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それでも君に認めさせたい  作者: みおゆ
第三章二節:それでも隠す『葛城優子』
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それでも、優子〈わたし〉は

(……ごめんね、円)


 円に『恋』をしてから、わたしが何度心の内で、円に謝罪したのかわからない。


 とにかくこれまでわたしは、何度も円を思い浮かべては、謝っていた。


 円と過ごす時間の合間に、円と過ごした日の夜に、そして現在(いま)のように――円に会う前の朝にも。


 でも、消えない。精算はされない。むしろ、どんどん罪は濃くなっていく。


 せめてものできる償いはただひとつ。

 わたしの想いを、最後まで隠し通すこと。


『それであなたはいいの?』


 わたしの中にいるもう一人のわたしが、幾度とそう問いかける。


 そのたびに、わたしの決意はユラユラと揺らぐ。


 本当は、本音は、円のすべてを欲しいに決まってる。


 ――でも、世の中すべてが手に入るわけじゃない。


「……時には、諦めも肝心なのよ」


 そう声に出して、自分を戒めて――わたしは今日も家を出た。


『このままじゃあ、いつか誰かに円を取られちゃうかもよ』


 欲望に忠実なわたしが、耳元で囁いてくる。


『元々、わたしのものじゃないって? アンタってば健気よねー。でもさ、もしかしたらって考えない? 円とわたしが同じ気持ちだったら……って』


 考えたことは――正直ある。でも、今ならハッキリ言える、同じ気持ちなわけないって。円の『恋』する相手は、もう別でいるんだから。


 転校生が、いるんだから。


 円の『恋』する相手は――やっぱり、頼もしい男の人なんだから。


『そんなことないかも。あなたが告白すれば、何か変わるかもよ?』


 ――そんな小さな確率に賭けられるほど、わたしはバカじゃないわ。


『本当にいいの? アイツにも言われてたじゃない、後悔ないようにって。気持ちを伝えられたなら、それでひとつ、わたしの想いは解消されるのよ』


 ――そう……かもしれないわね。


 想いを伝えてしまえば、どれだけ気持ちが楽になるだろう。

 今まで溜めてた想いをぶつけられたら、どんなにスッキリするだろう。


 告白が成功してもしなくても、わたしの中にある()がひとつなくなることは確かだと思う。


『伝えてみたら?』


 ――円に、長年隠してた想いを。


「……」


 ――……伝えてみるのも、アリなのかな。


「あ、優子(ゆうこ)おはよー!」


 大好きな人の声が聞こえ、わたしの意識は外へと向いた。

 

 気づけば、校門の前まで来ていたわたしは、偶然にも円と合流していた。


「……!」


 円に笑顔を向けられて、告白に傾いていた気持ちは、一瞬にして()()()()


「おはよう、円」


 ――そうよ、わたし決めたじゃない。この(オモイ)はずっと心の中に閉じ込めて、償っていくって。


 危うく、間違いを起こすところだった。


 わたしは円のこの笑顔が好き。円の優しさが好き。わたしのたったひと言で――それを曇らせるなんてこと、あってはならないのよ。


 だからわたしは、いつもどおり変わらず、円の『親友』として生きていくの。


『……本当にそれでいいの?』


 ――それでもいい。わたしは、永遠に円の親友でいるわ。


『想いを吐き出せたら、楽になるのに?』


 ――わたしが楽になっても、今度は円を苦しめることになる。円は優しいから……絶対にわたしを傷つけないように、気を遣いつづけることになるかもしれない。そんなことになったらもう二度と……円と、『親友』でいられなくなる。


『後悔、しない?』


 ――……する後悔になっても、いい。


 これはわたしが決めた、(オモイ)の精算の仕方よ。


(――それでもわたしは、円の『親友』で居続けるわ)


 だから、改めて伝えさせて。


「円」

「……? 何、優子?」


 ――わたしの、この決意(オモイ)を。



「わたし、これからもずっと円の親友だからね」



 円は「どうしたの、急に〜」と笑ってから、


「わたしもだよ! わたしも、優子のこと好きだもん!」


 ……って、言ってくれた。


(……。……これでいい。わたしがそう決めたんだもの)


 わたしたちは、いつものように親友らしい雑談を交わしながら、教室へと歩んでいった。



 ――どうか、円の『恋』が成就しますように。


 そう願うのが、親友(わたし)の務めなの。

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