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それでも君に認めさせたい  作者: みおゆ
第一章三節:それでも想う『円樹円』
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些細な違和感

『えっ!? デートするの!?』


 スマホの中にいる優子(ゆうこ)は鬼気迫る表情で声を上げた。


 ――デート前日の夜である現在(いま)、アタシは優子にビデオ通話で(まもる)くんとデートをすることを打ち明けたのだ。


『ってか、なんで今まで教えてくれなかったの!? ついさっき決まったとかじゃないでしょ!?』

「だって学校で話してたらさ、たまたまそれを聞きつけた周りの子が噂したりして、また大変なことになったら嫌だもん」

『……ああ、うーん……それもそうね』


 優子は納得してくれたようだ。だけれど、優子の質問はここで終わるわけじゃない。


『一体、何がどうしてデートになったのよ……あの転校生をどうやって誘ったのよ!?』

「普通に誘ったらオッケーしてくれたよ」

『えー、ウソ! アイツ断りそうなもんなのに!』


 アタシもそれはちょっと同感。だからこそワザと、あのタイミングで――守くんが断りづらく、かつ押し切れそうな雰囲気のときに誘ってみた。思惑どおり、上手くいってくれたけれど。


(……アタシ、ちょっと卑怯だったかな?)


 ――ま、いっか。少しくらい。


(まどか)もやるわねぇ。まだアイツと出会って一ヶ月くらいじゃない。デートまで進展させるなんて、やっぱ学園一の美少女は違うわね』

「えっへん。アタシ、ただの美少女に落ち着く気はありませんから」

『はいはい、すごいすごーい』


 優子は棒読みの賞賛を入れたあと、ふと真剣な顔つきに変わった。


『……円はさ、転校生のどこが好きになったの?』


 改めてされた質問に、アタシは「前にも話したとおりだよ」と答えると、優子は頭を抱えた様子でこう返す。


『いや、そうなんだけど……本当にそれだけ? 正直わたしから言わせてもらうとさ、転校生って全然何者かわからないっていうか、そのせいで魅力をまったく感じないっていうか……っていうか、最初こそ円に酷い態度を取ってた奴じゃない!』

「それは……」


 それは確かにそう……かもしれない。事情はわからないけれど、守くんは執拗にアタシを避けていた。だからこそ、アタシはそんな守くんのことが気になって、興味を持った。


 ――それ以前に、アタシは守くんを見た瞬間から、説明のつけられないほどに強く惹かれた。


 あの衝撃は、今でも鮮明に思い出せる。

 今まで感じたことのない感覚だった。


 アタシはそれを『恋』だと確信した。


(アタシは何か間違ってるのかな……)


 自分の中に小さな疑問が芽生え始める――が、『……なんか、ごめん』という優子の声を聞いて、その芽は奥へ引っ込んだ。


『悩ますようなこと、このタイミングで言うべきじゃないわね。円は円の感じたままに進めばいい。明日のデート、頑張りなさい!』

「……っ! うん、ありがとう! アタシ、頑張るね!」


 優子の励ましに背中を押され、アタシはより明日のことが楽しみになった。


『じゃ、円は明日のためにもう寝ときなさい。寝不足の顔で転校生に会うわけにいかないでしょ』

「はーい。おやすみなさい、お母さん」

『お母さんいうな〜……ってね。おやすみ、円』


 優子との電話が終わり、アタシは背伸びをしてベッドに横になろうとしたとき、部屋の扉をノックする音が聞こえた。


「円、開けていい?」


 お母さんだ。アタシは「うん」と返事すると、お母さんは神妙な面持ちで部屋に入ってきた。


「ごめんなさい、円。聞く気はなかったんだけれど、デートするって聞こえちゃって」

「わっ、本当? もうっ、優子の声が大きいから!」

「円のうれしそうな話し声もしっかり聞こえてたけどね」

「うぅ……やだ、恥ずかしい……」


 お母さんは「ねぇ、もしかしてなんだけど」と腕を組みながらこう言ってくる。


「そのデートのお相手って……前話してた、守くんって子?」


 アタシは恥ずかしいながらも頷いた。お母さんは「……そう」と微笑みながらも、なんだか声音は少し暗いような感じがした。


「付き合い始めたの?」

「えっ! いや、全然だよ! ……デートって言ったけど、まだ、友達として遊びに行くってだけ」


 友達……っていうか、どちらかというとただの先輩、後輩の関係にまだ近いかもしれないけれど。


「そっか。……ちなみに、その子って同級生?」

「? ううん、一年の子だよ」


 お母さんの表情が翳る――ように見えた。


「そう……それで、名字はなんていうか、知ってる?」

「え、なんで?」


 アタシは思わずそう返してしまった。そこまでお母さんがアタシのデート相手に踏み込んでくるのが、不思議に思ってしまったから。


 お母さんもすぐにアタシと同じことを思ったのか、「……ごめんなさい、踏み込みすぎよね。お母さん、円が好きな人とか、デートするとか……そんな話聞くの初めてだから、気になっちゃって」と話した。


「お母さん、もしかして心配性? 大丈夫だよ、アタシは変な人と付き合ったりしない。もう高校生だよ、大人だよ」

「あら、そうかしら」

「そうですー」


 アタシは言い返すと、お母さんはクスクスと笑った。さっきまで少し暗い顔をしていたから、笑ってくれたことに安心する。


「もし上手くいったらさ、お母さんにも紹介してあげるね」

「……そうね、待ってるわ」


 お母さんは「入ってきて悪かったわ、じゃあ、おやすみ」と言い残して部屋を出ていった。


 アタシは部屋の電気を消して、ベッドに横になる。


 薄暗い部屋の天井を見上げながら、アタシは若干の違和感を感じていた。


(……お母さん、ひと言も『頑張れ』とか言ってくれなかったな)


 普段なら、アタシが新しいことに挑戦するときは必ず声を掛けてくれるのに。


 お母さんはどこか、アタシのデートに関して否定的なのかな。


(まあいっか。そんな些細なこと)


 アタシはそう思い直し、ゆっくりと目瞑り、やがて眠りに落ちた。

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