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それでも君に認めさせたい  作者: みおゆ
二章四節:それでも慕う『北千種瑠璃』
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『恋』の気持ちに単純なわたし(2)

「あら? 君たち、どうやらお決まりみたいね?」


 頭に赤いリボンをつけた、ショートボブのかわいらしい方でした。執事の格好をしていますが、この方はかっこいいというよりも、かわいさが全面に出ているように感じます。


「……葛城(かつらぎ)先輩もホール係なんですね」

「何よ、わたしがホールでなんか悪いってんの?」


 ――どうやら、この方は葛城先輩という方らしいです。この感じだと、御大地(みおおじ)くんはお知り合いなんですかね。


(……自分のクラスにいるときは、全然周りの人に興味なさげなのに……御大地くんったら、上級生……しかもこんなかわいらしい女子たちと仲がいいんですか……)


 思わず、また黒いモヤモヤした感情が湧き上がってしまうわたし。


 わたしはすぐにそれを振り払います。

 ふと気づけば、葛城先輩はわたしの顔を見て、にこやかに微笑みを向けてくれていました。


「初めまして。わたしは葛城優子(かつらぎ ゆうこ)(まどか)の幼なじみってとこかしら。アンタ貴志(たかし)のとこの妹の瑠璃(るり)だったわよね? よろしくね」


 あら、わたしのことはどうやらご存知のようです――と思っていると、不意に葛城先輩はわたしの顔に近づいて、こう耳打ちしてきます。


「……で、転校生とはどこまでいったのよ?」

「……えっ!?」


 思ってもみなかった質問に、わたしは戸惑います。


『転校生』――っていうのは、御大地くんのことだと思いますが……。


(……ど、どこまでって、わたしはまだ何も……。というか、これってわたしが御大地くんのこと好きってバレてます!? どうして!?)


 わたしの焦りが顔に出てしまっていたのでしょう、葛城先輩はニヤリと口角を上げ、こう言います。


「ふっ、その反応……やはり転校生のことが好きか」


 ――なるほど、カマをかけたということですね……。


 なんでわざわざそんなこと……と思いましたが、葛城先輩は円樹(つぶらき)先輩の幼なじみだと言っていましたし、円樹先輩の『恋』事情を知っていての質問、なのでしょうか。


「……で、どこまでいったのよ?」


 再度質問され、わたしは「……特に、何も」と答え、小さく首を横に振りました。葛城先輩は「そう、転校生らしいといえばらしいわね」と呟いてから、


「ま、アンタも頑張りなさい」


 と、ウィンクをしました。


 ――どうして、わたしみたいな人を応援してくれるんだろう。


「葛城先輩、何コソコソ話しているのかわかりませんが、来たなら注文聞いてくれませんか?」


 御大地くんが入ってきたことにより、わたしの疑問は一旦保留となりました。


「うるさいわね! ちょっとした女子トークくらいさせなさいよ!」と葛城先輩は返しましたが、すぐに接客モードへと切り替え、「んじゃ、ご注文はいかがなさいますか? お嬢様方」と聞いてきました。その様は、なんだか常にやる気のない、気だるげな執事という感じでしたが、これはこれでなんだかいいなぁと思うわたし。


 御大地くんがぶどうジュース二つを注文したあと、しばらくして再び円樹先輩が現れて、ぶどうジュースを運んできてくれました。


「はい、ご注文のぶどうジュース二つです。このあとも、ゆっくりして楽しんでね」


 円樹先輩はジュースを机の上に置いてから、「あ、そうそう」と、わたしたちに笑いかけます。


「二人のクラスの演劇も、優子と見に行くから! 楽しみにしてるから、頑張ってね!」


 じゃ、来てくれてありがとー! と、円樹先輩は忙しそうに、また接客へ戻っていきました。


 せっかく御大地くんが来たというのに、円樹先輩は接客にも手を抜かずに、全部に全力なんですね。


(なんだか眩しいなぁ……)


 わたし、本当に勝ち目がありません。

 御大地くんがこんな素敵な人を差し置いて、わたしに振り向いてくれるなんて……やっぱりありえない。


 わたしのこの『(きもち)』は、やっぱり隠しておくのが一番……ですね。


 御大地くんを無駄に困らせずにも済みますし。


 暗くて重くて黒い気持ちが、フツフツと腹の中で煮えくる。

 こんな気持ちになるつもりで、御大地くんのお誘いに乗ったわけじゃないのに。


 この気持ちを洗い流すつもりで、わたしはジュースを口にしていると、御大地くんから話を振ってきました。


「……なぁ、このあとはどうする?」

「……このあと?」

「僕らの出し物までまだ時間あるし、このあとも適当に校内を巡りながら時間潰さないか? 北千種(きたちぐさ)さんがよければ、だけれど」

「……どうしてわたし? 円樹先輩じゃなくて?」


 わたしが言うと、御大地くんは「……僕といるのは嫌か?」と聞いてきました。


 ……嫌なわけ、ない。

 むしろ、いっしょにいたいに決まっています。


「……わかりました。いいですよ、御大地くんの暇つぶしに付き合ってあげます」


 ――ああ、わたしってどこまでも単純で、簡単な人です。


 絶対に今、満面の笑みで答えているに決まってるんですから。

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