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魔人 ゾンバル

「もう、駄目だ。フォルネが、たった一人で魔神軍に勝てるわけ無い…」


外に居た兵士や冒険者は、城が崩れていく様子を見て、ただ絶望するしか無かった。

今は、それしか出来なかった。



「うわぁァアッ!!」


だが、皆が絶望している中、一人の少年は立ち向かった。

たった1人で。

奴らに。


「ふむ、アリティムが言っていたのは奴か。今日はアリティムが居ないが…別に始末しても良いだろう。」


数は、50体くらい。

絶対に、全員倒すことは出来ない。

だけど、それでも俺はあいつらと戦う。


「いけ、我が下僕達よ。」


従えていた魔物が、フォルネに一斉に突撃する。


その瞬間とき、闇に包まれていた街に一筋の光が走った―――


炎帝レッドブレイクッ!!!!!!」


数体の魔物が、炎で焼き尽くされ、皆それを傍観していた。


まさか…リアム…‼


「フォルネだけ戦わせるわけにはいかない! だって、パーティメンバーでしょ?」


頼もしい仲間だ。


「くくく…面白いッ‼ 俺も本気を出させてもらう。」


先程魔物達に指揮をとっていた、腕が4本生えた魔物は俺達を見ながら、薄ら笑いを浮かべていた。


「弱い魔物なら、炎魔法で殺せる。問題はあいつよ。」

「あぁ、分かってる。多分、魔神軍の中でも相当強い方だ。」


予測するに、魔神軍の幹部あたりの魔物だ。

油断してかかると、本気まじで殺される。


「ガァアッ‼」


今の、何だ。

叫び…?


「フォルネ、魔物が沢山走ってきてる。どうするのよ!!」

「くっそ、今の叫びは、仲間を呼ぶためってことか…!」


流石に、数が多すぎる。

どうすれば…!


「フォルネさん達は、そいつに集中してください! 魔物共は我らガーヴァン兵団が食い止めます!!」


あれは、バルセル…!

頼りになる人だ。


「ケッ、面白くな。では、始めようか。」


二人ならいけるか…?


炎虎えんこ!!」


「掌神しょうじんはァ!」


リアムの杖から、炎の虎が出て、魔物を襲う。

魔物が手と手を衝突させ、波動を出す。


「うおぉおお!!!」


俺はその隙に背後に回り、背を斬る。

だが、4本の腕の内、2本が俺の腕をとめる。


やっぱり、コイツ強い。

アリティムには遠く及ばないが、それ以外の魔物よりかは確実に強い。


「中々、キレの良い動きだ。だが、貴様もそれまで…!!」


こんな近くで攻撃を受けたら、防御出来ねえ…!!


「おい! 姉ちゃんと勇者! 助けに来てやったぜェ!」


「あれ…ジュイム!」


「誰!?」


「命の恩人忘れんなッ!!」


命の恩人?

あ、リアムが言ってた裏ギルドの人!


「また邪魔者が一人増えた‼」


「邪魔なのは、あんただよッ‼」


ジュイムは、魔物におもいきり蹴りを入れたが、全く攻撃が通らない。


「ダイヤモンドかよッ‼」


ジュイムに気を取られて、魔物は俺に気づいてない。

今だ!


「なにィッ!??」


手を、一本斬り落とした!

今畳み掛ける。

一気に…!!


「フォルネ!!」


杖の先には、炎が溜まっている。

何をするか、俺には分かった。



「「炎帝斬り!!」」



少し前に、話した。

俺が合体技とかカッコよくねって。

リアムは、やったとしても、どちらともが相当の腕でないとできないと言っていた。

だけど今、成功した!!


「成功したぞ!!」


「やった!」


4本の内、既に三本が斬り落とされていた。


「ここまで…やるとは、面白い。」


天を見つめ、何かを呟いている。


「我が名は魔人 ゾンバル・バリアスキルオンブ」


長い名前だ。


「略して、魔人 ゾンバル・バスオ 今、ガーヴァンを壊滅し、勇者を殺す者。」


「勇者様は殺させねえぜ…」


ジュイムは、瓦礫の中から立ち上がり、ふらついた体で短剣を持った。


「それが、俺の任務ミッションだからな!!」


「まだ生きていたのか、しぶとい奴めッ!!」


ゾンバルには、腕一本あれば充分だった。

相当、戦えていた。


ジュイムって人…強い。

ゾンバルだって、相当の実力者。

そんな奴に、こんなやりあえるなんて…!


