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それでも君に認めさせたい  作者: みおゆ
第三章二節:それでも隠す『葛城優子』
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突かれた恋心

優子(ゆうこ)、いっしょに帰ろっ」


 最近、(まどか)からそう言ってくれることが多くなった。


 それが嫌なわけじゃないし、むしろうれしいことだけど……やっぱりわたしは、円のことが気がかりで素直に喜べない。


「オッケー。あ、時間あるならどっか寄ってく?」

「いいね! あそこ新作出たらしいよ、飲みに行こうよ」


 ――円は寂しくないのかしら。悲しくないのかしら……わたしなんかと過ごして、つまらなくないのかしら。


(……わたしなんかより、転校生とデートするほうがいいに決まってるわ)


 でも今は叶わないから、しかたなくわたしと過ごしてる……のよね。


(やだな、わたし……円が恋してから、こんな卑屈っぽくなって)


 ――こうはなるもんかって、思っていたのに。


「優子、なんか調子悪い?」


 わたしが暗い顔をしてしまっていたのか、円はわたしの顔を覗き込みながらそう話しかけてきた。わたしはすぐに笑顔を作り、「そんなことないわよ、ちょっとボーッとしてただけ」と答えて、いっしょに教室を出た。



 ローファーに履き替え、わたしたちは昇降口を出たときだった。運悪く、その先には転校生と瑠璃(るり)が、二人で話しながら歩いている姿を目撃してしまった。


 少し離れた位置から窺うに、瑠璃は楽しそうに何か語っているようで、転校生は優しげに耳を傾けている様子だった。


「……」


 円を見れば、ただじっとその二人を見つめていた。羨ましげとも違う、何か哀愁を感じさせる眼差しを向けていた。


「……円」


 思わず、手に力がこもる。


 ――転校生の奴、円の気持ちも知らないで、のんきに彼女と談笑なんかして……。


 今からでも転校生(アイツ)を引っぱたいてやりたい。でも、さすがに瑠璃の前でそんなことはできないし……。


「……円、裏門から行こ。あっちのほうが近道だし!」

「えっ、ちょっと優子!?」


 わたしは無理矢理円の手を引いて、二人とは反対方向へと歩いた。


 とにかく今は二人から――転校生から円を遠ざけないと。円がこれ以上悲しい気持ちに飲まれないように……ね。




 ◇




 転校生が瑠璃と付き合っている状況であっても、円が転校生を好きで、それでもまた気持ちを伝えるっていうのなら、わたしはそれを尊重する。


 だけど、転校生が無神経に円を傷つけるのは許せないし、円の気持ちを蔑ろにさせたりなんて絶対させない。


(転校生が何考えてんのかマジでわかんないけど、円が告白をする前に、一度きっちり文句を言ってやるわ!)


 そう意気込みながら、夕刻の静かな廊下を歩いていると、偶然にも転校生を見かけた。


 転校生はどうやら、一人みたいだった。


 わたしはチャンスとばかりに、ほとんど反射的に転校生の元へ早歩きに向かっていた。


「――転校生!」


 わたしが声を掛けると、転校生は一拍間を空けてから振り返った。


「なんですか、いきなり呼びつけて。……というか僕もう、転校生と呼ばれるほど、ここへ来てから日は浅くないと思うんですけれど」

「そんなことどうでもいいのよ!」


 相変わらず無愛想な態度、腹が立つわね。……ううん、今はそんなのどうでもいい。


「アンタ、なんで瑠璃と付き合い出したりしたのよ」


 早速そう問うと、転校生は後ろめたい感情があるかのように、すぐに目を伏せた。


 わたしは、その一瞬を見逃さず畳み掛ける。


「アンタ、本当に瑠璃のことが好きなの? 本気で『恋』して瑠璃と向き合ってるの? 本音をいえば、円に気があるんじゃないの? だってアンタは、いつも円のこと、見てたじゃない……!」


 転校生は悔しげに下唇を噛んだ。……悔しいのはこっち……ううん、円だってそうよ。


「何か円に引け目を感じてるの? 円が学園一かわいい子だから? 世界一優しい子だから? 自分には不釣り合いだって思っちゃうから? ……そんな腰抜けな理由だってんなら、ふっざけんじゃないわよ!」


 わたしがありったけの文句を言ってやると、転校生は力なく笑って、吐き捨てるようにこう洩らす。


「そんな理由を並べられたら、どんなにマシだったか」


 ――マシって、どういうこと?


 そんなわたしの内心を知らない転校生は、「……前々から思ってたんですけれど」と、続けてこう言ってきた。


葛城(かつらぎ)先輩って、円樹(つぶらき)先輩のことになると躍起になったりしますけれど――もしかして葛城先輩って、円樹先輩のこと好きなんですか?」


 息を飲むわたし。すぐさま、「……は? 何よ、急に……当たり前でしょ、円は親友なんだから」と言い返したけれど、転校生はただ冷静な眼差しを向けて、「いえ、そうじゃないですよ」と言い、次の瞬間、わたしの中にある核心に、容赦なく土足で踏み込んできた。



「――葛城先輩は、円樹先輩に『恋』をしていますよね」



 心を見透かされた瞬間、世界の音が一瞬で消え去ったような気がして――わたしの脳裏に、あの日初めて手にした『恋』のことが、鮮明に蘇ってきた。

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