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地下都市 ザリバーム帝国

地下帝国 ザリバーム。

ザリバーム帝国は、世界でも珍しく、地下にある国だ。

物流なども、たった1つの入口から行われている為、物資が不足している。

ここで産まれて、ここで一生を終えることもあるそうだ。

1度も日光を浴びずに、死ぬなんて可哀想だな。


でも、なんでみんなここから出ようとしないんだろ。



「冒険者か?」


男が、俺に話しかける。

ザリバームの人間とは思えないほど、身なりは整っていた。


「あ、はい。そうですけど…」


「そうか、ならば冒険者カードを見せろ」


冒険者カード? なんだそれ。

そんなもの、貰った覚えは…ないはずだけど。


「冒険者カード? なんですかそれ」


「貴様、本当に冒険者か? 他国に入る時に、冒険者カードを見せるのは常識だろ。」


冒険者というか、勇者です。

私、勇者なんですけど。

あんまり知名度ない感じ? 新聞とかに結構乗ってると思うんですけど。


「ん? そういえば、お前フォルネ・ラリバーじゃないか」


あ、知ってた。

よかったー…


「よし、付いて来い」


勇者だと、全部あっさりいくな。

これで、すぐ確認して、さっさと帰ろ。


「ここが、ザリバーム帝国の本部だ。入れ」


本部? 本部にしては、だいぶ小さいな。

地下だから、敷地が限られているのか?

まあ、そんなことはどうだっていいんだけどさ。


「バーカ」


は?


中に入ると、そこは牢獄だった。

臭いし、薄暗い。

光は、壊れかけのライトだけ。


「え?」


「捕らえたぞ。『勇者』フォルネ・ラリバー」


ハメられた…!

妙にあっさりだと思ったんだ。

クソッ!


どうする。

どうすれば、ここから出られる。


「おい、てめぇ警戒心が無さすぎだ。てか、どうみてもここ牢屋だろ」


あぁ、確かにそう言われれば牢屋の見た目だったな。

良く見とけば良かった。

てかここ、中も汚いし、ネズミも住み着いてるんですけども…


「早く出せや! 俺は忙しいんだよ!」


「そりゃ無理なお願いだ。お前がここから出るのは、お前が死ぬ時だけさ。」


どうしろってんだ…

リアムにどう連絡するか。

うーん、でも1人じゃ危ないし。


「じゃーな。死ぬのを楽しみにしとけ。」


あいつも、恐らく魔神軍。

見た目は普通の人間だったけど、中身は違う。

バケモノだ。


「まずは、ここからどう出る…か?」


あれ? そういや、荷物とか没収されてない…

これ、思ったよりも簡単に出られんじゃん。


とりあえず、剣で切ってみるか。


「ふんッ!」


流石に古びているとはいえ、この牢を切ることは出来なかったか。

じゃあ次だ。


「炎帝!」


リアムが愛用している炎帝レッドブレイク

何度か見ていたから、威力は劣るが使えるようになった。


鉄なら、溶かせばいいんだ。


順調に溶けていってるみたいだ。

このままバレなきゃいいんだが…

魔神軍って、思ったよりもポンコツなんだな。


「よし、この牢ともおさらばだ」


まあ、5分ぐらいしか中に入ってないんですけどね。


とりあえず、リアムの所へ向かうとしよう。

今回ので確信した。

魔神軍がここに住み着いてるってのは本当だったみたいだ。


なるべく早く行こう。

また監視が来るかもしれないからな。


ジャンプシューズの扱いにも、随分慣れた。

今だって、建物から建物に乗り移れるくらいの調節は出来ているし。

なんかスーパーヒーローみたいだな。


「お…おい、あれ、人間じゃねぇか!?」


ザリバームの住民か。

こんな劣悪な環境に住んでいるなんて、可哀想だな。

飯とか食べてるのかな。


「ちっ…! 逃げ出してやがる」


もうすぐ入口だ。

よし、さっさと帰って温かいご飯でも食べよう。


【ビーッ! ビーッ! ビーッ!】


サイレン…!?

何事だ。

まさか、俺が脱獄したのがバレたのか?


「…!?」


入口が、封鎖されている。


やっぱりバレてたか。

最悪の事態だ。

大人しく歩いて行けばよかった…


「もう逃がしはせんぞ! フォルネ・ラリバァ!」


兵士一人一人は、雑魚だ。

一人ずつ、確実に殺せばいけるか?


