闘技場での決戦 ①
投稿が遅れてすみません。
体調不良のためしばらくお休みしていました。
これからは多く出せるよう精進しますので、これからも是非読んでいってください。
その叫びは、闘技場全体を響かせた。
そして、俺にとってもその声は馴染みのある声だ。
幼い頃から、共に過ごしてきた『親友』。
俺の、初めて出来たかけがいのない親友だ。
その声が、聞こえた。
そして、俺のことを親友といった。
頑張れと言った
応援してくれたんだ。
ならば、その期待には応えるしかない。
たかが娯楽としての闘技場での戦いだとしても、戦いということに変わりはない。
なら、マジでいけ。
殺すことを躊躇するな。
相手は俺のことを本気で殺りに来てる。
「ありがとぉおお!!!! パッチィイイインッ!」
うし、やるか…!
「ン…? なんダ。仲間カ」
「油断すんなよ。こっちも本気で行く」
フォルネが自信満々にいったその言葉に、マルクは笑った。
「負け惜しみはよせよ」と、俺を嘲笑っているようだった。
その余裕がいつまで続くか…
一瞬でその笑みを鎮める。
「初めてやるんだ…」
「ハ? ナニをだよ」
残留していた、鬼神の力。
アイツがどこに行ったのか、それは分からない。
だが、その魔力や力は少しではあるが俺の体内に残っている。
これを使えば、俺の体がどうなるのか…
鬼神みたいに、強くなるのか。
それとも、力がデカすぎて死ぬか。
まあ、どっちでもいい。
ただの好奇心だ。
どうなるのか知りたいってだけ。
だから、試す…!
「はぁああ!!」
魔力を、底から引き出すイメージでいけ。
全ての魔力を、出し尽くせ。
そして、鬼神の力も出せ…!
フォルネの体から発されていたのは、赤色の魔力。
魔力は一般、目に見える事はない。
だが、ある一定の魔力数値を超えた時、その魔力は肉眼に映る。
それこそが、『魔力暴走』。
フォルネの魔力は、鬼神の力と合わさりとてつもない魔力量になった。
これを消費しきるのは、至難の技だろう。
「きたきたぁあ!! 」
成功だ。
分かる。俺の身体が凄いことになっているって。
魔力が溢れ出して、零れそうだ。
「ヤルな。ラリバー!」
「へへ、だろ?」
これまで自分の力量を知らなかったフォルネは、たった今気付いた。
自分はそこそこ強いのだと。
だが、それと同時にこの強さは『鬼神』によるものだということにも気付いた。
だが、今になってはそんなことはどうでもいい。
元は鬼神の力でも、現在はフォルネの肉体に取り込まれた正真正銘フォルネの力。
「じゃ、第3ラウンド。始めようぜ」
「ハッ、バカめ!」
フォルネの体が稲妻の如く奔る。
マルクは速度は劣るものの、その肉体の硬度はフォルネを大きく上回っているであろう。
「はァ!!」
炎の剣がひと足早く、マルクの体を突き刺した。
だがその攻撃に怯まず、マルクもフォルネを蹴り飛ばす。
足に力を入れててなんとか踏ん張るが、次の動作に移るのは無理だ。
それでも、やらなければいけない。
「ドウシタッ! ソノ程度か!」
「属性変化 『雷炎』ッ!」
属性同士の融合。
フォルネはやったことが無かったが、この窮地に陥って始めて発動することができた。
本来なら、不可能な芸当だ。
雷の力が剣に宿り、炎が周る。
龍の形を象った炎が、剣へと宿った。
これこそが、『炎雷剣』である。
「ツルギに炎と雷…両方をドウジに纏わせたノカ!?」
ナントイウ芸当… これが勇者の力なノカ…
「どうした? 来いよ」
「ハッ! 調子に乗ってらレルのもイマの内だ。ラリバー」
その言葉の直後、フォルネはマルクの話を聞くこともなく攻撃をしかけた。
突然の襲来。予測していなかった攻撃に、マルクは動揺していた。
その隙をとられ、フォルネは優位にたった。
そして、マルクが動作に移る間もなくフォルネの炎雷剣の一撃が、マルクの脳天に直撃した。
「ゲブッ!!」
これが、鬼神の力…そして魔力。
俺の魔力とは桁違いに量が多い…
鬼神の力を扱うには、まだまだ訓練が必要そうだな。
今の俺には到底使いこなすことなんて出来ないし。
「ラリバー…イイカよく聞け。今度はトチューでコウゲキするのは無しダカラナ」
突然何だ。
戦いを中断…?
何かマルクにとって有利な事を起こすために、中断したのか。
なら、コイツを止めなければ…!!
