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それでも君に認めさせたい  作者: みおゆ
第三章二節:それでも隠す『葛城優子』
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独りよがりな本音

優子(ゆうこ)、アタシ……目、真っ赤?」


 (まどか)は目を真っ赤に腫らしながら、上目遣いにわたしにそう聞いてきた。


「そりゃあ、そんだけ泣いたらね」

「そっか」


 正直、円がこんなに泣いた姿を見るのは初めてだった。

 今まで円は全然弱音なんて吐いてこなかったから。


 あまりのひどい泣き顔に、それだけ円の『恋』が本気だったんだって伝わってくる。


「……(まどか)、家に帰りづらいとかあったらさ、今日はウチに泊まる? ウチの親、夜勤とかでいないし。こっちは構わないけど」


 円は悩んでいるような素振りを見せたけど、結局「ううん、大丈夫」と答えた。


「ありがとう、優子。お母さんにはなんとかごまかすから大丈夫。今日はちゃんと家に帰るよ」


 すっかり円は笑みを浮かべていた。


 わたしは「わかった、気をつけて帰るのよ」と言い、円をその場で見送り、わたしも帰路へついた。



(家に誘うって、何言ってるのよ、わたし)


 自宅に着き、内心呟くわたし。


(そんな急に言われても、円が困るに決まってるでしょ。今後は気をつけないと……)


 自戒しながら自室へ向かう。部屋に入った瞬間、早速制服を脱ぎ捨てていたときだ。


『円が失恋してよかったね』


 と、声が聞こえた。


 いや、声が聞こえたんじゃない――これは、()()()()()()()()()()()()()()()()


『でもさー、あの転校生、今度は違う女と付き合い出したわよね?』

「……いいじゃない、それで」

『本当にそう思ってる? アンタは、それにも若干腹を立てているはず』


 神経を逆撫でするような口調で、心の声は責め立ててくる。


『円とデートして、そのあとも思わせぶりな曖昧な態度を取りつづけて、学祭の出し物にまでちゃんと顔を出してきて――なのに、それなのに転校生(アイツ)は結局同じクラスメイトの女を選んだ!』


「……」


『ねぇ、なんでだと思う? アンタも薄々勘づいてたでしょう……円と転校生は両想いだって』


「……」


 ――円が自分の気持ちを吐露して泣いたあの日、『結ばれることはなくても』と発言していたことが、わたしの中でずっと引っかかっていた。


 ……どうして、結ばれることはないって言い切っていたのかしら。


 転校生がずっと素っ気ない態度を取ってるから? 円はもう、転校生が瑠璃へ気持ちが向いていることに知っていたから?


 なんか……どっちも違う気がする。


 そうだったら、もっと前の段階から転校生のことを諦めていそうだし……また違う理由がありそうな感じがするのよ。


 ……そういえば、前にわたしが、円が転校生のことを呼び捨てにしている理由を聞いたときに、結局『いつかちゃんと優子に話す』……みたいな、変なはぐらかせを受けたんだっけ。


 何か複雑な事情が円と転校生の間にある……?


 ……。

 ……それは、何?


『しっかし、転校生も円じゃなく瑠璃を選ぶとはねー。円のほうがかわいくていい子だっていうのに』

「……そうね。なんとなく、転校生は円のことが好きなんじゃないかって思ってたんだけどな……」


 円からのデートの誘いも乗ってるし、普段のお昼休憩のときも円と会ってたし、学祭のときもウチのクラスに来てくれたし……ま、それは瑠璃と来やがったけど。


 でも、わたしは気づいてる。

 学祭のとき、転校生は瑠璃と来ていたっていうのに、円ばかりを目で追ってた。


 それって、円が好きだからじゃないの?


 素っ気ない態度も、好きだから緊張してそんな態度を取っちゃうとか、そんなんじゃないのかしら。


『――円の『恋』は必ず叶うって、アンタ信じきっていたわよね? 裏切られた気分はどう?』


 心の声は、変わらず意地悪な物言いで語りかけてきた。


「……わたしが勝手に期待しただけの話に過ぎないわ。そんなことよりも、瑠璃(るり)の想いが実ってよかったじゃない」


 そう言い切ると、心の声は止んだ。


 ――ああ、もう本当に気分最悪。


 転校生の奴、何考えてるか本気で意味わかんないわ。


 アンタが好きなのは、結局瑠璃だったの?

 アンタにとって、円はなんだったの?


 円は、転校生のことどう思ってたの?

 円は、円の『恋』を諦めるの?


 ――わたしは、二人にどうなってほしいの?


「……本当は卒業まで、ただ三人で話せてるくらいがちょうどよかったのよ……」


 そんな確かな本音は、完全にわたしの独りよがりで、誰にも言えるはずなかった。

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