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どれだけ傷を負っても

すでに、村から出てすでに30分がたっていた。


「てか、魔神軍にもうバレちゃったわね。あんたが勇者ってこと…」

ああ、そういえばそうだな。

もう名前も顔もバレたし、常に魔神軍を警戒する必要がありそうだ。


「でも、リアムの情報も向こうは持ってたみたいだな。お前も勇者のパーティメンバーとして有名なんじゃねぇのか?」


「それは困る」

「ま、地道に知名度上げてくよりかは、勇者として一気に知名度上げたほうがいいだろ」

「なんで魔神軍側からの知名度を上げようとしてるのよ」

「あ、そっか」


魔神軍以外にも、マルクのように誰かから依頼を受けて来た奴にも警戒が必要だ。

結局マルクは俺を倒せていないわけだから、任務は失敗なわけだ。なら、マルクの変わりに同じ依頼を受けた奴がいるかもしれない

これからは、その二つに気をつけよう


この近くだと、ガーヴァン王国が1番大きい。

そこに行けば、マルクのことも何かしらわかるかもしれない。ついでに、アリティムに折られた剣の代わりを買わなければならない。

勇者なのに、剣を持ってないってのもなんか変だし。


「そういえば、私もうすぐ誕生日かも」

なんだって!?

誕生日ってことは、プレゼントあげないとな。

でもプレゼントとしてあげれるものなんて、俺持ってないし…


「フォルネは、誕生日いつなのよ?」

俺…俺は、いつだっけ。

「うーん、確か1週間後とかだと思うけど」

「まじ? あんたも誕生日近いじゃん」

たしかにそうだな。

もうすぐ誕生日か。

毎年、姉さんから手作りの何かを貰ってたけど、今年のプレゼントは無しか


姉さんに会いたい…


「てか、頑なにリアムは年齢教えてくれないよな」

「教えるわけ無いでしょ。あ、じゃあ予想言ってみて、当たってたら教えてあげる」

「じゃあ、20!」

「もう少し下」

「19?」

「1つずつ下げてかないで、あと一回間違ったら終わりね」


まあ、流石に俺と同い年は無いよな。

俺のことガキ呼ばわりしてたし、俺より結構上なはず。

うーん、17とか? でも17にしては背が小さいよな。

姉さんが16で、リアムよりも結構背、大きいから、15とかか…?


