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覚悟





今使える戦力は俺とガッケルだけか。

しかもガッケルはいま回復中で、俺しか動けない。

ハサドとガストルは後方支援係だ……!


属性変化は進化した。

ただの炎じゃなくなったんだ。

けど、急になぜこんなことになったんだ、属性変化は元々鬼神の力だから、俺はあんま原理とかは理解してないけど……もしかしたら近づいてんのかもしんない。

鬼神が使ってた頃の威力に……


「来いよ……! 獣ども」


身体と剣の一体化、そして魔力循環。

【虎脚の如く】での速度上昇。


1人じゃこの数を殲滅するのは不可能だ。

それが2人に増えて、勝てるかどうかは分からない。

だけど、1人より2人だ。


数の暴力には、数をなるべく多くして対応する必要がある。


剣を絶対に落とすな、力強く握りしめろ。


魔物と言っても、雑魚ばかりだ。

知能もないような奴らばっかだからやりやすい。


前傾姿勢になりながら走る。

砂埃が酷くて、視界が霞んでいるがそんなのは許容範囲だ。

走りながら剣を横に立て、魔物の腹を切り裂いていく。

唸り声が酷い。

耳に残る音だ。


後方から数体、切り損ねた奴らが走ってきているな。

前方には大量の魔物、となれば後ろを潰すのが良いだろうが、それだと前方の魔物に対応しきれない。


なら……!!!


脚力増加靴ジャンプシューズ と風魔法の組み合わせで、上空まで一気に飛ぶしかない。


フォルネは思い切り地面を蹴って、一瞬にして空高く飛んでいった。

ここから落ちるまでの間、剣に魔法を込める。

落下した時、込めた魔法が発動し周囲に攻撃を加えることができるはずだ。


「【水潜爆発ダイヴァーエクスペンス】……! っ」



風圧が、魔法を込めるのを邪魔する。

ただ落下しているだけなら、こんなに風は強くならないはずだ。

この高さだったら、多少顔の皮膚や髪が揺らいで集中力が削がれる程度。


なら、この風の正体はなんだ……?


視線を足元に寄せると、魔物の中に1人、気配が違う者が居た。


その顔に、見覚えがあった。


リアムが死んだあと、俺は自暴自棄になって勇者としての心を忘れていた時期があった。

ただ、八つ当たりで魔物を殺す。


そんな時、ドーンを助けるために向かった洞窟の中で出会った1人の少年がいた。

姿は少年だったが、今思うとエルフかなにかだったんだと思う。

あのとき、奴は転移魔法陣で逃げて行った。  


 シグマは倒したのに、大元であろうそいつだけは倒せなかった。

 そんな奴が、なぜ今ここに来ている?


 フォルネは、自分がいま落下しているにも関わらず考え事をしていた―――



「あのガキ……! 何してやがる。さっさと下の奴らやんねぇとどんどん出てくんぞ」


ガストルは城に設営された防衛拠点で砲弾の準備をしていた。

だが、弾は3発のみ、以前の混乱でほとんどを使い切ってしまったのだ。


ガストルの目線は、空にいるフォルネに向いた。


「かましてくれよ、クソガキ」



落下 冷たい風が口に一気に雪崩込む。

口を閉じて、集中力を高めろ。


着地の瞬間に、魔力を解放するんだ……!