「私達も加勢しましょう!」


援護は、リアム。

主戦力は、俺とジュイム


3人もいれば、充分だ!


「小童共が!! 調子に乗るなァア!」


「速い! ジュイムさん!」


「くッそ! 俺だって早くこの攻撃から抜け出してぇよ!」


一本の腕でも、その腕一本に全ての力を込めれば、

その腕は強くなる。


「ウォオオオッ!!」


ジュイムさんの体制が崩れ、ゾンバルの攻撃が命中した。


ジュイムさんの、両足が…!!

俺が、俺が油断したから!


「俺のことは気にすんなァ!! 姉ちゃん! 治癒魔法は、かけなくて良いッ!! 戦いに集中しろォ!!」


「あぁ、五月蝿い五月蝿い。やはり、人間など蝿のような物だ。」


俺も攻撃を仕掛けようと、ゾンバルに剣を向ける。

その時、ゾンバルは腕の断面から、おかしなオーラを出した。


死炎しえん 流煙りゅうえん


「まさか…!! フォルネ! その煙から遠ざかって!」


だがもう遅い。

それを言われた時には、既に煙は俺の目の前まで来ていた。


「勇者よ、こんな技で死ぬとは滑稽だ。後の世に語り継がれるだろうな。」


「油断した。くっそ…!!」


「天空にでも逃げない限り、生存するのは不可能ッ!! だが、人間の脚力では煙が来ないところまで行くのは不可能!! やはり、死ね!」


いいことを聞いた。

ジャンプシューズは、やっぱり有能だ。

付けてて良かった。


特訓した成果がある。


ジャンプシューズで、空へ飛ぶ。


「なんだとッ!! ヒントを教えたのが不味かったッ!!」


「バーカ!! 敵に情報教えてどーすんだよ!」


俺は落下の勢いを、そのまま斬撃に生かす。


これなら、斬れる。


「うぉおおおお!!」


落下。

体制を間違えれば、肉片になる。


「止めるッ!!」


「フォルネの攻撃は止めさせない!! 物体停止スィンズ・ズ・タイム!!」


「クソッ!! 止められたァア!!」


ないす、リアム。


これで終わりだ。


「『天空斬り』ィイ!!」


「クソがァアッ‼ こんな小童どもにィイ!!」


俺の斬撃は、豆腐のようにゾンバルを斬った。

斬られたゾンバルは、少年のように縮み、倒れた。


「はぁ、はァ…倒したのか?」


リアムは駆け寄って来て、俺に抱きついた。


「倒した…倒したのよ。魔神軍を!」


「そうか…良かった。それより、ジュイムを…」


俺の意識は、そこで途絶えた。


――― ――― ―――




――――――――


―――



目を覚ますと、暗闇の中に俺は居た。


目を凝らして見ると、壁には一面中鬼の面が貼られている。


なんだ、ここ。

俺は、ゾンバルを倒したはず。

その後どうなった…?

また、意識が無い。


最近、意識が無くなることが多い。

何故なんだろう。


「おい、フォルネ。」


俺の声によく似た声が、近くから聞こえた。


「え?」


顔を上げると、そこには顔に変な模様がある人間がいた。


「やっと起きたか。お前が突然ここに来てから、だいぶ時間が経ったみたいだ。まあ、あっちではそんなに経っていないと思うが。」


誰だ。

こいつは。


「あぁ、分かってないのか。 俺の正体。 」


俺は唾を飲み、聞く。


「あんたは、誰なんだ。」


「俺は、お前の中に居る人格だ。」


人格…?

そいつってまさか、リアムが話していた…!


「お前、リアムが言っていたやつじゃないのか?」


「リアムってあの、魔法使いね。そうそう、変な模様とかいわれると傷付くぜ。」


やっぱり、ってことはここは精神世界?