「15歳!」

「ぶぶー、14でした」

「って、結局教えてくれんのかよ」


14か。

14…

俺と2歳しか変わんねぇじゃねえか。


「俺と2歳しか変わんないのにガキ呼ばわりすんなよ」

「へへ、ごめんごめん。最初は10歳とかかと思ってた」

「それ、バカにしてるよな」


ま、いっか

別にガキって言われても。

でもリアムと俺、身長あんま変わらないんだよな。


その後も、他愛のない話をしながら、ガーヴァンへと向かった。


「もう、すっかり夜ね」

「今夜は野宿だな…」

「じゃあ、魔物に襲われないようにフォルネが見張っててね。」

「俺寝れないじゃん…」


テントを張って、俺が見張る。

交代とかはない。

夜から朝まで俺1人だ。

成長期なんだから沢山寝ないと駄目だろ。


「ねぇ、フォルネ」


テントから、リアムが出て来た。


「あんたも、寝ていいわよ。炎の結界でここ守っとくし」

そうか。

リアムには炎の踊り(ファイアカーニバル)があるんだった。


「じゃ、俺も寝させてもらいます」

「はーい」


テントは結構狭かったけど、二人寝るには充分な大きさだった。


「フォルネ。あんたは魔神軍を、倒したいのよね」

「あぁ、そうだよ」

「でも、あんなのに本当に勝てると思うの?」


あんなの。

アリティムのことか。

アリティムがあんなに強いんだ。

他の奴らも相当強いんだろう。


その事を考えると、俺とリアムの二人で、魔神軍を倒せるわけ無い。

なら、どうする。

俺達二人が、めちゃくちゃ強くなれば良い。

だけど、俺達の存在が魔神軍にバレてる以上、そんなに多くの時間は残されてない。

とすると、強力な仲間が必要になるだろう。


「倒すとしたら、強い仲間が必要だな。どう頑張っても二人じゃ限界がある」

「そう…ね、私達ではアリティム含め、魔神軍を全て倒すのは難しいわね。ガーヴァンで、強力な仲間でも見つけましょう」

「あぁ、俺はもう寝るよ。おやすみ、リアム」

「おやすみ」


――――――


「んー、おはよう、フォルネ」

朝は嫌いだ。

頭が痛いし、ボーッとする。


フォルネの返事が無い。

横を見ると、フォルネが居ない。


「フォルネ⁉ どこに…」


何故だ。

なぜだろう。

私が寝る前は居た。


となると、寝たあとか。

攫われたのか、この間フォルネが言っていた。

マルクという男に殺されかけた、と。


もしかしたら、そいつの仲間に攫われてしまったのか。

それとも、魔神軍か。


でも、結界はしっかり張っていたはずだ。

結界を破られた…? 炎の踊りは、強力な結界だ。

それを破ることが出来るとなると、やっぱり魔神軍の連中か。


「どこ、フォルネ! 本当に居ないの!?」


声を荒げる。

返答はない。

また一人になるのか。

やっと、仲良くなれたのに。


杖を持ち、テントの外へすぐに出る。

フォルネには剣が無かった。

対抗する術が無かったんだ。


「フォルネ! どこなの…! 勝手に居なくならないでよ…」


地に涙が落ちる。

私の魔法が未熟だったからだ。

未熟だったから、フォルネは攫われた。

もう、死んでいるかもしれない。


諦めちゃ駄目だ。

まだ、生きているかもしれないんだ。

フォルネを、私が助けるんだ。

パーティメンバーとして、私が助けるんだ。


とりあえず、痕跡を探そう。

少しでも、フォルネがそこに居たという痕跡があるはずだ。


「あった…!」


そこに痕跡はあった。

何かが争ったあとがあった。


フォルネはやはり、攫われた。

それが魔神軍か、他の奴らかは分からないけど。

方向的に、ガーヴァンがある方だ。


痕跡を辿っても、やっぱりガーヴァンに向かっているようだ。


フォルネの鞄を持って、走ってガーヴァンに向かう。

何かを引きずっている跡、それを辿るんだ。

そしたら必ず、フォルネに会える。

また、冒険出来る。


息が、荒くなる。

だが、走るのは、辞めない


途中で転んで、怪我をしても、足は止めない。


走れ、自分の限界まで、走れ。

血反吐を吐いてもいい、足が血だらけになってもいい。


走れ、走るんだ!


最後の一歩を踏み出したあと、何かの門をくぐった。


「ここ…は」


着いた。

ガーヴァンに、やっと着いた。

治癒魔法を自分に受けさせて、回復する。


「大丈夫でしょうか?あ、私はガーヴァンの国、見張りのバルセルといいます」

「はぁ、はぁ、大丈夫です。ありがとう、バルセルさん。今急いでるから」

「ああ、そうですか。では、ガーヴァンへようこそ」

「じゃあ、急いでるので…」


また走り、ギルドに向かう。

居るとしたらそこだ。

魔神軍なら、ガーヴァンまでは入ってこれない。

だとすると、マルクというやつのように、任務で来たやつだろう。


ギルド、ギルド。

あった。


「すみません!」

ドアを開けると、ギルドに居た人たちはみんな唖然としていた。


「はい…なんの御用で?」

「あの、ここにフォルネって人居ますか?」

「フォルネ? フォルネって方は、居りますでしょうかー!!!」

「いえ、任務か何かでフォルネって人についての依頼がありませんでしたか?」


ギルドの人は、ほとんどが何のことか分かっていなかったようだが、その内の1人が反応した。


「まじかよ、姉ちゃんその事知ってんのか」

「何か、ご存知なんですか?」


「あぁ、ちょっと外で話そうぜ」


その男は、ジュイムと名乗った。


「この街には、裏ギルドってのがあるんだ。裏ギルドでは、普通のギルドじゃできないことが任務として出されてる」


「例えば、どうゆうのですか?」


「誰かの暗殺とか、薬の取引の手伝いとかだ。危険な任務が多い分、報酬の金も多い。自分の腕とかに自信があるやつがよく受けるんだ」


「それで、実は俺も裏ギルドによく通っていてな。そこで 勇者フォルネの殺害 または誘拐 って任務があったんだよ。流石に信じられなかったんで、俺は受けなかったけど。変わりに、裏ギルドじゃ有名なマルクっていう奴が任務受けたんだけどな」


