ガーヴァン王
そういえば、ガーヴァン王国に来てからもう3日。
まだここの国の王様に、挨拶をしていなかった。
俺が勇者って事は、もう国中に広まっているようだ。
今日は、王様に挨拶でもしに行くか。
「フォルネ、どうしたの?」
リアムは、先日買った魔法の帽子を被っている。
まだ、サイズが合わないのか顔が少し隠れている。
この状態だと、幼く見える。
「あー、王様に挨拶でもしに行こうと思ってさ」
「そうなの? なら私もついて行く!」
俺が、ガッツという男に攫われて、死にかけた時から、リアムの態度が変わった。
前までは、結構冷たい話し方をするイメージだったけど、今はずっとこのテンションだ。
なぜなのだろう。
「あ、その剣どう?」
俺の身につけているこの剣は、リアムが早めの誕生日プレゼントとして買ってくれた物だ。
斬れ味も、元の剣よりいいし、振りやすい。
リアムには感謝してもしきれないな。
「めちゃくちゃ良いよ、前の剣より100倍はいい」
「そ! よかった!」
なんか、俺の頭がおかしくなったのかもしれないが、最近リアムが可愛く見えてくる。
よくよく考えると、リアムは顔がとてもいい。
リアムは、紫色の髪が特徴的で、街を歩いていても目立つ。
しかも、いつも隣りに居るのが黒髪だから余計目立つ。
「じゃー行こ!」
この国には、しばらく滞在しようと思う。
国自体が広いので、魔神軍の情報なども結構入ってきてありがたい。
「王様って、あの1番デカイ城にいるんだよな…」
とりあえず、門番に勇者であることを伝えよう。
「あの、すみません。勇者です」
「……?」
「あの、すみません。勇者で――」
「いや、聞いてますよ。というか急に私、勇者です。なんて人が来ても理解できませんよ」
ま、それもそうか。
俺も、あっちの立場だとそうなる。
「あ、あなたは!!!」
「はい?」
門番の内、1人がリアムの方を見て騒いでいる。
「リアム、知り合い?」
「いや、知らない人だと思う」
「そっか。」
「いやいや! 覚えてないですか? 見張りのバルセルですよ!」
やっぱり、知り合いなのか。
にしても、見張りのバルセルって二つ名ダサくないか?
「うーん…あ、そういえば、ガーヴァンに入った時に居たかも」
「そうそう! そのバルセルですよ!」
「とりあえず、王様に確認してきます。お名前、お伺いしてもよろしいですか?」
「あ、フォルネ・ラリバーです」
「分かりました。少しお待ちください」
勇者証明書みたいの持ってないけど、大丈夫なのか。
どうしよう、証明してくださいとか言われたら。
証明できるもの何もないんだけどな。
「確認がとれました。どうぞお入りください」
中は、とても広かった。
多くの扉に、長く続く廊下、デカイ扉がいくつもあった。
「では、ついてきてください」
こんなに部屋があって、意味があるのか?
別に、使わないとおもうんだけど。
「ここの魔法陣を踏めば、王のところまで一気にテレポート出来ます。この事は内密に…」
「あ、分かりました」
魔法陣を踏んだ瞬間、周りが光に包まれて、数秒後には玉座の間に到着していた。
「ガーヴァン王、こちら、勇者のフォルネ・ラリバー様でございます」
うわぁ、緊張するな。
王様と会ったことなんて、全然無いからどんなふうに接すれば良いのか分かんねえ…
「あ、フォルネ・ラリバーです。今日は、ありがとうございます」
「私はリアム・パリアです。フォルネのパーティメンバーやってます」
てか、玉座の間ってデケぇ。
将来こんなとこに住んでみたい。
「そんなにかしこまらなくてもいいですよ。ラリバー君、パリア君。今日は来てくれて、感謝します。それで、なんの御用ですか?」
意外と優しい人だ。
もっと高圧的で上から目線な人を想像してた。
「あの、しばらくこの国に滞在させてもらおうと思ってまして、ならば挨拶ぐらいはしておこうと思って…」
「そうかそうか。そうだ、バルセル、アリムセ、二人に茶と椅子を用意してあげなさい」
うわぁ、本当にいい人だ。
顔から優しさが溢れ出てるもん。
「あ、自己紹介が遅れたね。私は ザッツ・G・ガーヴァンです」
「うん。君達ならきっと魔神軍を倒してくれるよ」
その後も、いくつかの話をして、もう去ることにした。
「今日は、ありがとうございました。ガーヴァンさん」
「いやいや、私みたいな老いぼれの相手をしてくれて、ありがとうね」
「全然お若いですよ!」
ガーヴァン王は、とても良い人だった。
けど、国民の命が危ない時には、感情的になって行動することもあるらしい。
あんな良い人が国王だから、こんないい国になるのか。
ここも、姉さんときたいな。
「はー、緊張した…」
「俺も、最初は緊張したけど慣れてけば大丈夫だったよ」
「そう? 頑張ってみる!」
もう、リアムは15歳だ。
お酒が飲める歳。
リアムはその少し前から、飲んでいたようだけど。
俺も、あと3日で13歳だ。
少し俺も飲んだけど、次からは絶対飲まないようにしよう。
2年後までのお楽しみってことで。
「じゃあ、今日もやりますか」
俺は、人が少なくなる夜。俺はある事を行っている。
別に変なことじゃないからな。
まず、動きやすい格好になって外に出る。
「うし、まずは走る!」
修業だ。
身体を成長させるために、修業をする。
修業といっても、我流なので、本当に効果があるかは分からない。
まず、宿から城までを何十周もする。
これだけで、結構キツイ。
その後、剣の素振りをする。
素振りが終わったら、剣だけで外にいる魔物と戦う。
周辺の魔物を狩り終わったら、宿に戻って腕立て伏せや腹筋をする。
これを何日か続けていれば、いつかは強くなれるはずだ…!