「【属性変化 灼焔】それと『水潜爆発』の力をくらえぇええ!!!」


単純なことだ。属性変化の高みである灼焔と上級魔法である水潜爆発。2つが掛け合わされば威力は確実に


高くなる。




フォルネの足に、落下の衝撃が

奔った。


ピリッとくる痛みと同時にフォルネは叫んだ。



「天空ゥ斬りィ!!! 改ッ!!!」





フォルネが剣を振るい、地面に突き刺した。


その瞬間、剣に纏わりついていた水が一つの球体となった。球体の内部にある赤い光が、淡く輝いて―――


そして、爆発した。


それと同時に、豪炎の斬撃が周辺一帯を切り裂き燃やした。


炎の刃が、魔物の肉を焼き切りながら跡形もなく消し炭にする。

超上位の炎の力の前には、魔物達はなすすべもなく

朽ちた。



爆発の余波が未だに残って、耳鳴が酷い。

頭をキーンと突き刺して、両耳に響く嫌な音が気分を不快にさせた。

目を開けると、そこに広がっていたのは炭だ。

全て、元は魔物だった。


だが、たった一つ。

その炭の中に氷の球体が転がっていた。


炭の中にあるからか、とても目立つ。


「…………? なんだこれ」


手を、伸ばした。


「ガキ……! そいつに触れるんじゃねェ!」

城の方から、ガストルの怒号が鳴り響いた。

そっちに注意を向けたのが、運の尽きだった。


氷球が割れたのだ。


それも、ものすごい勢いで。

破片となった氷が、フォルネの身体を突き刺す。

血が、滲む。

じんわりと、負傷箇所が温かくなるのを感じる。

だが、すぐに冷たくなった。


氷の影響で血液が凍ったのだ。


「……ッそ! 発射ァ!」


大きな音と共に、砲弾が発射された―――

砲弾は、推進力を増して地面へと飛ぶ。


「ガストル……! てめぇ!」

「仕方ねぇだろうが! 俺までやられたら終わりなんだよ!!」


やばい、いくら砲弾と言っても生身の状態なら重症は免れない……それどころか、死んじまう可能性だってある。

避けることはできない、守りを固めないと―――


そう思ったとき、砲弾はもう目の前にあった。


反応が……遅れた。




いや、遅れたのはおれじゃない。

『弾』の方だ。

砲弾が一瞬にして冷却され、推進力を落とした。


見えていなかった、氷球の中身に〝なにか〟が入っていたことに。


氷球の中にいたのは、一人の少年であった。

それは、明らかに『エルフ』だ。


ザーノが、いたのだ。



 

「やあ、お久しぶりかな。まあエルフからすればこんな期間久しいどころか1時間前くらいのことに感じるんだけどね」

「お前は……」


空中から見たとき、まさかとは思ったが

コイツは確か、ガッサン大洞窟の……!

なら―――


「ドーンさんを……どこにやった!」


横腹から、血が滲む。

だんだんと痛みが引いて、傷口は閉じた。


「あぁ、彼ね、それは言えないよー。機密情報だし」

「言わせてみせるよ……どんな手使ってもな!」


地面に落ちていた剣を手に取り、しっかり握りしめる。

ドーン・ボレス。ザリバーム帝国の騎士であり、あの状況の国で唯一魔神軍に逆らった勇気ある人だ。

そんな彼が、突然魔神軍の手によって誘拐された。

それがどんな理由なのかがわからないまま、月日は流れた。


だが今、ドーンさんの行方や誘拐の理由が分かりそうだ。幸いなことに、ここに来ているのはコイツと他の魔物だけ……魔物に関しては、知性があると多少厄介だが通常の奴らに関しては属性変化or魔法で掃討することができる。


なら、俺が今集中すべきなのはこのエルフだ。


「ザーノだよ、さっきからコイツやらエルフやら、しっかり名前を呼んでほしいもんだねー? フォルネ・ラリバーくん」

「な……! なんで」

「僕はさ、結構エルフ族の中でも優秀な方だったから色んな技術習得させられたんだよね。まー、吸収が早かったからさ、その中にテレパシー的なのもあったから人の心読めるってわけ」


なら、心のなかで考えてることは全部お見通しかよ。

こんなの不利すぎる。

作戦だって、全部筒抜けになっちまうじゃねぇか!