マルクって…


「ま、マルクは任務失敗。その後もその任務は残ってた。それで一昨日に、新しい奴が任務受けたんだよ」


「その奴ってのは?」

「そりゃ、姉ちゃん、これ、払ってもらわなきゃな」


ジュイムは、指をお金の形にした。


「はあ、これでどう?」


「30銀。太っ腹だねぇ。それで、依頼を受けたのは ガッツ・ウォルターって奴さ。暗殺や誘拐に長けていてね。寝込みを襲って、誘拐したらしい。確か、もうすぐギルドに渡しに行くって言ってたな」


「なら、フォルネはまだ…!」

「生きてるってことだ。まだ間に合うぜ。30銀も払ってくれたんだ。裏ギルドの場所は、サービスしてやるぜ?」

ジュイムはキリッと歯を見せて、さっき渡した金を見せつけてきた。


――


「ここが裏ギルド。俺の連れってことにしとく、感謝しろよ?」

「ありがとう。ジュイム」

「おうよ」


ドアを開けると、そこには色々な者が居た。


比較的、意思疎通の出来る魔物や、体格の良い柄の悪い男。

普通のギルドには居ないような奴が、沢山いた。


「おい、なんだよ。てめぇの連れか? ジュイム」

「あぁ、そんなとこだ。それより、この姉ちゃんから裏ギルドの主であるあんたに話があるってよ」


「なるほどね? じゃあ、任務を取り下げて欲しいわけだ。けど、もう依頼に行った人がいるしね…」

「なら、お金は払う」


前にあった、大型の緊急任務でお金を貰った。

一応追い払ってくれたからって。

30金を三分割して、貰った。


「ほぉ?いくらだよ?」


「10金」


「マジか。そんなの、ギルドの任務でもなかなかねぇぞ。まあ、10金なら、アイツも納得するかもな」


「じゃあ待ってろよ。アイツが来たら知らせる」


―――


「お、ガッツ。そいつは?」


「ん?こいつが勇者フォルネって奴だよ。暴れてたから、睡眠薬を撃った。俺は対人戦闘が苦手だからな。暴れられると困んだ」


来た。

アイツが、フォルネを…攫った。


私は、怒りで魔法を撃った。


「『炎帝レッドブレイク』!」


ガッツの頭部に、炎帝が直撃する。

この技は、弾丸のように炎を飛ばし、その後全身を焼き尽くす。という恐ろしい技だ。


「おいおいマジか、あの女、おもしれぇ奴じゃねぇか。おい、あんた。金はガッツに払わなくていいぜ。この勇者持ってきな」


店主はフォルネを私の方へ投げ、私はキャッチする。


「よかった…」


「おいおい、ガッツ、ここは裏ギルドだ。あんたに恨み持ってる奴なんか沢山居るんだからな?気をつけろよ」

「ち…くしょ…」

「あ、死んだ。おーい、こいつ死んだぞ」


良かった。

良かった…

涙が、フォルネに零れ、落ちる。


とりあえず宿を、取ろう。

そして、今日は1日中隣にいてあげよう。

とても、不安だった。


――――


「あ…?」

目が覚めると、宿にいた。

「え、なんで」

隣には、リアムが居た。

「はぁ…?どうゆう」


俺は思い出した。

あの夜の出来事を。

そうだ。俺は、俺はアイツに襲われて。


もしかして、リアムが助けてくれたのか…?


窓の外を覗くと、ここは街だった。いや、ガーヴァンだった。


リアムは、俺を救うために、ここまで来たのか?


リアムの体には、まだ完全に癒えていない傷があった。

俺を、助けるために、こんなに傷を…

そう考えると、涙が出てきて、リアムを抱きしめたくなった。

「ありがとう。ありがとう、リアム」

「ん…起きたんだ。全然いいよ。てか、元気じゃん」


―――


翌日


「もー大変だったからね。フォルネを助けるためにどんだけ走ったと思ってんのよ」


「ごめんって、今日誕生日なんだろ?なんか欲しい物買ってやるよ。」


「んー、じゃあ魔法の帽子とか!」


「え、邪魔だから要らないんじゃなかったのかよ?」


「この間のは嘘、実はめちゃくちゃ欲しかった。」


「なんだそれ!」


「じゃあ買いに行きましょ、できるだけいいやつね!」


「分かった分かった。じゃあ1番いいやつ買ってやる」


「やった!」

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