◆ ◆ ◆
「だから無茶はしすぎないでねって言ったじゃん!」
「あぁ、ごめんごめん」
情けない。
この程度のトレーニングで…筋肉痛で動けなくなるとは。
「まあ良いけど! じゃあ今日は何する?」
「今日は…」
「あ、とりあえず、ご飯作るね!」
最近、料理もリアムが作ってくれるようになった。
リアムは、結構料理が上手くて美味しい。
俺が一回作った事があったけど、悲惨な事になった。
料理の修業もしないとな…
「そういえばさ、フォルネって結構大人びてない? 私がそんくらいの歳の時は、もっとはしゃいでたよ」
「ん? そう、なのか?」
「うん。そうだよ」
言われたこと無かったな。
でも13歳くらいの人って、こんぐらいのテンションの人多い気がするんだけどな。
「リアムが子供っぽすぎただけじゃない?」
「あ、それもそうかも」
リアムは、くすっと笑った。
この笑顔は、物凄く可愛い。
でも、可愛いとは思うけど、恋愛対象にはならない気もする。
「はい、出来たよ!」
◆ ◆ ◆
「任務ぅ…?」
リアムは、任務を受けることにあまり肯定的ではないみたいだ。
でも、この3日間1度も任務を受けていない。
お金にはまだ余裕があるが、いつ無くなるか分からない。しっかりと貯めておこう。
「おっす、今日は任務すか?勇者さん」
あれ、ギルドの受付の人がいつもと違う。
「いつもの受付の人は休みですか?」
「まあ、そんなとこっすね。で、どのくらいの難易度の任務でいきます?」
「私は中級者用の任務がいい、そっちのほうがお金稼げるし」
中級者用か。
今までは初心者用の任務ばかり続けていたが、もう任務にも慣れてきたし、そろそろ中級者用の任務を受けてもいいか。
もし無理そうなら、途中で撤退すればいい。
「中級者用っすね。りょーかいです。その席で待っててください」
ガーヴァン王国のギルドは、ハリム村の10倍くらい大きいし、任務の数も多い。
でも、その分競争率も高い。
簡単で高額な任務は、すぐに誰かに取られてしまう。
基本的に、俺らは余った任務ばかり受ける。
「任務が終わったら、今日は酒場に行きましょ!」
「別にいいけど、飲みすぎないでくれよ」
「分かってる分かってる!」
この返事はわかってない時の言い方だ。
確実に明日は任務受けられないな。
「うーす、勇者パーティのお二方。中級者用だと、これだけありますね」
結構あるな。
まあまあ強い奴がいいな、弱い奴だと鍛えられない。
「じゃ、これで」
「りょーかいでーす。じゃ、確認しますね」
「えー、巨大ゴブリンの討伐 報酬50銅 で間違いないっすか?」
「大丈夫です。お願いします」
巨大ゴブリンか。
どんな強さなんだろう。
巨大って言われてるんだから、相当デカいんだろうな。
少し、楽しみになってきてる。
まるで俺が、戦闘狂みたいだが、実際そうなのかもしれない。
国の周辺にいる魔物を討伐してる時、たまに強い魔物が沸くときがある。
その時、自分は戦いを楽しんでた。
少し、自分が怖い。
「じゃ、24時間後までに、戻ってきてくださーい。」
「ふんふふーん。 ゴブリン♪ ゴブリン♪ 倒してやるぞ♪」
「何?その歌。」
「ゴブリンの歌、オリジナルだよ。」
なんか今日は、リアムのテンションが高いな。
何かあるんだろうか。
まあ、俺には関係のないことだけど。
「じゃ! ゴブリン退治! レッツゴー!!」
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