「マズ、俺はお前に一度殺られてからトックンシタンだ。毎日22時間ダ」
ペラペラと話し始めやがって…
けど、今の所マルクにとって有利になりそうな事は何も…
「そのトキ、俺は覚醒シタンだ。オレの中にネムッていた能力が覚醒シタンだ」
結局、何が言いたいんだ。
「特異体質ダッタモンデネ。異常に肉体が硬い人トシテ育てられたサ。ケド、それは能力のせいだった」
「オレの特殊能力は、『自分の受けた攻撃を魔力と肉体に変換する』トイウ能力ダッタッテワケ」
『魔力・肉体への変換』つまりマルクは母の胎内から現在に至るまで、受けた攻撃全てが肉体の強化と魔力増加へと変わっているということだ。
実質、これは不死身。
マルクが戦いを積めば積むほど、マルクに勝てる者は少なくなる。
その能力を無意識下で使用していたマルクは、特訓の中でついにこの能力に気付くことが出来たのだ。
それにより、能力の精度を向上することが可能になった。
今のマルクに勝つ術は、彼を『一撃』で仕留めなければならないのだ。
現在のマルクは、一度死の淵に立たされたあの戦いにより、ダイヤモンドすら凌駕する強度になっている。
そして、魔力の増加。
魔力が増えるということは即ち、魔力で肉体を強化出来る時間も増えるということ。
「ドウダ? ビックリしたか?」
まじかよ…
攻撃を受けるたび、魔力増加と肉体の強度を上昇させるだって…!?
そんなことされちゃ、俺は下手に攻撃出来ないじゃないか。
でも、炎雷剣での攻撃は通った。
なら、炎雷剣の攻撃が通らなくなるまではこっちとしても攻撃の手段があるということ…!
短期決戦。
さっさと仕留めて、こっから出ていかないと…
「お…い。テメェ…俺との戦いは、まだ途中…だろーが」
地面に野垂れていたガッケルの声は、掠れていた。
首に鎖の跡が強く残っていた。
「…ザコはダマッテロ。コンナ柔い鎖にヤラレルなんてナ」
「あ゛? なん…か、言ったか?」
駄目だ。ガッケル。
お前じゃマルクには勝てっこない。
攻撃が通らないんだ。
すげえ速度の攻撃でも、大きなダメージを与えられなきゃ意味が…
「へッ、魔力強化って知ってる…よな?」
ふらふらとした体を鼓舞して、ガッケルは必死に立ち上がった。
「あいにく、俺は魔力がすくねぇ…けど、魔力強化が出来ねぇほどじゃねぇんだよ」
「オレは魔力が永遠にフエツヅケル。お前とチガってな」
ガッケル…何をする気だ。
魔力強化をしても、マルクの体に傷一つ付けることは出来ないぞ。
「けど、循環させれば魔力は出ていかない。同じ魔力を再利用って事だ。エコだろ?」
「ダマレ。オレはラリバーと殺ってる」
「俺はさっきから、やってたんだ。魔力強化を…
それで…あぁ説明すんのも面倒くせぇ! とりあえず、お前はここで殺す…!!」
ガッケルの奴、魔力を放出しないよう循環させているのか。
通常 魔力強化は肉体外から肉体を魔力で覆うことで、強化を可能にしている。
だが、肉体外にある魔力というのは垂れ流しの状態だ。
魔力は常に放出された状態になってしまう。
そうすれば、いずれは魔力が尽きてしまう。
だが、ガッケルの場合は違う。
ガッケルは、血液と共に魔力を流し、体の中に循環させた。
魔力は血液と共に全身に行き渡り、それが肉体強化の役割を補っているのだ。
特定の部位だけを強化する魔力強化とは違い、魔力循環は全身を強化させることが出来るのだ。
つまり、ガッケルは少ない魔力を失わぬように内側から魔力で全身を強化したのだ。
「今、俺の拳はダイヤよりも固え…テメェの頭蓋骨をベキベキに割ってやるには充分の固さだ」
これで、2対1…
確実にこちらの方が有利だ。
ダイヤよりも硬いガッケルの拳。
それに目で捉えきることの出来ない速度と、俺の炎雷剣。
この2つで一度に攻めれば、マルクを倒せる…!
「わ…私だってぇ!!」
アリサさん…!
アリサは、震える身体を必死に止め、マルクに立ち向かった。
そういえば…他の選手の奴らはどうなった。
もし戦っている間に乱入されたら、集中出来ない。
マルクに勝つためには、他の奴らに構っている暇なんてないのに…
辺りを見渡すと、他の選手も既に戦っていた。
その中でも猛威を振るっていたのは、巨人族の男だ。
虫でも潰すみたいに、軽々と他の選手を殺してる。
もし戦いの途中で参戦するとしたら、恐らくアイツだ。
巨人族の奴の戦いが終わる前に、マルクとの決着をつけなければ…
「フォルネ…ガッケル。ここからは私も加勢するから!」
「あんがとよ。ア…アル…」
「アリサよ。覚えて!」
ジャラン、と音がした。
マルクが鎖を捨てた音だ。
マルクは、武器を捨てた。
邪魔だったのか。
武術だけで戦う気か?
正気かよ。
流石はマルクだ。
かなり余裕があるみたいだな。
「ン? 3体イチダロ? 早く来い。待ちくたびれタゾ」
「一瞬で終わらしてやんよ!!」
「一瞬で斬る…!」
さあ、ファイナルラウンドの始まりだ。
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