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緊急任務

マルクとの戦いの後、やっとのことで宿に戻った俺は倒れた。

だが、リアムは二日酔いで倒れていて、俺はマルクとの戦闘で全身大怪我。


もちろんリアムがダウンしていたから、俺は治癒魔法を受けれず1日を過ごした。

その夜は地獄だった。

全身が悲鳴をあげていたし、死にそうだった。


翌朝、いつまで経ってもこないことに疑問を感じたリアムが俺に気づいて、治癒してくれた。


「二日酔いで倒れてた間に、そんなことが…」

「ホントこれからは気を付けてくれよ。またこんな事があったら嫌だし」

「ごめんごめん」


それで、これからどうしようか。

そろそろ、ここを旅立たないとな。最終目標は魔神軍討伐なわけだし。


「それで、いつこの村から出るのよ?」

「明日には出発して、次の街へ向かおうと思ってる」


「じゃ、最後に任務でも受けてく?」

「そうだな。出来るだけ短い時間で終わるやつにしよう」


「いらっしゃいませ。本日は…」

「任務、受けたいんですけど」

「申し訳ございません。今だと受けれる任務が1つしか無いんですが」


1つだと?そんなわけ無いだろ。


「こちらになります」


大型 緊急任務


魔神軍の魔物数名がこの村に近づいて来ています。

手の空いている冒険者の方々は至急、集まってください。

討伐した方には30金を贈与いたします。


魔神軍の討伐。

こりゃ都合のいい任務だ。


「受けます」

「ちょ! 魔神軍よ?そんなのと戦う気!?」

「本気だよ」

「はぁ、じゃあ分かったわ。お願いします」


こんなに早く、魔神軍と接触出来るなんてな。


「分かりました。本当に気をつけてくださいね」


任務開始地点は、村からだいぶ離れた平原だった。

「めちゃくちゃ人数いるわね。てかホントに来るの?魔神軍は」

「あぁ、多分来る。勇者の勘がそう言ってる」

「勇者の勘…信用出来ないわ」

「はぁ?なんでだよ」


こっちに、一人の男が歩いてきた。

「テメェは! あの時の…!」

こいつは確か、タームとかいう奴の仲間の…あれだ。

そう、新人潰しパーティのリーダー。


「あの時は…」

でも、こいつ1人か?

