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電脳の生死  作者: 有為
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四話

なんか自分では信じられないペースで更新しているのですが……

これも冬休みの恩恵か

「はっ!」

「ぴぎゃあぁ」

 気色悪い蛇のモンスターを切り倒し、天井から襲いかかってくる蜘蛛の攻撃を避け、群がるコウモリのモンスターを叩きつけ、女性の天敵としか言いようのないダンジョンで、柳たちは休む間もなく武器を振るっていた。

「ちょっと敵が多すぎないかな」

 裕がうんざりといった様子で蜘蛛の足を切り落としている。

 気持ち悪いとかそういった感覚の薄い三人は、容赦なく敵を倒していくが、ちょっと異常な数の敵だ。

「本来もっと大人数で来るべきダンジョンだね、これ」

 体をしっかり動かしながらも、裕は何かと喋っている。柳とは正反対のタイプだ。

 柳は、道具を節約しているのもあって、普段のような勢いで敵を倒せていない。

「柳君、本気を出さないと、ちょっとやばいかもよ。安心するといい。船には店もあったから」

 そうは言っても、船の店で売っているアイテムは、柳が戦闘用に使っているアイテムとは全く違う種類のものである。とはいえ、このままではコウモリ共に食らわされるダメージが蓄積するばかりだ。柳は仕方ないと思い、腰のポーチに手を伸ばす。

 裕と和を巻き込まないように細心の注意を払って投げられた『ファイアーボム』は、飛び交うコウモリを大量に巻き込み、その先にいた蜘蛛の一群を焼き尽くした。

 流石に蜘蛛は一撃ではやられなかったが、コウモリは単体での実力は皆無なので、爆発に巻き込まれたコウモリはほぼ全て光となって消えた。

 さらに柳は呪文の詠唱を開始する。職業が魔法剣士である柳は、和のような強力な魔法は使えないものの、剣を使って戦闘しながら魔法を扱えるため、呪文詠唱の隙がない。さらに魔法剣士の呪文は、記憶していないと使えないためか、魔法使いの呪文よりは大分簡単なのだ。

「……ファイアーバリット」

 呪文の最後に技の名前を宣言。柳の左手から無数に放たれた炎の弾丸は、敵の数を一気に減らす。

 柳が本気を出し、さらに和も惜しみなく魔力を使って魔法を放ったので、ほどなくして敵は全滅した。

「……ふう、何とか勝てたか。二人とも、魔力はどのくらい残っている?」

 裕の問いかけに、二人はメニューを開いて自身のステータスを確認し、二人とも八割五分くらいだと答えた。

 柳がポーチにアイテムを補充している間に、裕は真剣な顔つきで考えていた。

「……このペースで消耗していけば、柳君のアイテムが真っ先になくなるか、あのコウモリモンスターさえいなければ、何とかなるんだけれど。明かりつけたら近寄ってこないとかないかな。後は体力の問題もあるか……。あの二人は僕よりは持つだろうけど、一回の戦闘で一割近くが減ってしまったな……。ヒーラーがいない以上、休息による回復しかないか。しかし回復するより早くリポップ(再出現)するよなぁ……」