「お前って、なんでここに居るんだ。」


「なんでって…俺も知らねぇよ。気づいたら俺の人格はこん中に入ってたんだ。」


「ふぅん。で、ここから出るためにはどうすればいい?」


「急だな。」


俺は、一刻も早くここを出ないと。

俺には、リアムが居る。

あいつを1人にさせるわけには…


「おえー、お前リアムって奴の事好きなのかよ。」


「はぁ? 別に好きじゃ…」


「俺はお前で、お前は俺だ。お前の考えてることだって、俺には分かる。」


「じゃあ、なんで俺はお前の考えてる事が分かんねぇんだよ。」


「お前は精神世界ココに慣れてないからな。まだ分かんねぇんだ。けど、お前は何回も来てるぜ?ここに。」


何を言っているんだ。

コイツは。

俺の記憶には、ココの記憶なんてないが。


「何度か、俺が表に出てきたことがあったろ。そん時だ。お前がココに来たのは。」


表に…ってことは、俺の意識が途絶えて、コイツが出て来た時のことか。


「ま、一瞬だったから忘れてるみたいだけど。それで、ここから出たいんだよな。お前。」


「当たり前だろ。俺は勇者だぞ。」


「ハッ、悪魔の名前を付けられた勇者なんて、どの時代にも存在するわけ無いだろ。」


「勇者は勇者だ。フォルネっていう悪魔の名前でも、俺は人を救える。」


「悪魔 フォルネがした罪を知ってんのか?

人類のおよそ半分を殺したんだ。 何百年もの間、世界を闇に包み、そして魔王を誕生させた。」


「そいつと俺に、名前以外なんの繋がりがあるってんだよ。」


「もし、お前が生まれ変わりだったらどうする?」


そう言って、コイツはニヤけた。


俺はコイツが嫌いだ。

本当に何なんだ。


「お、もうそろ目が覚めるみたいだ」


「えっ!?」


俺の体が、光に包まれてどこかに消えていっていた。


「俺の足が…ねぇ!」


「安心しろ。それは転送だ。目覚めるだけだ。」


「お前の言ってること、信用できねぇよ!」


「なら、信用しなくて良い。」


もう膝まで…!

どうなってんだ。これ!


俺の転送が、首まで来た時にコイツは言った。


「そうだ。言うの忘れてた。俺の名前は――――」




◆ ◆ ◆





「え…! フォルネ!」


「え? リアム…」


ここは、どこだろう。

周りを見ると、そこは病室のようだった。


「一週間、目が覚めなかったんだよ。」


「一週間…?」


何で、そんなに経っているんだ。


「とりあえず、起きて良かった…!」


「あぁ、ありがとう。」


少しずつ記憶がハッキリしてきた。

そうだ、俺は精神世界でアイツと会った。


リアムが言ってた顔に変な模様がある奴と。


「フォルネ‼」


ドアが、勢い良く開いた。

そこにいたのは。


「姉さん…!」


「フォルネ!」


姉さん。なんでここに。

それに、後ろにいるのは、パッチンか?


「フォルネェ!! 何死にかけてんだよ! 」


頭の整理が追いついてない。


えっと、ゾンバルと戦って、倒れて、アイツと会って。

それで、病院にいる。


「とりあえず、みんな落ち着いて。来てくれてありがとう。それで、俺に何があったの?」


リアムは、涙を拭い、話し始めた。


「フォルネは、あの戦いの後倒れたの。それで、急いで近くの街にある病院まで行って、そこでこう言われたの。


『フォルネさんは、魔神軍との接触で勇者としての才が覚醒しました。ですが、その影響でエネルギーが活性化しすぎたんです。』


って、言ってた。全く意味が分からなくて、もっと詳しく聞いたの。


『エネルギーってのは、普段は良いものなんです。ですが、エネルギーがあまりに活性化しすぎると、身体への負担がとんでもないことになります。元々その身体に入り切るエネルギーじゃなかったものを、無理やり詰め込んでいるんです。』


って…、簡単に言うと、元々身体に耐えられるエネルギー量以上のエネルギーを、大量に無理やり詰め込んだから、身体にがたが来たのよ。しかも、フォルネが勇者だから、活性化するエネルギー量も人より何倍も多いんだって。」


なるほど…

魔神軍との接触で、俺は覚醒したのか。


そんな気は全然しなかったけど。


「とりあえず、俺はもう大丈夫だよ。」


ベッドから立ち上がり、降りる。


訛っていた身体を、少し動かす。


「まあ、つまりそのエネルギーが俺の身体に適応したって事だろ? ならもう大丈夫だ。」


そう言うと、三人はため息をついたのだった。

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