表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
それでも君に認めさせたい  作者: みおゆ
第一章三節:それでも想う『円樹円』
32/99

最低の姉

 ――「(まもる)とは、特に何もしていないわよね?」


 お母さんの言葉が、深く深く胸に食いこんだまま離れない。


 昨晩は結局、食事が喉を通らなくて、そのまま自室に引きこもっていた。


 あれから、お母さんとは口を聞いていない。

 今朝も、何も言わずに家を出てきたくらいだ。


「――あ。(まどか)、おはよー」


 教室へ入ると、早速優子(ゆうこ)が話しかけてきた。流れるように、「……で、昨日はお楽しみだったの?」と、ニヤついた顔で聞いてきたが、アタシはすぐに答えられず、目を逸らしてしまった。


「……円?」


 そんなアタシの態度に違和感があったのだろう。優子は心配そうにこちらの顔を覗き込んできた。


 このまま優子に心配かけさせちゃうようではダメだ、とアタシは自分を叱りつけて、すぐに優子に作り笑顔を向け、「そりゃあもう、楽しいデートだったよ〜」と話しつつ、自分の席についた。


「へぇ〜。進展はあったって感じ?」


 優子に言われて、思わずアタシの手は止まる。


「……何? まさか円――」

()()()()()()()


 アタシはそう答え、優子の言葉を遮った。


 言ってから、少し言葉が強かったかもしれないと思い、慌てて優子の目を見た。

 優子は驚いていたようだったけれど、すぐに笑みを浮かべて、「そうよねぇ、そんなすぐにないわよねぇ」と言って、アタシに背を向けた。


 アタシは、ぶっきらぼうな物言いをしてしまったことに罪悪感がありつつも、何も言い出すことができなかった。


(優子に話せたら、少しは楽になれるのかな)


 そんな思いが過ぎったけれど、アタシたちの問題に優子を付き合わせるなんて、優子にとって迷惑な話だろうし、気軽に話すことなんて……やっぱりできない。


 これは、()()()()()()()の問題なのだから。


(……本当に、姉弟なのかな?)


 未だに信じられない。

 お母さんの冗談じゃないかって、疑っている自分がいる。


 だって、特に証拠も見せられているわけじゃないし……。


 ――そもそも、だ。


 守くんは、このことを知っているのだろうか。


 お父さんから何か聞かされていないのだろうか。もしくは、アタシと同じように何も聞かされていなくて、妹さんと二人兄妹だとして認識しているのかもしれない。


 ……いや、待って。


「……妹じゃなくて、アレは」


「何? 円なんか言った?」と優子が聞いてきたので、アタシは咄嗟に「なっ、なんでもない」と答えた。優子は怪訝そうにしながらも、また前へ向き直った。


 アタシは、再び守くんの妹のことを思い出す――()()()()()()()()()()()()()()()()()のことを。


 アタシは、自分の小さいころの写真を知らない。

 お母さんから見せてもらう機会なんてなかっし、そもそもアタシ自身、自分の過去をあまり気にしたことはなかったから。


 でも、あそこに映っていたブロンドヘアーの少女は――もしかしたら、小さいころのアタシなんじゃ……。


 すぐに気づきそうなものなのに、アタシはずっと気づかず、呑気なことに守くんの言葉を鵜呑みにしていた。


(――守くんが、アタシを避けていた理由って……)


 守くんは、先にアタシたちの関係を知っていた?

 あの写真は、別れた姉の手がかりとして、常に持ち歩いていたものだと考えたら?


 守くんは、実の姉かもしれないアタシとの接し方で、ずっと悩んでいたとしたら?


 ――「(まもる)とは、特に何もしていないわよね?」


 リフレインのように、お母さんの声が脳内を響く。


(どうしよう、アタシ……)


 今になって、カラオケでのキス(してしまったこと)の罪悪感がアタシの中で膨らんでいく。

 だけれど、それ以上に――。


(『好きの気持ち』が、消えない)


 むしろ、それは大きくなるばかりだ。


『弟に手を出した最低の姉』――そんなこと、頭では理解しているのに、アタシの気持ちは、どうしても違う方向を向いてしまっている。


 ――もう一度、彼に触れたい。

 ――もう一度、彼と繋がりたい。


 この胸の高鳴りは、トキメキは、『恋』する気持ちは、全部、全部初めての経験で、尊くて、大切なもので。


(ああ、アタシ……)


 ――『恋』をするって、こんなにも抑えられない衝動なんて。


(……最低だ)


 なんでよりにもよって、弟なんかに『恋』しちゃったんだろ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