 ブツブツと裕が呟いていると、ふと、近くに何かの気配を感じた。

「敵かっ!?」

 裕が振り返ると、そこには、少し大きめの眼鏡をかけて、ヒーラーの格好をした、人のよさそうな男が立っていた。彼からは、なぜか強烈なミントの香りが漂っている。

「何かお困りかな?」

 その男は、裕を見て、ゆったりと聞いてきた。まるでここがダンジョン内であることを忘れているかの如くゆったりとした口調に、裕はしばし呆然としてしまった。

「えっと……?」

「回復役が欲しいとか、コウモリをどうにかしてくれとか、何か助けて欲しいことはありませんか」

「いや、まさにその通り、コウモリにも困っているし回復役がいないのにも困っているのだが……」

「じゃあ、私をパーティに加えてくれますよね?」

「あ、ああ」

 珍しくペースを乱されている裕が、あとの二人に確認の視線を送ると、二人とも軽くうなずいた。

「で、回復役なのは分かるが、いったいどうやってここまで来たんだね」

「実はですね、私が調合生産したアイテムに自分の気配の隠蔽率をかなり高くできる物がありまして。それを使ったら、コウモリ以外の敵に一切攻撃されずに来れたんですよ」

「なんじゃそりゃ……、そんな反則じみたアイテムがあるのか」

 この世界では、かなり複雑な生産が存在する。実際、発明を生業としている人もいるくらい、無数の組み合わせによって無数の生産品が作れるようになっているのだ。それを可能としたのは、近年開発された、『人工知能による開発システム』。通称、『三次的生産システム』。高度に進化した人工知能が、人間の手を借りずに新たなソフトウエアを開発してゆく生産方法だ。これにより、人間には到底成し得ない速度でのソフトウエア開発と、ほとんどバグのない完全なソフトが生産されるようになった。この世界も、ある程度の指向を人間が与えただけで、後は全てこのシステムにのっとって作られた、考えられないほど複雑なプログラムによって造られた世界なのである。それにより、普通の人が発見していない生産品を持っていたりする人も、多々いるのである。この男もその一人だったということだろう。

「まあ、そうはいっても、コウモリみたいに超音波で敵の位置を探るようなやつにはあまり関係ないんですけどね」

「じゃあコウモリはどうしたんだ。ヒーラーが一人でここまで来れるとは思えないのだが」

「実はコウモリって、ミントの香りが苦手なんですよ。だからこの通り、ミントの葉をすり潰して携帯していれば、全く狙われないんですよ」

「つまり全く敵に狙われてないんじゃ……、ほとんど反則でしょう、それ」

「まぁ、この気配の隠蔽の薬は、作るのにもコストはかかるし、持続しないしで、もう残ってないんですけどね。あ、効果切れちゃいましたね。今」

「え……」

「ミントの方はけっこう残っているので安心してください」

「しかしじゃあなんでこんなところに、そんな高いアイテムを使ってまで来ているんだ。というかいったいどうやって帰るつもりだったんだ」

「ちょっと、珍しいモンスターがいたもので、観察していたのですが、ふとギルドマスターの声が聞こえた気がしまして、なんかギルドの掟に新ダンジョンの発見は云々といったものがあったかなぁと思いまして……、とっさに隠れたのは良かったのですがなんだか気になってしまって、後をつけていたらなんだか困っているようでしたので。といった具合です」

「所詮ギルドの掟なんか誰も守らないか……、と、僕が言えた義理じゃないね。とにかく、そのミントの葉が余っているのなら、分けてくれないかな。生憎とそんな物を持ち合わせていそうな人間は僕達の中にはいないのでね」

「いいですよ。ちなみにこれは船の売店で一枚五十円で売っていました」

「気がつかなかったな。というかそれを見てもコウモリ除けに使えるなんて思わないけどね、普通。ところで君の名前は?」

「私の名は(じん)と申します。あなたはマスターの小笠原裕(おがさわらゆう)さんですね。そちらはサブマスの黒澤和(くろさわやまと)さんに、えーと、あなたはもしや、『沈黙の柳』では?」

「……えっと、まあ、そうだけど」

 この『沈黙の柳』という呼称は、はっきり言ってほとんど知られていない。なんで姙が知っているのかは全くの謎だ。そもそもこの愛称は誰かが柳の戦い方を見て勝手につけて、そう呼んでいただけで、別に柳自身そんな有名人ではない、はずなのだが、無駄に雑学の知識が多い姙は、どうやってか知っていたらしい。