「皆の者! フォルネ・ラリバーの首を、必ずアリティム様に持って帰るぞォ!」


アリティム…だと?

アイツが、ここに居るのか。

アリティムとの戦いになったら、生きて帰ることは出来ないぞ…!


「早めに終わらせる。かかってこい」


手招きをすると、兵士共は一斉に攻撃を仕掛けてくる。


「死ねぇいッ!」


遅い。

腹部に足をめり込ませ、体制を崩した瞬間に、胸を斬り裂く。

鎧はそこまで硬くない。


「クソがァァ!」


投剣か…!


「やば! 油断した」


剣に視線を向けている間に、他の兵士が攻撃を…!


「とりゃァ!」


目には目を、歯には歯を、剣には剣を。

投剣は、剣で弾く。


数はあまり減っていない。

どうする。


数が多い時は、無理に剣を使うな。

魔法を使え。


「『炎虎』」


杖が無いから、威力は低い。

だけど、こいつらを焼き殺せるくらいの力はある。


「「うわアア!」」


「く…くそォ! ひ、怯むなァァァ!」


まだやる気かよ…!


「『龍の爪(ドラゴンスレイヤー)』」


俺はマルクとの戦いの時から、常に龍の爪を持ち歩いている。

非常事の為だったが、数が多いと剣よりこっちのほうがやりやすい。


「魔術兵…! いけい!」


魔術兵!?

今の一瞬で、呼び出したのか…!


「『岩剣矢ロック・ソード・アロー』」


「『闇龍鳳ダーク・プリズム』」


「『鮫牙シャーキング』」


同時に3発!


「『物体停止スィンズ・タイム』」


身体の動きがとまった…!

動けない!

物体停止スィンズ・タイム…!


「うがァ!」


肩に、岩剣矢が貫通する。

それも、両肩に。


黒い電流も、身体に流れる。

鋭い痛みで、意識が遠のく。


牙が、腹に刺さり、俺は物凄い痛みをかき消すように、眠った。



「――これでやったのか」


「随分と、呆気なかったですな」


「ふふふ…我ら『魔神軍 魔術兵団』にかかれば、勇者などただの小童ということ」


「アリティム様は、神同然である。人間という下等種族の我々を、快く受け入れてくれたのだからな」


ピクッ

フォルネの指が少しだけ動く。


だが、本当に少しだった為、彼らは気づかない。


「ザリバームの兵、ご苦労だった。もう帰って良いぞ」


ザリバーム帝国 親衛騎士団 隊長

『ドーン・ボレス』


彼は、昔から人一倍正義感の強い人間だった。

弱者を救い、強者に立ち向かう。


そんな彼は今、28歳のある日。

魔神軍に立ち向かおうとしていた。


自分の正義感が、生存本能に勝ったのだ。


「いいえ…帰りませんよ」


震える手を必死に止め、魔術兵を睨む。

その顔には、彼の仲間達の血がべっとりと付いていた。

歯を食いしばり、剣を立てる。


「我が名は! ドーン・ボレスである…! 今貴様らを殺し、再びこの国の平和を取り戻す!」


「かっ…戯言を」


「笑えない冗談ね。ドーン・ボレス。」


彼が立ち向かっている時、勇者は落ちた。

肩に刺さっていた矢を取り、腹に突き刺さっていた牙

を抜き、地面に落ちた。


「冗談などではない…! ここで殺す!」


「そう、じゃ死んで」


「『電撃エレクトロ』」


魔術兵の女の指先に、輝きが集まる。

彼女の全身に、電気のエネルギーが流れているようだ。


そして、その輝きはドーンに向かっていた。


それも、物凄い速さで。


「くっ…!」


ドーンは口に何かを放り込む。

電撃はドーンの腹に直撃していたが、ドーンに煙があがるだけでダメージはない。


「うぉおおお!」


ただ剣を振りかざそうとしているだけに見えるが、

これは違う。

圧倒的威圧感。

この状態だけであれば、アリティム様を凌ぐ圧。


「魔法を使わなくても充分」


剣が根本から折れる。

何故だ。

その理由を、ドーンは理解していなかった。


「では、さようなら」


「く…くそぉ…負けるのか」


剣が、ドーンの首に突き刺さりそうになった時。

ドーンが後ろに引っ張られた。


「ご苦労さん。バトンタッチだ。ドーン」


その男は、顔に歪な模様を浮かべていた。

だが、その姿は見覚えがある。

先程殺した、勇者だ。


「精々楽しませてくれよ」


「くく…面白い! 望むところだ!」

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