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それでも君に認めさせたい  作者: みおゆ
二章四節:それでも慕う『北千種瑠璃』
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それでも、瑠璃〈わたし〉は

 しばらくして、ようやく泣き止んだわたしに対し、御大地(みおおじ)くんは寄り添いながら、微笑みかけてくれました。


「……なんで泣くんだよ」

「……だって、オッケーされるって誰が予想してたんですか」


 御大地くんは「そうだよな」と言って、窓の外を見ます。


 いつも間にか閉会式の準備も整っており、生徒たちも集まっていました。


「どうする? 今から行くか?」

「……目、赤い?」

「……ああ」

「……なら、やめます」

「じゃあ、僕らはここから見るか」


 校庭の中央には、キャンプファイヤーの台座がありました。


 その前に現れたのは、かわいらしいドレスのような衣装に身を包み、片手に松明を持った円樹(つぶらき)先輩です。


 遠くからでハッキリは見えませんが、円樹先輩の仕草や周囲の反応を見るに、とびきりの笑顔でみんなの前に立っているのだとわかります。


 いよいよ台に火が灯されると、窓越しだというのに歓声が聞こえてきました。


「キャンプファイヤーなんて、大がかりなことをするもんだな」

「そうですね、変わった学校です」


 わたしは横目で御大地くんを見ると、御大地くんは円樹先輩を見つめていました。


「……ねぇ、御大地くん」

「……ん?」

「どうして、わたしの告白にオッケーしてくれたんですか?」

「…………」


 途端に押し黙ってしまう御大地くん。


 ……ああ、そっか。

 御大地くんは結局、今も円樹先輩に『恋』してるんですね。


 わたしの『恋』は叶ったわけじゃない。

 叶ったのは、形だけ。


「……じゃあ、質問を変えます」

「……」

「御大地くんは、どうして円樹先輩に『恋』していることを認めないんですか」


 御大地くんは一瞬下唇を噛み、悔しがる想いが垣間見えた気がしました。


 答えようとしてくれない御大地くんに、わたしは詰め寄ります。


「御大地くん、教えてくれませんか。誰にも言い触らしたりだとか、絶対にしませんから」

「……」


 問いかけても、目を伏せる御大地くん。

 ……ですが、もう引き下がりはしません。


「御大地くん。わたしはもう御大地くんの彼女……なんですよね? わたしは彼女として、どんな理由でもすべてを受け入れます。だから、答えてほしいです。……せめて、それだけは」


 わたしが言うと、御大地くんは意を決したようで、「……そうだよな」と言い、わたしを見つめました。


北千種(きたちぐさ)さんは、なんでもおみとおしだな」

「……なんでもおみとおしなんてことありませんよ。わたしはただ御大地くんが好きだから……あなたの想いがどこに向いているのか、そのくらいわかります」


 そう言うと、御大地くんは窓の外にいる円樹先輩を見下ろしつつ、ゆっくりと語りはじめてくれました。


「――実は、円樹先輩は僕の姉なんだ」


「……お姉さん?」と、思わずわたしは聞き返していました。


「……ああ。血の繋がった、本当の姉。訳あってずっと別々で暮らしていて……この高校で再会したんだ」


 言われてみれば――二人の顔は、よく似ています。


「……姉だとわかっているのに、僕は彼女のことが好きでしかたない。でも、これは絶対叶えちゃいけない『恋』だと理解(わか)ってる。だから僕は、早くこの『恋』を諦めたくて……」


 そっか……そうだったんですね。


 やっとわたしの中で合点がつきました。

 御大地くんが自分の気持ちを否定する理由、わたしの想いを受け入れてくれた真の理由も。


 ――やっぱり、御大地くんはずっと円樹先輩のことを見ていて、わたしのことなんて、ちっとも見てくれはしてなかったんですね。


 ああ……なんだかむしろ、ちゃんとわかってスッキリしました。


「……打ち明けてくれて、ありがとうございます」


 わたしは、そっと御大地くんの肩に寄りかかりました。


「……こんなこと言われて、嫌いにならないのか?」

「ちょっぴり嫌な気持ちになりましたけど、それ以上に、わたしは御大地くんのことが好きだから」


 幼少期、あなたに守ってもらってから、ずっと好きで想いつづけていたから。今更この想いは、簡単に変わることはありません。


 あなたがどんなにわたしじゃなくて、円樹先輩のことが好きだとしても、それでも、わたしは……わたしは、あなたを想いつづけます。



「――いつかわたし、御大地くんの『恋』を、わたしへの『愛』に上書きさせてやりますから」



 御大地くんは目を見開き、それから瞳に影が落ちるのがわかりました。


 それは罪悪感から……なのでしょうか。


(罪なんて感じることないのに。わたしは、あなたが隣にいてくれるだけで、それだけでいい)


 ふと閉会式に視線をやると、こちらとは対照的に、外はみんなで歌ったり踊ったりしているようで、盛り上がっていました。


「……御大地くん」

「……何?」

「もう一回……シンデレラとしてじゃなくって、わたしとしてくれませんか?」

「……ああ」


 キャンプファイヤーの明かりがかろうじて反射する薄暗い部屋の中、最後にわたしたちは、乾いた口づけを交わしました。

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