「うん、だからあんま心の中で考え事しないほうがいいよ。どうせ僕に聞こえるし」

ザーノは人差し指を耳に指してにこっと笑った。


「そうか、ならもう何も考えねーよ。身体のいきたいように行かせる。そんでお前を倒す」


構えろ、呼吸を整えろ。

傷は治った、魔力も廻ってる。

準備は万端だろ。


「いけるね」

「あぁ」


フォルネが一歩速く、踏み出した。

【虎脚の如く】の効果はまだ切れていない。


考え無しとは言っても、それは意識の話。

身体に意識は存在しないが、これまでの経験は蓄積されている。


速度に任せた初撃、剣は魔力で強化されたのみ。

だがこの初撃で、この後の戦況が変わる。


フォルネは速度を上昇させ、脚力増加靴の効果も相まって前方へ素早く飛んだ。

向かい風を受けるが、減速することなく、フォルネは到達した。

ザーノが動き出すより先に、ザーノの目の前に―――


ザーノの頭部のあたりに、剣を構えたフォルネがいた。

その目は、針のように鋭かった。


斬るというより、叩きつけるように剣を振るう。

反応が遅れたザーノの肩に、その剣が当たる。


フォルネは剣を肩に置き去りにして、ザーノの背後に回った。

そして、至近距離での魔法。


「【岩剣矢(ロックソードアロー)】」


接近して放たれた岩の剣は、生成された瞬間にザーノの腹を突き刺した。

そして矢のように発射され、岩剣が刺さっているザーノの肉体も同時に引っ張られて前方に吹き飛んだ。


「中々、やるじゃないか……!」


空中でザーノが方向を転換させ、視界にフォルネが入るようにする。

両手を前に突き出して、自身も飛ばされながら魔法を飛ばした。


「はぁっ! 【雷電(サンダーボルト)】」


青色の雷がバチバチと音を立てて、黄金色の雷弾の周りを回る。

パチっと、これまでと違う音が鳴った瞬間に

雷弾が発射された。


ザーノはフォルネの攻撃によって、勢いを増し、飛びながら魔法を放った。

その影響か、通常よりも雷弾の速度は速く

避けるのが困難な程になった―――


「ッじか!」


フォルネが防御を図ろうとするが、反応に遅れたせいで間に合わない。

閃光のような雷が、身体を焦がして貫通した。


黒い煙が昇り、うっすらとフォルネの影をうつす。

煙が晴れていく、と思えばフォルネの影が消えた。


煙のせいで視界が悪くなり、現在地を把握するのを怠っていたせいだ。


だが、ザーノには魔力探知がある。

魔力を探れば、目で見えなくとも位置を把握できるのだ。


目を閉じて、魔力を視る。

暗い視界に浮かぶ、炎のようなもの。

これが魔力の形だ。


その〝位置〟は、ザーノから見て左上前方。

そこに一つ、魔力が存在している。


目を見開き、視線を魔力の方へ向ける。


「僕の手から逃れる事はできないんだよ―――勇者フォルネ!」

だが、そこにフォルネはいなかった。

そこにあったのは、炎の玉だけだ。

明るく燃える、炎球。


「え……?」


さっきの魔力の正体は、まさか……

ザーノが気付いた頃には、既に遅かった。

フォルネが、ザーノの腹のあたりに居た。


『馬鹿かよ、アホエルフ』


心の、声……!?

フォルネがザーノの肩から剣を引き抜く。


「ふざけるなよ! 僕を舐めやがって」

血管が蒸発するほどの怒りで、全身に稲妻が奔る。

自分を舐め腐るガキに対して、ザーノは憤りを感じていた。


「―――【雷罠エレクトラップ】!」

ピリッと、地面に電流が流れる。


「そんなのくらうわけねーだろ」


テレパシーが、何度も何度もザーノの脳内に響く。

それが、蝿のような鬱陶しさを感じさせる。


いや、テレパシーじゃ、ない。


フォルネが腰に剣を構え、ザーノを睨みつけて属性変化を発動させる。


「【属性変化 雷光】」


一瞬の大きな音が鳴った後、ザーノの身体に奔っていた稲妻がフォルネの電流に巻き込まれてその一部となった。

黒髪が、少し青みがかる。

髪が逆立ち、魔力は電気に、一帯の魔力がフォルネに集約され、その全てが電力へと換算される。


魔力強化された剣の魔力も、電気に変わり迸る。

青と黄色の電気で纏われた稲妻の剣が、ザーノの顔を明るく照らす―――


「まじかよ……! 僕の魔力が全部―――」

『これが属性変化の真髄だ』

「【雷光一閃剣らいこういっせんけん】」


稲妻による斬撃は、空気すら引き裂いて、世界すら斬ってしまいそうなほど―――

黄金色の雷電が、全てを包む。


光が、全てを包んだ瞬間

雷音が、辺りの静寂をかき消した。





「はぁ……はぁ」


フォルネが、息を切らしながら地面にへたり込む。

汗を地面に染み込ませながら、息を整える。


疲れた、その一言に尽きる。

結局聞き出すまえに倒してしまったな。

失敗だった、せめて倒す前に何かしら聞いとくべきだった。

いや、そんな余裕はなかった。交渉の余地すら無さそうだったし、無理に聞こうとして体力を消耗するよりかはよかっただろ。


「ガストル。ザーノは倒したが、まだ旧魔王城から魔物は出てきてる。さっきから大技ばっかで片付けてるけど、今からはそうもいかない」


俺は自分の魔力量が少なくなっているのを感じ、冷や汗をかいていた。

さっきより、動きが鈍い。魔力は生命力に近いもの、それが無くなれば体力がなくなるのと同じだ。


俺は目の前の城を見据え、舌を打った。

魔力の高ぶりを抑え、これ以上の無駄遣いは避けろ。


「ガッケルとタリスのやつ……まだかよ」


再び、剣を構えた。


「確かに、魔力の無駄遣いはいけないね」

その声は、少年の声だった。



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