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それでも君に認めさせたい  作者: みおゆ
第一章三節:それでも想う『円樹円』
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すべてを知ったからこそ

(アタシ……どうしたらいいんだろう)


 アタシは廊下を歩きながら、(まもる)くんになんて話そうか悩んでいた。


 いや、悩むまでもなく、守くんにはアタシたちの関係について話さなくてはならなくて、その上でアタシがしてしまったことを謝らなければならないことはわかっているんだけれど。


 気持ちが全然追いつかない。


 守くんに会うのが――今は少し、怖い。


(……あ)


 そんなふうに考えているというのに、アタシは無意識のうちに一年の教室前まで足を運んでいた。


 いつもの習慣からだろうか、アタシの本心は、守くんを向いているのだった。


(……ダメだ。今日はすぐ帰ろう)


 アタシは思い直し、踵を返そうとしたときだった。


「……まも……るくん」


 タイミングよく――いや、悪く……かな――守くんが、教室から出てきた。


 思わず、目が合ってしまう。


 同時に心が勝手に弾み、守くんへの気持ちがとめどなく溢れ出す。


 ――ああ、アタシこんなにも、守くんのことが好きなんだ。


 初めて感じた、抑えられないこの衝動は、守くんが教えてくれた『恋』なんだ。


 でも守くんは――アタシの弟なんだよね。


「……っ」


 気持ちの整理がついていない今、アタシはこの場から逃げるように立ち去った。


 一応挨拶代わりに笑いかけたつもりだったけれど……愛想笑いくらいには、できていたのかな。



 ――一度会うのを避けてしまったら、気づいたらその日から、何日も顔を合わせなくなってしまっていた。むしろ、どんどん会いづらくなってしまっている状況に陥っていて。


(まどか)、最近転校生と話さないじゃない。何かあったの?」


 ――優子(ゆうこ)からは、そう言われる始末だ。


 アタシは「なんでもないよ、ただちょっと……お互い、時間が合わないだけ」とだけ答えた。


 優子は目を伏せ、ただ「……そう」とだけ。


 アタシは昨日観たドラマの話など、明るい話題を持ちかけて、とにかく優子の心配を逸らせることばかりに努めた。



 そんなことをしている一方で、本当に内心、ため息ばかりが出てしまう。


 知らなければよかった、姉弟なんてこと。


 ……いや、初めから知らされていればよかった、弟がいることを――そうすればアタシは、守くんにこんな『(きもち)』を抱かずに済んだんじゃないかな。


 守くんと一線を越える(キスをする)なんてこと――なかったんじゃないかな。


 あのときのことを思い出すたびに思う。


 なぜ、守くんはあのときに拒絶しなかったのか。むしろ、守くんのほうからも――。


 おこがましい決めつけかもしれないけれど。


(あの瞬間、アタシたちの気持ちは通じ合った気がする)


 ――そういえば、守くんと観た映画……あれも、『兄妹愛』がテーマだった。


 生き別れていた双子が大人になってから再会して、互いに恋に落ちるお話。

 『血の繋がった兄妹』という事実を前に葛藤する二人だけれど、最後は自分の気持ちに従って、二人結ばれるというものだった。


 周りから反対される中、それでも自分たちの気持ちを押し通すところは感動したなぁ。


『愛』に決まりなんてない、すべての困難は二人乗り越えていくって覚悟を決めて前を向くシーンなんか、本当に『恋』と『愛』のパワーってすごいんだって感動しちゃった。


 ――まさかあの映画が、まさに今のアタシの状況と重なるなんて思いもしなかったけれど。


(……。……そうだよ、アタシたちだって)


 ひとり悩む日々の中で、アタシはようやくひとつの結論に辿り着いた。


 だったら、アタシがするべきことは決まっている。

 アタシのほうから、一歩踏み出さなくちゃいけない。



 ◇




 ――こうして決意を固めた最中、偶然、朝の登校中の校門で、守くんと顔を合わせた。


「……円樹(つぶらき)先輩」


 久しぶりに見る守くんは変わっていなくて――アタシに安心感とトキメキを感じさせてくれた。


「おはよう……ございます」


 何気ない挨拶のひとつに過ぎないけれど、アタシにはそれが、とても愛おしくてたまらなかった。


 一方、守くんはそれだけ言い残し、そそくさを先を歩いていってしまう。

 アタシは思わず「待って!」と守くんを呼び止めながら追いかけ、その肩を掴んだ。


「……なんですか」


 守くんの瞳は、相変わらず一見して冷たい色をしている。だけれど、アタシはもう知っている。


 ――それは、表面上だけだということに。


 その奥に隠れた本音は、アタシと同じだ。


 だから、アタシたちは惹かれあった。

 運命に引き寄せられた。


 きっとそういうものじゃないかって、アタシは本気で思っている。


「守くん」


 ――正直に、ぶつかるんだ。


「今日の放課後、屋上に来て」


 すべてを話して、アタシはこの『(おもい)』を伝える。

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