 姙を加えた彼ら一行は、その後はコウモリの断続的ダメージを受けずに済んだので、ほとんど一本道の通路を、けっこうなスピードで進むことができた。

 姙のレベルは決して高くはなかったが(レベルは二十五だった)、元々回復役であり、柳たちもそれほどでかいダメージは食らわなかったため、難なく進むことができた。

 順調に進むこと一時間ほど、延々と続いた一本道が、とうとう終わりを見せた。

「何だあの扉は」

 先頭を歩く裕が指差したのは、木造のこの道に似合わない大きな鉄の扉。それが二つ並んでいた。

「何か書いてありますね」

 なんだか視力の良い姙が、この薄暗い中で、扉に彫られているゴシック体の文字の存在に気がついた。

 近くに寄って見ると、右の扉にはこう書かれていた。

「推奨レベル三十五以上」

 左の扉には、こう書かれていた。

「覚悟せよ。(推奨レベル三十以上)」

「なんかさっぱりしすぎでは……」

「まあ、いいんじゃないですか、要は内容さえ伝われば……」

「まあ確かに、どんなにそれっぽく書いてあっても、少なくとも後ろの二人は気にも留めないだろうね……」

「どうしますか、安全に左に行って、多分いるであろうボスを倒して引き揚げるか、もっと奥を目指すか……」

「まあ、このメンバーならまだいけるだろう。奥に行こうか」

 裕が素早く決断して、柳達一行はさらに奥へと行くことになった。

 扉をくぐると、そこはまたもや一本道で、しかも雰囲気がさっきまでと全く同じだった。

「なんかこの辺の開発に全然力を入れていない気がするのですが……」

「そんなはずはないんですけどねぇ」

 同じような景色にうんざりしながらも、裕たちは油断なく進んでいく。

「ガラガラカラ……」

 なんか嫌な音がしたと思って目を凝らすと、ヒト型をしたしかしなんだか肉がほとんど付いていない、所謂骸骨が現れた。しかもその数の多いこと、柳達四人に対して、その五倍の二十匹はいるようだった。

「一気に難易度上がりましたね」

 裕はそう呟くと、敵の出方を伺った。

「あれは確かハイ・スケルトンだな。物理攻撃しか持たないが意外と強力だぞ」

 和が前を行く裕に注意を促す。

「破壊しても再生するんではなかったですか」

 姙が言った。

「一応再生じゃなくて、リポップ扱いになるみたいだけど、リポップ時間が五分だっけ、短すぎるから、全員ぎりぎり生きてる状態で留めておいて、最後に一気に潰すしかないはずだよ」

 裕が有効な対処手段を思い出しながら呟き、それがそのまま作戦となる。

「来るよ」

 裕が言ったのとほぼ同時に、ハイ・スケルトンが急に走り出した。

 体中の骨をガタガタいわせながら、襲いかかる化け物達に、臆することなく刀を振るう裕。幸い、通路が狭いので、一度に全員を相手しなくて済む。

 序盤こそ調節を誤り、数匹倒してしまい、後から体力満タンの敵が再出現してしまったりしたが、慣れてくると、四人がうまく連携して、体力の残り少ない敵の動きを封じたりしながら、四十分近くかけて、敵を弱らせた。

「よし、もういけるだろう。柳君、君は和をしばらく守ってくれ。和が一発で殲滅してくれるはずだ」

 裕の指示に無言で従い、柳は和を庇う様な位置に付けた。裕は敵を上手くおびき寄せたりして、時間稼ぎと、敵を一か所に集める作業を行った。

「……然らば地獄の業火よ、全てを飲み込まん」

 和が最後の句を詠唱すると、そのタイミングをしっかり分かっていた裕が、和の後ろまで退避した。

 「ごう」と、凄まじい音を立てて放たれた広範囲にそれなりのダメージを与える魔法、『ヘル・ファイア』は、骸骨の化け物を一匹残らず消し去った。

 五分が経過する前に、ハイ・スケルトンの索敵範囲から逃れようと、柳達は足早にその場を去った。

システムの説明とか分かりづらいですかね……

まあ、読み飛ばしても問題ないようなところですが。

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