているうちに、僕はあることに気づいた。円樹先輩の荷物が、明らかにいつもよりも多いのだ。
普段なら鞄ひとつのはずだが、今日に限っては、大きめのリュックまで背負っている。
「……あの、円樹先輩。今日はやけに荷物が多いようですが、どうされたんですか?」
円樹先輩は「ああ、これ?」と一度リュックに視線を動かしてから、再び僕を見てこう答える。
「決まってるじゃない。今日は守の家で、お泊まりする日だもん」