「おい、周りの奴らはどこ行ったんだよ。喧嘩でもしたのか?」


「仲間はみんな死んじまったよ。 だからここに来たのは俺1人だ」

全員死んだ…

少し前のリアムと同じような状態ってことか。


「おい!!!! 何か来たぞ!」


遠方に、3体の魔物。

明らかに真ん中だけオーラが違う。

俺達よりも二回りくらい身長もあるし、ガタイも良い。

横にいる二体は、只の魔物に見える。


「何だよ…アレ」

新人潰しは体を震わせて、歯をガチガチいわせている。


「30金は俺のもんだぜェ!!!!」

そして、弓使いの男が攻撃を仕掛けた。

その時、何かがものすごい速さでここに移動してきた。


移動してきた者の手には、生首があった。

攻撃をした弓使いの男が、死んでいたのだ。

今、1秒前くらいまでは息をしていたのに。


格が違う。

他の魔物より、圧倒的に。


「なぜ、我々を攻撃する。我々はただ、昔やられたことをやり返しているだけだ。もう貴様らに攻撃する権利はない」


誰も、言葉を発さない。

その圧倒的強者オーラに怯んで。

そして、その眼は俺へと向けられる。


「貴様は、勇者か。新たな勇者が誕生したのか。そうか、ククク…」

「何、笑ってんだ」


こいつは、ここで俺が仕留める。


指をパチンと鳴らした、その瞬間にその魔物の近くにいた人が、全員上半身と下半身がバラバラになって、その人達の臓物が地面に散らばって死んだ。


「テメェ、何してんだよ!!」

俺はとっさに、怒りに身を任せて攻撃をした。

「怒りに任せた攻撃は、動きが読みやすいのだ」

剣が、指で止められた。


変な音がなって、剣が折れた。

「なまくらではないか、こんな剣」


色々な人が、逃げ出した。

だが、先程両脇にいた二体の魔物が結界となって、必ず逃げれないように囲んでいた。


「フォルネ、逃げよう」

「おい、お前逃げたほうが良いって!」

「お前ら、逃げててくれ」


リアムを巻き込むわけにはいかない。

これは、俺の勇者としての戦いだ。


「我が名は『魔人アリティム』覚えておけ、勇者よ」


アリティムと名乗る魔物が、両手をバッ、とあげた。その時、俺とリアム、そして新人潰し以外の全員が、死んだ。


捻り潰されたような見た目で、死んだ。

全員絞られている雑巾のような、無残な姿だった。


「貴様は、どうする」


「もし俺が、貴様ら三人の内誰かを犠牲にすれば、残った二人は助けてやると言ったら。貴様はどうする」


何を、言っているんだ。

本当に。

コイツは…


「決定権は貴様にある。フォルネ・ラリバー」


俺の息はどんどんと荒くなって、心臓の音も全身に響く。


「フォルネ・ラリバー、リアム・パリアン、ブリム・リオット」

こいつ、何で名前知ってるんだ。

俺はまだしも、リアムと新人潰しまで。


「フォルネ…」

新人潰し(ブリム)は声をかけてきた。

「俺を、選べ。お前が勇者なんて、俺は知らなかったよ」


「…は?お前、何言ってるんだよ」

「勇者かよ、俺が憧れてた奴じゃねえか。勇者なら、魔神軍倒してくれるよな。俺の仇…とってくれよ」

「だからまじ! 何言ってるんだよ!」


「俺さ、勇者になりたかったんだよ。でもなれなくて、こんな近くにいたとは思って無かった。でも俺、その勇者に迷惑かけちまった。その償いだ。頼む、俺を選んでくれ」

ブリムの目は、何かを覚悟した目だった。


「けど、ブリム、お前はたまたまここに居ただけで、別に勇者だからって俺のために命かけなくても!」


「そもそも、俺はお前の近くにいなかったらさっきの時点で死んでた。だから元々無かった命なんだ」

「お前、ホントに何なんだよ…」


こいつ、こんないい奴なのかよ。


「いいのか…ホントに」

「当たり前だろ。俺は覚悟決めたんだ」

ブリムはニヤッと笑った。

「じゃ…じゃあ」

本当にいいのか。

俺は勇者だぞ。

人を犠牲にして生き残るなんて、それは勇者のする行いじゃない…


「言っとくが、俺は犠牲になるつもりはねぇぞ。ただ、最期にカッコつけたいだけだ」

ブリムの頬には、涙が伝っていた。


アリティムは、背中を向けて言った。

「全く面白くない…もう良い。ここで殺しても、絶望する顔は見れない。求めているものは見れないのだ」

そう言い残して、結界となっていた魔物を回収してから、どこかへ飛んでいった。



「生き残った、のか…」

「ブリム、お前…」

ブリムがあんなにいい奴だとは、思ってなかった。

仲間の死で、改心でもしたんだろうか。

それにしても、あの時のブリムは格好良かった。


「フォルネ、ブリム、ごめん。私、何もできなくて」

リアムの体は、まだ震えていた。

こう見てみると、リアムと俺の身長は、2cmほどしか変わらない。

少し大人ぶっていたけど、俺もリアムも変わらない。

まだ、二人共子供だった。


「はぁ、それで、これどうする?」

ブリムは、大量の死体達を指差していた。

「とりあえず、村に戻ろう。そして伝えるんだ。今日あったことを」

「あぁ、だな」


そして俺らは、血だらけの服で村のギルドへ戻った。


「おかえりなさ…い」

いつもは冒険者で溢れかえっているこのギルドも、今では俺達しか居ない。


「あなた方以外、全員…?」

「はい、みんな真っ二つになって…」


宿までは、何も言葉を交わさずに行った。


――――――

「入っていいか」

この声は、ブリムか。

「あぁ」

ドアを、開けたのは、やはりブリムだった。


「やっぱり、落ち込むよな」

「当たり前だ…あんなに人が死ぬとこ、初めて見たし」

「俺もだ」


ブリムはどうするんだろう。

パーティメンバーは死んでしまったし、この村に滞在してた冒険者は全滅した。


「ブリム、俺らのパーティに入らないか?」

ブリムは少し考えたあとにいった。

「遠慮しておく。勇者様のパーティメンバーなんて、俺には無理そうだしな」

「そうか…残念だ」


「俺は今夜ここを立つ。またどっかであったら、酒でも飲もうぜ」

ブリムは、手に持っていた酒を宿のテーブルの上に置いて、部屋を出た。


結局、あの魔物は何だったんだ。

あんな異質なオーラは、産まれて初めてだ。

青色の皮膚に、異様な筋肉。

目が3つあり、紅色の長い髪。

明日村を立つ前に、魔物屋に聞いてみよう。


酒…か。

一回、飲んでみるか。


―――――


翌日


驚くべきことに、俺は酒が強いということが判明した。

あの後、結局酒を全て飲み干してしまったけど、特に二日酔いなどは起こらなかった。

てか、俺まだ飲んじゃ駄目だったんだよな。

15歳からじゃないと飲んじゃいけないのに、飲んでしまった。

このことは誰にも言わないようにしよう。


「おーい、リアム」

「はいはい、今行きまーす」

そういえば、まだリアムと会って数日しか経っていない。

もう何ヶ月も過ごした気分だ。

それだけこの数日が濃かったってことか。

「じゃ、行こ」


この村とも、今日でお別れ。

なんだか少し寂しい。

「あ、最後にちょっと寄りたいとこがあるだ」

「ん?なによ。別にいいけど」


「はいぃ、おはよぉございます」

魔物屋だ。

「魔物屋? 何で急に…」

「あの、少しお聞きしたいんですけど…大丈夫ですか?」

「なんでしょぉ…?」


魔物屋の店長に、昨日の魔物の特徴と、アリティムという名前について話した。


「青色の肌と、紅色の髪…アリティムと名乗っていたんですねぇ?」

「はい。あいつが一体何なのか、気になりまして。」


「あまり分かっていないことの方が多いのですが、アリティムはかつて魔王軍の幹部に所属していた魔物でして、その実力はあの魔王にも高く評価されていたとか…現在は魔神軍のリーダー的な役割を担っております」


幹部…それにリーダーって

「そりゃあんなに強いわけよ。勝てるわけ無いじゃない」

「とりあえず、ありがとうございます」

「はぁい。またのご来店、お待ちしてますねぇ」


魔人アリティム、アイツと再び遭遇したら、もう次はないだろう。

今回は運が良かっただけだ。

それまでにしっかり腕を上げないと。


「じゃあ、もうバイバイね」

「そうだな。この村の宿、快適だったな」

「結構汚しちゃって、申し訳ないけど」


そして、俺達は村を見つめ、次の場所へと旅立ったのだった。

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